シャフトの振動数って、どれだけ大事なの?【QPのギアマニュアル】
シャフトの振動数ってご存知ですか? 正式名称は固有振動数(cpm)と呼ばれます。グリップ部を固定してヘッドを上下に振動させ、シャフトが1分間にどれぐらい振動するかを表す数値です。シャフトの硬さを表す目安として、RやSといったフレックスがおなじみです。しかし、フレックスは統一した基準がなく、同じRでもメーカーやモデルによって硬さはバラバラです。AというメーカーのSよりもBというメーカーのRの方が硬いこともあります。
そこで、フレックスよりも振動数の方がシャフトの硬さを表す指標になる、とされてきました。250cpmがR、260cpmがS、270cpmがXと、数値が小さければ軟らかく、大きければ硬いという見方です。しかしこの数値、今は忘れ去られている数値といっても過言ではありません。実際、私の工房には、振動数の計測器は置いていません。
なぜ、すたれたかといいますと、グリップ側を固定してヘッドを振動させるので、手元側の数値(硬さ)しか分かりません。ですから、手元しなりのシャフトは、全部軟らかい数値に出てしまうのです。先端側の数値が分からなければ意味ないですよね。
手元しなりの260cpmと先しなりの260cpmを比べると、手元側が軟らかく設計されている手元しなりの方が、全体的に硬いシャフトといえます。同じ振動数でも、キックポイントによって感じる硬さは変わります。実際に打ってみると全然違うシャフトだということが分かると思います。
昔、こんな話がありました。振動数からシャフトの硬さを判断する工房がありました。男子プロが使用するある人気シャフトの振動数が、Sでも軟らかめの数値が出ていたので、年配の方にも勧められていました。でもいざ打ってみると硬すぎて、まったく打てなかったというのです。そのシャフトは、手元側が軟らかくて、先が硬いモデル。しかもトルクも少なく、ツアーでも一番ハードなシャフトでした。振動数だけを見ていると、アマチュアでも使えそうなシャフトだと勘違いが起こります。最近は、判断基準の一つでしかないというのが、工房の常識です。
振動数の数値は、同じモデルの中で差を見るには、参考になると思います。例えば、50グラム台、60グラム台、70グラム台の数値を比べてみると、50グラム台だけ軟らかいとか、見分けることができます。また、Rフレックスは245cpmで、Sフレックスは265cpmとなったら、Rは軟らかめに作られていると分かります。重量帯、フレックスによってシャフトの性能差は生まれるので、ちょっとした違いを見抜く判断にはなると思います。かなりマニアックな話しですけどね。
かつては、振動数とともに、曲げ剛性の計測方法から硬さを判断する手法もありました。手元側を固定して、ヘッド側に重りをつけて、ヘッドがどれぐらい落ちて、どれぐらいシャフトがしなるかを目視する方法です。そのしなり具合でRとかSなどを見ていました。私が振っている感覚では、この手法の方が、適正な硬さを表しているように感じていました。しかし振動数は数値、曲げ剛性は目視だったので、〝数値〟に軍配が上がったというような気がします。
一つ言えるのは、フレックスだけでなくトルクや振動数を含めて、シャフトの硬さを測る統一された明確な基準が、今のところまだできていないということです。目安の一つにするのは構わないと思いますが、数値だけに目を奪われると間違うこともあります。やはり、インパクトでタイミングよく戻ってくる振り心地のいいものが、自分に取っての最適な硬さ、キックポイントです。硬さの基準はプレーヤーの中にあるといっても言い過ぎではありません。数値やフレックスなどを参考にしながら、自分の感覚を信じてください。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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