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スマート・プレーで4勝目、次はメジャー初優勝!?【舩越園子コラム】

“帝王”から祝福されるV・ホブラン。その勝利の裏にあった考えとは?(撮影:GettyImages)

「帝王」ジャック・ニクラスが大会ホストを務めるザ・メモリアル・トーナメントは、今季は「格上げ大会」の1つに含まれているが、出場していた選手たちが目指していたのは「ジャックの大会で優勝し、最終日の18番グリーン脇でジャックと握手を交わすこと」だった。

サンデー・アフタヌーンに、その栄誉ににじり寄っていたのは、30歳の米国人選手、デニー・マッカーシーだった。首位と1打差の4位タイで最終日を迎えたマッカーシーは、前半でスコアを3つ伸ばし、単独首位へ浮上。後半も安定したプレーぶりでパーを拾い続け、2位に2打差で終盤を迎え、優勝に迫っていた。

しかし、17番で見事なバーディを奪ったノルウェー出身の25歳、ビクトル・ホブランに1打差に詰め寄られたマッカーシーは、18番のティショットを大きく左に曲げ、痛恨のボギー。2人はサドンデス・プレーオフへ突入した。

その1ホール目の18番。ツアー5年目ながら未勝利のマッカーシーは、ティショットを今度は大きく右に曲げ、2打目でグリーンを捉えることができず、パーパットはカップに蹴られた。一方、すでにツアー3勝の実績を有していたホブランは、冷静なプレーぶりでフェアウェイ、そしてグリーンを捉え、パーパットをしっかり沈めて、勝利を決めた。70ホールを終えた時点では、悲願の初優勝が目の前にあったマッカーシーだったが、あれよあれよという間に形成逆転され、惜敗に終わった。

彼は、かつて世界アマチュアランキングで1位に輝いていた選手だが、プロ転向後はなかなか勝利が挙げられず、望めば望むほどプレッシャーは重く大きくなるようで、喉から手が出るほど欲っしているものは、いつも、あと一歩のところで遠のいていく。

「悔しい。心が壊れそうだ。終盤は身も心も少し震えていたように思う。でも今週、僕は多くのことを学んだ。素晴らしいこの大会に、また来年、必ず僕は戻ってくる」

涙声でそう語ったマッカーシーの想いは、いつかきっと報われることだろう。一方、すでに勝ち方を知っていたホブランは「ひたすら賢明なプレーを心がけた」と振り返った。

なるほど。72ホール目の18番ではティショットを大きく右に曲げ、ややピンチに陥ったが、プレーオフ1ホール目の18番では、あらかじめ右を向き、ビッグドローでフェアウエイ左端にボールを運んだ上で、「セカンドショットはとにかくグリーンに乗せることを第一に考えた」。

ニクラスがセッティングした最難関のミュアフィールド・ビレッジでは、無茶や無理をしないスマートなプレーこそが最大で最高の攻めになる。そのことにホブランは気付き、黙々と賢明なゴルフを実践していたからこそ、終盤に追いつき、勝利することができたのだろう。18番グリーン脇でニクラスと握手を交わしたホブランは「ただただ、スマート・プレーに徹しただけです」と謙虚に語ったが、その笑顔には喜びが溢れ返っていた。

母国を離れ、米国へゴルフ留学したホブランは、オクラホマ州立大学を経て2019年にプロ転向。PGAツアーにデビューするやいなや、ルーキーイヤーにプエルトリコで初優勝を挙げ、翌年と翌々年はメキシコ・マヤコバで連覇を達成したが、米本土で勝利を挙げたのは今回が初となった。

今年のホブランは4月のマスターズでは7位タイ、5月の全米プロでは2位タイとメジャー大会でも好成績を上げている。2週間後に控える次なるメジャー大会の全米オープンで優勝候補に数えられることは間違いなく、また1人、新たなメジャー・チャンピオンが誕生しそうな予感がする。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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