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飛ばし屋の小山内護、爪にはマニキュアの“ギター仕様” 前夜祭では大緊張の『もうひとりの俺』

小山内護の爪には透明なマニキュアが塗られ、きれいに整えられている(撮影:ALBA)

<いわさき白露シニア 初日◇24日◇いぶすきゴルフクラブ(鹿児島県)◇7052ヤード・パー72>
 
レギュラーツアーで4度、ドライビングディスタンス1位に輝いた飛距離を武器に4勝を挙げた小山内護。2020年からはシニアツアーで戦っている。今週は鹿児島でシニアツアー最終戦。最大瞬間風速15m/sの強風が吹いた初日を3バーディ・1ボギー・1ダブルボギーのイーブンパー・2位タイで発進した。出場84人中74人がオーバーパーを叩いた一日に「上出来だよ。最高だよ。オーバーパーにしなかった時点で100点満点」と結果には満足している。

前半は2アンダーのトップで折り返したが、後半に入って14番で最初のボギーが来ると、16番ではティショットがチーピンして左のフェアウェイバンカーのアゴに突き刺さりダブルボギー。この時点で1オーバーに落としてしまう。それでも、最終18番パー5をバーディで締めて、好スタートを決めた。
 
普段は明るく豪快なイメージのある小山内だが、開幕前日の前夜祭ではこれまでにないほどの大緊張に包まれていた。円卓のテーブルには豪華な料理が並んでいたが、小山内が口にしたのは「サラダとソフトクリームとコーヒーだけ。震えちゃって喉を通らなかった」というほどだ。
 
なぜなら“弾き語り”デビューが控えていたから。「アンプなんかつなげてやるのも、やり方も知らないんだから」。会場には大きなステージが設置され、宴もたけなわな終盤、トップバッターとして小山内が矢沢永吉の『もうひとりの俺』を“弾き語り”で初めて披露。「永ちゃんと布袋(寅泰)さんのコラボがあってカッコイイんだよ」と選曲理由を明かす。
 
この最終戦の前夜祭で歌ってくれと頼まれたのは2週間前のこと。前週の「すまいーだカップ」では、夜になると一緒に歌う横田真一と練習に励んでいた。「横田は道連れだよね。毎晩カラオケボックスにギターを持って行って、練習したよー。だからあれだけゆっくりでアルペジオで弾けた」という。

小山内が一曲目を終えても出番は続く。横田がラッツ&スターの黄色いスーツ姿と口ヒゲ、サングラスで登場し、鈴木雅之の『恋人』を歌唱すると、2人の見せ場はカラオケボックスで練習を積んだ玉置浩二の『メロディ』。小山内のギター伴奏に乗せて、横田が歌い上げた。そのときの小山内の演奏法が、ギターをかき鳴らすのではなく、1本1本を指ではじく“アルペジオ”。見事なステージで会場を大いに盛り上げた。その役目を終えると、「ダイニングで食べて飲みまくった」とようやく食事が喉を通った。
 
もともとシニアツアーには『5963ズ』(ごくろうさんず)というバンドがあった。メンバーはドラム担当でリーダーの高松厚、ギター担当の奥田靖己と中西信正、ベース担当の杉原敏一、タンバリン担当の芹澤信雄、ボーカル担当の加瀬秀樹、そしてMC担当で盛り上げ役の高見和宏という豪華な構成。「5963ズがもう終わるから、俺の代わりに。そろそろ世代交代だ」と奥田が後継者に指名したのが小山内だった。
 
長渕剛や松山千春など、モノマネレパートリーが豊富な小山内も、楽器を演奏した経験はなく「ギターの“ギ”の字も知らなかった」。奥田から声がかかったのはコロナ渦の2020年で、「どうやって触るかも分からないし」と、その秋からギター教室に通い始めた。
 
「指が痛い、痛い」という状態から1年通って弾けるようになると、今度は奥田から「御茶ノ水に行って高いのを買っておけ」と、“楽器の街”御茶ノ水で20万円の中古ギターを購入。「新品だったら45万」というギターは長渕剛のシグネチャーモデル、『Takamine』(タカミネ)。それを前夜祭でも使った。
 
「ギターがオートマチックにいかないと、歌が音痴になる。ギターに意識が行くからね。本当に弾き語りは難しい。(シンガーソングライターの)優里とか弾き語りをしている人を見るとすげーなって思うよ」。そう話す小山内の両手の爪は「割れないように」と透明なマニキュアが塗られ、「左は深爪、右はちょっと伸ばす」ギター仕様となっている。コースでは豪快に飛ばす小山内の『もうひとりの俺』を見つけた。(文・下村耕平)

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