おやじゴルフニュース「凄く簡単なことでも納得してなくちゃ出来ない、それがゴルフなんだなぁ」
ゴルフのスイングってクラブを振り上げて下ろすだけに見えますが、実は相当奥が深いですよね。いろんな技術論&スイング理論がありますが、肉体的&運動神経的に無理なことじゃなくて、もの凄く簡単なことが出来ない。そういうことがときどきあります。
例えば「クラブを短く持て」という教えです。そんなもの誰でも出来ると思うでしょう。でもね、人間という生き物は自分で納得しないと、実行しないんですよ。
昔、私の師匠である後藤修先生が「どの選手もグリップを短く持っているだろう」と、ゴルフのテレビ中継や雑誌の切り抜きを見せて指摘しました。確かに8割以上の選手が、グリップエンドを余らせて短く握っていました。
さらに理論的にも畳みかけて来ました。グリップを短く持つとミート率が上がり、クラブを返しやすくなり、ドローが出やすいと。そういわれても、当時はまだスイングアークが長いと飛ぶ思想がアマチュア界に浸透していました。
身長185センチのミシェル・ウィーが、飛ばしまくっているのを傍らで見ながら、あ~いう手足が長い人は恵まれている、凡人はクラブを目一杯使わないと飛ばないんだと思ったりして。
後藤先生は事あるごとに「クラブを短く持て」というので、半信半疑でしぶしぶ短く持つようになりました。けどコンペでドラコンホールなんかに遭遇すると、ついついクラブを長く持ってしまったりして。挙げ句、ボールをつかまえられずにスライスが出るとかね。なかなか先生の教えは守れていません。
■短く持つとヘッドスピードは幾分落ちるけど……
そうこうしているうちに先生とのレッスン企画も終わり、晴れて自由の身になりました。それから5年ぐらいしてからですかね。ある日、振りづらいドライバーを短く持って打ったら当たって、先生の教えは間違ってなかったと気づいたのです。
今はすべてのクラブを短く持ってラウンドしています。クラブを短く持つとコンパクトに振れてミスは激減します。ボールのつかまりもよくなります。確かにクラブを短く持てばヘッドスピードは幾分落ちるかも知れませんが、アマチュア的にはほとんど関係ないでしょう。
長いドライバーを使うとアマチュアは腕が縮こまり、スイングアークは伸びません。後藤先生は、人間の骨格的にはスプーンの長さがいちばん腕を効果的に使えると言ってました。
ちなみにタイガー・ウッズの全盛時のドライバーの長さは43インチ台ですからね。達人はクラブの長さより自分の腕の長さを利用している、そういうことですかね。
■フルショットは絶対禁止
ほか絶対禁止と言われたのが、フルショットでした。クラブはフルショットして当たり前と思っていましたが、私の場合、頭の血管がブチ切れそうなくらい振るものだから、後藤先生が心配してフルショットを禁止にしました。
つまり10割の力でフルショットすると、実際打つときは12割ぐらいになって、むしろパワーロスになってしまうのです。
最初から8割ショットの練習をして、いざ本番となったら、アドレナリンが出て丁度10割の力で出ていい按配になるというもの。そういう親心があっての8割ショットかと思いますが、これも理屈では分かっているのですが、コースに出ると興奮してぶん回します。もはや芝生を見て興奮する犬と一緒ですよ。
ようやく血管ブチ切れショットが消えた頃、今度は再現性が大事だと、わけの分からぬことをいい始めたのです。後藤先生曰く「素振りの再現がショット、練習場の再現がコース」だそうで、聞いたときは何を言ってるのやらでした。
再現性の教えを理解したのも、だいぶ後になってからです。例えばPWでフルショットすれば100ヤード飛ぶとするでしょう。練習場ではスリークォーターで80ヤード飛ばす練習をするわけです。それで本番のラウンドではどうするか? 今度は現場のアドレナリンを出さずに、そのままPWで80ヤードを軽く打てというのです。
■ショットもパットも素振りをおろそかにするな!
