
昨年の「全米シニアオープン」で2位に入り、米シニア「PGAツアー・チャンピオンズ」のプレーオフシリーズに進出。2戦目で3位に入りポイントを上積みし、今季のフルシード権を得た藤田寛之。この第二の人生とも言える挑戦を『人生の付録』と表す。そんな米戦記を追っていく。(取材/構成・高木彩音)
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みなさん、こんにちは。藤田寛之です。先月の29日に「全米シニアオープン」が終わりました。今回は、これまでの試合で自分に感じていること、宮本勝昌選手との関わり、そして最近の私生活について、少しお話ししたいと思います。
ここ2~3年、海外のシニアメジャーに出させてもらっていますが、予選落ちは今年が初めてです。理由は2つ。ひとつは、自分のショットの調子が上がっていないこと。いまのクオリティでは、スコアにして1日2~3打足りない。そうなると、自分の目指す場所には届かない。まずはコンディションを整えることが先決ですね。そうすれば、おのずと結果はついてくるはずです。結果が出なくて歯がゆさを感じますが、試行錯誤を続けて頑張ります。
もうひとつは、“シニアあるある”かもしれませんが、新しい選手の流入です。ここ2~3年で一気にレベルが上がってきています。たとえば、スチュワート・シンク(52歳)もそうですし、宮本選手(52歳)、ソレン・ケルドセン(50歳)、QT組からはフレデリック・ヤコブソン(50歳)とか、自分より若い選手たちが増えてきた。2年前に初めてメジャーに出たときは、飛距離も「真ん中くらいかな」と思っていましたが、今では同じくらいの飛距離の選手が60歳を超えていたりして…(苦笑い)。
そんな状況の中で、高額大会で結果を残せないのは正直、痛手です。フルシード権のボーダーとされる36位が難しい場合でも、45位以内に入れば7割ほどの試合に出られるようなので、そこを死守したい。肌感覚としても、こっちの選手のレベルは本当に高くて、いまはまだ立ち向かえていないというのが実感です。
宮本は今回(全米シニアオープン)、とてもいいゴルフをしていました。彼とはよく「自分たちがいいプレーをすれば、確実に上位に行ける」と話します。でも、少しでも調子が悪いと、このツアーの層の厚さや選手の巧さに苦しむ。そこが難しさですね。
今回、宮本とは練習ラウンドも一緒に回りましたし、3日目は彼のプレーを応援しながら観戦していました。彼はシニアツアーに強い思いを持っていて、昨年は一次予選からチャレンジし続けてきました。このメジャーをきっかけに、彼自身がこっちで戦う道筋をつかもうとしていたと思います。
彼とは長い戦友。一緒に回ったり、ご飯を食べたり、そういう時間がすごく楽しいんですよね。長年やってきた仲間なので、お互いの気持ちはなんとなく分かる。LINEでやり取りもしながら、「恵まれている立場なんだから頑張ろうな」と話しています。シニアで、こんなにも素晴らしいステージに立てているのは、本当にありがたいことです。
ただ、自分自身は今、少しずつダメになってきているのも実感しています。宮本のショットはまだまだキレがあります。3日目のプレーを見ても、ボールストライク、アプローチ、パター、どれも素晴らしかった。あれだけのプレーができれば、米ツアーでも十分通用するでしょう。ゴルフって本当に難しいですよね。差が大きいようで小さくて、小さいようで大きい。その一打に泣いたり笑ったりするわけですから。
シーズンも半分が終わりましたが、第一の目標はフルシード権の獲得。それは変わりません。もちろん「何がなんでも」とは思っていませんが、こんな素晴らしい環境で、もう1~2年はチャレンジしてみたい。それがプロゴルファーとしての正直な気持ちです。この先どんな成績が必要か、過去の結果と照らし合わせて自分なりに考えています。自己診断すると、なかなか厳しい。ただ、ここまで来た以上、最後までしっかりやりきりたいと思っています。
さて、ここからは私生活についてお話ししたいと思います。最近は、アメリカで日本人の美容師さんに髪を切ってもらいました。杉浦マネージャーに調べてもらって、予約が1カ月以上先の人気店へ。いままでは小沼キャディにバリカンで横を刈ってもらっていたんですが(笑)。今回はプロにお願いしました。
実は今、髪を伸ばしている最中で、年甲斐もなく「後ろで結んでみたいな」と思った時期がありまして。完成形はまだ見えてないんですけど、ジェルで固めて、鳥の巣にならないように気をつけながら、バイザーでごまかしています。みなさん、楽しみにしていただけたらと思います…(笑)。
僕たちは、男3人で行動しています。代わり映えのない毎日ですが、日本食屋を見つけて、枝豆、餃子、焼き鳥、豚しゃぶサラダ、締めに握りと味噌汁といった具合に、楽しんでいます。遠征中は「外食しようね」と話していて、テキサスに戻ると杉浦君がほとんど食事を作ってくれる。ストレッチ中にご飯を用意してくれるなど、本当にフルサポートです。
こうして支えてくれる人たちがいるからこそ、プロとして結果を残したい気持ちは強いです。でも今は、自分でも「何やっているんだろうな…」と思う日も多いですし、「いい加減にしろよ」と自分に言い聞かせる日々です。56歳。まだまだ戦いたいし、ここで何かひとつ、良いニュースを届けたい。そんな思いを胸に、また次の試合に向かいます。
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