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「昨日より0.1ミリ」の進歩 渋野日向子が“真逆”のスイング改造で目指すこと

「71」にとどまった渋野日向子だが、新スイングへの収穫もあった。(撮影:福田文平)

<ホンダLPGAタイランド 2日目◇24日◇サイアムCC パタヤオールドC(タイ)◇6576ヤード・パー72>

「1カ月前はやばかったですよ。いろいろごちゃごちゃになってシャンクが止まらない。ずっと練習して、なんとかここまでにはなったけど」。2020年まで指導を受けていた青木翔コーチに再び教えを請い、スイング改造に乗り出している渋野日向子は、そのスタート時のことを振り返りこう明かす。開幕前から「不安」という言葉を口にし、2日目のラウンド後にも「準備してきて、ここまでできるとは思ってなかった」と話した理由は、そこにあった。

ダウンスイング時にクラブを寝かせることなく、縦に振り下ろすことなどが目指される新スイングだが、その変化の特徴のひとつといえるのがトップの位置。昨年までは低いトップから低くクラブが下りてくるスイング(シャローイング)を目指してきたが、今年はその位置が高く、そして深くなっている。

これを実現するための合言葉が『右ひじをたか~く』。トップで右ひじを高く上げることを意識するため、青木コーチが渋野に唱えさせている言葉だ。昨年までとは「真逆」のスイング作りとあって、取り掛かって1~2カ月程度での今はまだ違和感も覚える。渋野自身、「(違和感は)めっちゃあります。ぜんぜん違う。ライが違うと上げ方も変わってくるし、意識しないといけないことが多い。難しい!」と言うほど。もちろん、定着までに時間がかかることは織り込み済み。

大会初日の1番のティショットを見た青木コーチからは『やばかったね』という連絡もあったという。「自分で見ても低い。しゃーないけど、(2日目は)そこを頑張って、意識しながらやっていました」。とにかく、今は大げさに。素振りの時、「イメージを大きくしないといけない」と、そこを誇張するようにクラブを振り上げている姿がコースでは見られる。

1つ伸ばすにとどまった2日目だが、初日に比べチャンスの数は増えた。「昨日、パンチが入ったりしていたので、タッチを合わせようとしたら手前で切れるとか、流れてしまうとかが多かった。上りもあまり打ち切れないし、もったいない」というパターで苦しむことになったが、ショットについては予想以上に打てている場面も多く感じられた。「昨日よりもまし。できたかというとそうでもないけど、0.1ミリはよくなったかな…0.1ミリひじが上がったかな(笑)」。今は地道に理想へと近づくしかない。

昨年までのスイングが「いいドローが打てる、再現性が高くなる」というものならば、今は「あまり曲がらないボールが打てる」というメリットを得ようとしている。「クラブが縦から入ることで、いろんなライからも打ちやすい。ストレート系のボールも打てると思う。きょうもドライバー、アイアンで左に出たけど耐えてくれてるのもあった。それが今のスイングの結果かな」。初の実戦コースで、確実に収穫も手にしている。

後半の1番パー5では、その新スイングから目の覚めるようなショットも生まれた。左足下がりのなか3番ウッドを振り抜いた2打目が、まっすぐな弾道でグリーン手前まで到達し、2オンに成功した。「あれは謎(笑)。難しいライのほうがいいのか。『上からいったれ!』で打ったらいいボールでした」。これをきっちりと2パットで決めてバーディにつなげた。「気合です。それこそ気合」。青木コーチから『気合と根性』という言葉で送り出された渋野が見せた、気持ちの乗った一打だった。

「ショットよりグリーンで苦しんでる。もったいない」と、3日目を50位タイという位置で迎えるが、スイングについては想定以上のことができている。この日感じた“0.1ミリ”の上昇を、次の進化へとつないでいく。(文・間宮輝憲)

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