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プロ2年目の25歳が初勝利 かつてはスピースが初V… 若い実力者が続々と台頭【舩越園子コラム】

初優勝を飾ったデイビス・トンプソン(撮影:GettyImages)

「ジョン・ディア・クラシック」といえば、まだ無名に近い存在だったジョーダン・スピース(米国)が初勝利を挙げた2013年大会が、昨日のことのように思い出される。

あのときスピースは、大会翌週の「全英オープン」出場資格をまだ得ていなかったにもかかわらず、「優勝して全英に行く!」と自身に言い聞かせ、全英用の1週間分のウエアを詰め込んだスーツケースを持参して大会に臨んだ。そして勝利し、プラン通りその足で全英へ。スピースはそうやってスターダムを駆け上がっていった。

高い能力を備え、無限の可能性を秘めた若い選手たちに、自身の未来を切り開くチャンスを授けたい。そんな願いを込めて開催されているジョン・ディア・クラシックでは、今年も若者たちの熱戦が繰り広げられた。

勝利したのは25歳のデイビス・トンプソン(米国)だった。2位に2打差の単独首位で最終日を迎えると、快進撃で7アンダー「64」をマーク。後続との差を4打へ広げ、大会記録を1打更新するトータル28アンダー。初優勝を挙げた。

6月「全米オープン」では9位、前週の「ロケット・モーゲージ・クラシック」では2位。そして今週、「やっと勝つことができた」とトンプソンは感無量だった。

ジョージア州アトランタで生まれ育ち、21年にジョージア大学を卒業してプロ転向。昨年からPGAツアー参戦を開始し、ツアー2年目に初優勝を挙げた彼の歩みは、見事なスピード出世と言っていい。

しかし、ルーキーイヤーだった23年1月「ザ・アメリカンエクスプレス」で惜敗し、今季もトップ10入りを3度も経験して悔し涙を飲んだトンプソンにとっては、初優勝までの道程はとても長く感じられていたのだろう。

父親もジョージア大学ゴルフ部出身で、キャプテンを務めた強豪選手だった。現在はPGAツアー「ザ・RSMクラシック」でトーナメントディレクターを務めており、米ゴルフ界では広く知られた存在である。そんな偉大なる父親を持つトンプソンは、サラブレッドゆえに「早く勝たなければ」というプレッシャーも感じていたことだろう。

72ホール目のグリーンに向かって歩くウイニングウォークでは、頬をほころばせ、パーパットを沈めた直後も右手を挙げて大観衆の拍手に応えるなど、初優勝者とは思えない余裕さえ見せていた。だが、18番グリーンに駆け寄ってきた愛妻を抱きしめた途端、それまで抑えていた感情が一気に沸き上がったのだろう。愛妻の肩に顔を埋めたまま、しばし無言で初勝利の味をかみ締め、うれし涙を流した。

「この優勝が意味するものは果てしなく大きい。このところ上位フィニッシュが続いていたけど、やっと勝つことができた。これで全英オープンにも出場できることはビッグなオマケだけど、メジャーに出られることは素晴らしいし、とてもうれしい」

ドライバーからパターまで「あらゆるクラブを使いこなす」を信条とするトンプソンは、4日間、その言葉通りのゴルフを披露した。とはいえ、最終日だけはドライバーがやや乱れ気味となったが、絶妙なアプローチとパッティングで十分にカバーした。とりわけ、優勝争いの中での26パットは「勝利に値するグッドパットだった」と自画自賛をしていた。

元PGAツアー選手でゴルフ解説者のイアン・ベーカーフィンチ(オーストラリア)いわく、「試合中の集中の仕方、自分のペースで心地よくプレーする戦い方、美しいスイング、すべてがハイレベル。アイアンショットのキレは超一流で、先日、世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーもトンプソンのアイアンショットを絶賛していた」と賛辞を送っていた。

2位タイに食い込んだマイケル・トルビョンセン(米国)は、大学生ゴルファーを対象にツアーへの道筋を提供する「PGAツアー・ユニバーシティ」のランキング1位となってデビューしたばかりの新人。キャリアわずか3試合目にして優勝争いに絡んだ。

同じく2位タイになったルーク・クラントン(米国)はまだフロリダ州立大学に籍を置く大学生アマチュア。スポンサー推薦で出場した前週のロケット・モーゲージ・クラシックでも10位タイに食い込んでいた。「今週は勝つつもりで来た。勝てなかったけど、自分はこのツアーで戦えるし、勝てると実感した」と話した。

優秀な若者たちが多数控え、誰もが虎視眈々とチャンスを狙っている。勝てるかどうかは、ほとんど紙一重。今週はトンプソンがその「紙一重」を超えて抜け出したが、来週、再来週、次々にドラマが起こるはずである。

文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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