つまり練習場ショットの再現がコースのショットになります。そしてすべてのショットは、素振りの再現だから、素振りをおろそかにするなと言うのです。だから先生が見ているときは、ちゃんと肩が入ったフルスイングの素振りをして「よし、じゃそれを再現しろ」と言われます。
これはパターもしかりで、10メートルのパットが残っているなら、まず10メートルを打つ素振りをしろというのです。実はこのパットの素振りは、距離感を養うのに凄く役立ちました。というわけで今でも素振りだけは、ほかの人より余計にやっているかな。
そんなわけで後藤先生の教えは、後になってじわじわ伝わって来るパターンが多いです。そうやってそこそこスコアをまとめて、慢心していると突如スランプがやって来ました。
ここ半年のスランプは練習不足によるシャンク発生ですが、なんでシャンクになるか、原因が分かりませんでした。悩んでいるとき、ある女子プロが何気なく指摘したひと言がきっかけで、問題点を解決できました。
■スタンスの向きも大事
そのひと言は「クローズスタンス」という指摘でした。ラウンドするとき、何げにフェアウェイを見ますが、構えたとき、すでにクローズスタンスで立っているというのです。
打つときにボールの後ろから前方を見て、立ち位置を決めているつもりですが、知らず知らずのうちに、立ち位置がずれてたんですね。
分りました。じゃ正しいスクエアスタンスはどの方向に向けばいいんだろうか? 教わったスクエアスタンスは、感覚的に恐ろしいくらいオープンスタンスで、左のOBゾーンにボールが飛びそうでした。いや~笑えますよ。
■練習場でスタンスの向きを実証実験
とりあえずスタンスの矯正は、無理矢理矯正しました。けどクローズスタンスは何がいけなくて、オープンスタンスが何がいいのか? そこをちゃんと自分で納得しないと、前へ進めません。
そこで練習場でオープンやクローズに立って、実証実験をしてみました。そして今更ながら、とんでもないことに気づいたのです。簡単な実験ですから、皆さんもやって見てください。まずスクエアに立って、クラブをボール位置にセットします。それから左足を半歩前に踏み出します。つまり強制的にクローズスタンスを作るわけです。そのとき、ボールを打つ真似をして、ハーフショットでいいからスイングのフリをして見てください。
クラブのグリップは右腰のところでつっかかり、さらにクラブフェースが前に出て、ボールはネックに当たりそうになります。つまりクローズスタンスで打ったら、ヒール球になったりシャンクが出やすいのです。
今度は逆にスクエアスタンスから、左足を後ろに半歩下げてオープンスタンスを作ってみましょう。するとボールセットしたクラブフェースが後ろに後退します。これでグリップ部分もクラブフェースにも余裕が出て、非常に打ちやすく感じるわけです。
■「こうしろ」と言われても、納得して初めて実行出来る
なるほど、オープンスタンスにするということは、こういうことなのか。今までバンカーで打つとき、頭ごなしにオープンスタンスにしろと言われてきましたが、その理由が全然分からなかった。オープンスタンスにしたら、ボールが明後日の方向に飛んでしまうじゃないか。この人何を教えているんだと、思っていましたからね。
ゴルフはこうしろと言われることが多く、恐らくそれが正解なのでしょう。けどなんでそうしろなのかを説明してもらわないと、自分では納得できないのです。納得して初めて実行出来る、それがゴルフだと思います。
今現在、クラブはなるべく短めに握り、スイングはスリークォーターを中心にゆったりめ。そしてスタンスは、わざとオープンスタンスにしています。自分の中ではオープンスタンスにして丁度、スクエアスタンスなのかな。
今まで、なんでこうも綺麗にシャンクが出ているのか? やっと分ったような気がします。けどシャンクのトラウマがあるので、今さらUTをアイアンに戻す気はありません。高い球でグリーンにドスンと落とすショットは出来ませんが、それは仕方がない。UTでゆるゆるとスリークォーターショットをして、転がしながら乗せて行くとしますか。
■プロフィール■
木村和久
きむら・かずひさ/1959年生まれ、宮城県出身。世の中のトレンドを追求し、ゴルフや恋愛に関するコラムを多数執筆するほか、マンガ原作も手がける。隔週刊ゴルフ誌「ALBA」ほか、連載多数。
とがしやすたか
1959年生まれ。東京都出身。「青春くん」などで知られる4コマ漫画家。ゴルフ好きが高じて雑誌でラウンドレポートなども展開。
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