
「視線を感じました(笑)」元世界1位を“ガン見” ルーキー大久保柚季の大収穫
<アース・モンダミンカップ 最終日◇29日◇カメリアヒルズカントリークラブ(千葉県)◇6688ヤード・パー72>
緊張マックスでスタートホールのティグラウンドに立っていた選手がいる。レギュラーツアー3試合目で初めて予選通過を果たした大久保柚季だ。3アンダーの21位タイと上位進出も狙える好位置からのスタートだったこと以上に、大久保を緊張させたのは同組のレジェンド・申ジエ(韓国)の存在。「勉強しようと思って、朝からずっと見ていました」。そんなルーキーの様子をジエも気付いていたようで…。
最終日のスコアは「73」。苦しい中でも耐えたラウンドだった。まだ緊張の抜けない1番パー4の2打目はグリーンをオーバー。奥のカラーから18メートルのパットが残った。「オーバーしてグリーンから出ちゃったら恥ずかしいなと思っていたら、ダフって大ショートでした」。それでも、6メートルを沈めてパー発進。その後は同組のジエ、岡山絵里が優勝争いに絡む勢いでスコアを伸ばす中、粘り強いプレーを見せた。
ずっと見続けていたジエのプレーは、やはり圧巻だった。「パットがとにかく上手い。テンポとか、ジャストタッチで入れるところがとにかくキレイ。あとはラフからのリカバリーとか、ギャラリーになったみたいに『うんま~』とか言いながら見ていました」。すぐにマネできるものではないだろうが、目指すべき目標がはっきりしたのは確かだろう。
対するジエに話を聞いてみると「ずっと視線を感じていました」と笑みを浮かべた。続けて「安定したプレーをする選手でしたね。2人がスコアを伸ばして、ひとり取り残される展開で苦しいゴルフだったと思う。ラウンド後は『よくガマンしたね』と声をかけました」と明かした。
「私もそうだったから、気持ちはよく分かるんです」と普段から若い選手に見られているという意識は持っている。「日本ツアーのセッティングも難しくなって、考えることが増えてきた。そこにどう対応するのかを見せたいなと思っています。プレーだけでなく、歩き方や仕草もです」。元世界ランク1位。その一挙手一投足が、若手にとっては生きた教科書だ。
大久保は次戦から主戦場の下部ステップ・アップ・ツアーに戻り、来季のレギュラーツアー昇格を目指す。今大会の獲得賞金180万円(28位タイ)は、一大会における自己最高額。今季のステップ6試合で稼いだ総額を上回るが、それと同時にお金には代えられない大きな経験を持ち帰った。(文・田中宏治)
Follow @ssn_supersports