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中島啓太が振り返る「最高の瞬間」 “両手ガッツポーズ”に込められた思い【賞金王・特別インタビュー】

中島啓太が振り返った、カシオワールドオープンの最終日最終ホールでの1シーン(撮影:岩本芳弘)

昨季、国内男子ツアーの賞金王に輝いた中島啓太。それによりDPワールド(欧州)ツアーの出場権を得て、今季は欧州ツアーを主戦場に戦うことを決意した。単独取材に応じてくれた中島に、ALBA Netが撮影した写真を見ながら昨季を振り返ってもらった。

中島が『最も印象に残っているシーン』は、11月の「カシオワールドオープン」の最終日。最終18番パー5のグリーンで撮られたものだ。試合中、「あまり感情を出さないようにしている」と話す中島が、珍しく両手でガッツポーズをし、空を見上げる瞬間だった。

「自分としては(優勝よりも)この試合で賞金王を決めるしかない、と。“賞金王争い”しか頭になかったので、優勝したかのようにうれしかったです」

同大会の3日目を終えたときに、幼なじみが亡くなったことを知らされた。最終日の18番ではセカンドショットをグリーン手前に運ぶと、アプローチでチップインイーグル。両手を握りしめて天に突き出した。優勝とはいかなかったが、この瞬間に中島が2023シーズンの賞金王となったのだ。

試合を終えた直後の記者会見では、幼なじみへの思いがあふれた。「彼のためにも絶対に今週で(賞金王を)決めたいって思っていましたし、上で見守ってくれていると信じていた。彼のパワーもあって、賞金王になれる自信はありました。彼と、彼の家族のためにきょうは戦おう、と。最後のイーグルも多分、彼の力だと思う。それで賞金王になれてうれしいです」と涙をこぼしながら話した。

中島はそのときのことを「チップインイーグルで終われたことは、昨シーズンで“一番気持ちが入った瞬間”でした」と振り返る。もしここで賞金王になっていなかったら、金谷拓実との賞金王争いは最終戦までもつれ込んでいた。「最終戦は金谷さんと同じスコアだった。賞金争いがもし続いてたらかなりシビれる展開だったと思うので、決められて本当に良かったですし、“最高の瞬間”でした」と話した。

22年の9月にプロ転向をした中島にとって、昨年は実質ルーキーイヤー。23試合に出場し、3度の優勝と5度の2位を含めたトップ10入りは17回と飛躍を見せた。中盤戦からは金谷らとのし烈な賞金王争いが繰り広げられ、毎試合気を抜くことができなかった。

そんな激しい戦いを乗り越えて、天国の幼なじみにも素晴らしい姿を見せることができた。この写真には、そんな“最高の瞬間”が収められていた。(文・高木彩音)

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