妹・千怜との比較も「嫌になったことはなかった」 岩井明愛、初優勝までの道のり
<KKT杯バンテリンレディス 最終日◇16日◇熊本空港カントリークラブ(熊本県)◇6523ヤード・パー72>
1打リードで迎えた最終18番。勝利を決める2メートルほどのバーディパットが抜けたときは思わず苦笑いだったが、マークをして決めたウイニングパットを沈めると、その目に涙を浮かべた。両手で高くガッツポーズを挙げて喜びを表現。岩井明愛がうれしいツアー初優勝を飾った。
申ジエ(韓国)の背中を追いかけた最終日は、苦しい展開が続いていた。前半を終えて1バーディ・2ボギーと落とした岩井に対して、ジエは2バーディ・1ボギーと伸ばし、3打差をつけられての折り返し。それでも弱気になることはなかった。「ずっと『勝つ』と思ってラウンドしていました」。
そして難易度の高い10番で「大きかった」という“値千金”のバーディを奪うと、11番ダブルボギー、13番ボギーとして後退したジエから初めて首位を奪取。しびれるシーンもパーセーブし続け、最終ホールまで耐え抜いた。
「いつもの自分であれば気持ちが前のめりになりすぎてしまって、もっと荒れてたゴルフをしたかもしれないけど、今回は周りを気にせず、自分のプレーに集中できた」と振り返る18ホール。昨年から精神的にも思考的にもひと回り大きく成長したことを実感し、それは勝利という最高の形で表れた。
いまの気持ちを尋ねられて、まず先に出てきたのは喜びよりも「ホッとしています」という“安ど”の気持ち。「自分でも勝てるかなと思っていたけど、きょうのスタートから終わりまで気を抜けない緊張感のなかで、優勝したことで(緊張の糸が)ほどけました」と頬を緩めた。
同じくツアーで活躍する妹・千怜と“最強ツインズ”として活躍している20歳のふたり。千怜はプロ本格参戦1年目となった昨シーズンに初優勝、さらに史上3人目となる初勝利からの2週連続Vを達成。一方の明愛は上位争いに加わりながらもカップを掲げることは叶わず。周りからは『早く勝て~』という言葉を耳にすることも多かったという。
それでも、明愛は「嫌になったことはなかったですね」。千怜の存在は「一番近い存在の“仲間”。双子なので片割れが頑張っていると自分も頑張ろうと思える」と、同じプロゴルファーとして妬むことはなく、切磋琢磨するかけがえのない存在となっている。
それは千怜も同じ。明愛の優勝する瞬間を見守り、「自分のことのようにうれしいです」と涙。駆け寄ってふたりはハグをかわしたが、それは昨年に千怜が初優勝した瞬間の、まさにプレイバックのようだった。「千怜の初優勝もああいう感じだった。千怜が優勝して自分ができるかと思っていたけれど、(今回)優勝して(千怜が)来てくれたのが信じられないというか…うれしい気持ち」。
妹の活躍は、焦りではなく原動力となった。来週は千怜に続く、史上4人目の初優勝→2週連続Vのかかる一戦が待っている。それでも「まったく気にしていないです。がむしゃらに頑張ります!」と笑顔。自分らしい攻めのプレーで観客を沸かせるつもりだ。(文・笠井あかり)
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