家族でつかんだプロ8年目での初V 脇元華の父が明かす裏側「うれし涙を見られて良かった」

家族とともに優勝トロフィーを掲げる脇元華(撮影:上山敬太)

<伊藤園レディス 最終日◇16日◇グレートアイランド倶楽部(千葉県)◇6769ヤード・パー72>

28歳の脇元華が、プロ8年目にしてツアー初優勝を飾った。父・信幸さんが娘を力強く抱きしめ、「やったな。よくやった…。おめでとう」と涙を流す姿が印象的だった。

これまで何度も優勝争いを経験したが、あと一歩のところで優勝を逃し続けてきた。今年はヘルニアを発症して思うように練習ができず、苦しい時間を過ごしてきた。

「長く苦しんできたので、ホッとしたました。ここが(新人戦の会場で)スタートの場所。2018年の7月からの積み重ねなので、長かったですね。きょうも痛み止めを飲みながらやっていたので、そのつらさを知っていた分、きつかったですね」と信幸さんは胸の内を語る。

幼少期から競技を始める選手が多いなか、脇元の歩みは少し異なる。ゴルフを始める前は「努力して磨けるものがいい」と芸能オーディションを受けたこともあった。その後ゴルフに触れたが、「本人が好きになるのをひたすら待っていた。小さいときは練習場でも猫と遊んでいた」(信幸さん)と、本気になるまで時間がかかったという。

転機は中学2年生。タイでのゴルフキャンプに行った際、近隣のコースで米国女子ツアーを観戦し、宮里藍らの姿に心を奪われた。「キラキラ輝いている。私はここに戻ってくる」。その言葉を聞いたとき、娘が本気でゴルフと向き合い始めたと感じた。

信幸さんは娘の心を前向きに保つため、「小さいときからずっと“特別なんだよ”と言い続けてきた」。その言葉が脇元の背中を押し続けた。

一方で、「このまま勝てない選手になってしまうのでは」(脇元)と思い悩む時期もあった。父はそんな娘をそばで見守り続けた。「たまにそういう(弱気な)言葉は出ましたが、基本的に強い子。(言葉は)かけない。(話は)聞きますけど、私の子なので、やってくれたらと」。その長年の信頼が、ついに形となった。

優勝インタビューで脇元は、「父と祖母には頭が上がらないですね。どんなに悪い時でもずっと励ましてくれた。『華ならできる』って言い続けてくれたので、本当に感謝です」。男手一つで脇元、妹、弟を育ててきた父への、深い感謝だった。「家族みんな最高じゃないですかね。悔し涙しか見てこなかったので、うれし涙を見られて良かったです」。信幸さんの表情には、長年背負ってきた重荷がほどけたような安どがあった。

通算2勝目に向けて、脇元家はこれからも一丸となって戦っていく。(文・高木彩音)