賞金6億円ゲット 松山英樹、通算9勝目の要因は?【舩越園子コラム】
PGAツアーのシグネチャー・イベントのひとつである「ジェネシス招待」を松山英樹が見事に制し、通算9勝目を挙げた。
最終日を首位と6打差の7位タイからスタートした松山は、3連続バーディを3度披露する9バーディ・ボギーなしの快進撃で、リビエラCCのコースレコードに迫る「62」をマーク。2位に3打差を付ける快勝だった。
昨年は勝利を挙げることができなかった松山にとって、2022年の「ソニー・オープン・イン・ハワイ」以来、2年ぶりの優勝だったが、彼に勝利をもたらしたものは、何だったのだろうか。
ジェネシス招待はタイガー・ウッズ財団がサポートする「ウッズの大会」だが、大会ホストのウッズはインフルエンザで途中棄権し、ジョーダン・スピース(米国)はスコア誤記(過少申告)で失格。ジャスティン・トーマス(米国)は予選落ちを喫し、リビエラのサンデー・アフタヌーンは少々さびしい顔ぶれだった。
とはいえ、フィールドには世界ランキング1位のスコッティ・シェフラー(米国)、2位のローリー・マキロイ(北アイルランド)、4位のビクトル・ホブラン(ノルウェー)らもいたが、こぞって振るわなかった。
初日から首位を快走していたパトリック・キャントレー(米国)は最終日も首位で迎え、勝利を狙っていたが、後半で崩れて「72」に甘んじた。
最終日を2位タイで迎えたウィル・ザラトリス(米国)は健闘していたが、彼は昨季の「マスターズ」以降、故障で戦線離脱し、今季のハワイからようやく戦線復帰。いまなお実戦感覚の完全復活には至っていない様子で、スコアを2つしか伸ばせず、「69」止まりになった。
やはり最終日を2位タイで迎えたザンダー・シャウフェレ、4位だったルーク・リスト(ともに米国)も、いまひとつ振るわずじまい。
そんなふうに上位陣が低迷していた中、7位タイから出た松山がただ一人、驚くほどの快走を見せたことが、大逆転勝利を可能たらしめた。
15番、16番と続けざまにピンにピッタリ付けてバーディを奪い、単独首位へ浮上した松山が、そのとき小さく笑みを浮かべた場面には少々驚かされた。最終日終盤の優勝争いの真っただ中で、松山のほほ笑みを目にしたことは、かつて一度も無かったからだ。
すでにマスターズを制し、メジャー1勝を含む通算8勝の松山は試合の勝ち方を熟知している。そして、PGAツアーにおけるシード権はもちろんのこと、メジャー大会やビッグ大会への出場資格はすべて安泰。不安要素が無い。
それが大きな強みとなり、心の余裕となり、そうした諸々がこの日の戦いのプラス要素になっていたのだと私は思う。
松山自身は肉体の不安要素が無かったことを、何よりうれしそうに語っていた。
「去年までは痛みがいつ出るかと不安ながらにやっていた。今年はストレスフリーでできている。今週もいい状態でできて良かった」
肉体に不安が抱えていた間は、自信レベルも低下し、だからこそ成績は上がらず、勝利からも遠ざかっていた。
だが、痛みから解放されたペインフリーが、彼の心を楽にしてストレスフリーをもたらし、それが最高のパフォーマンスにつながった。
「去年のプレーヤーズ選手権以来、トップ10に入っていなかった。今日はパットがすごく良かった。62は、これ以上望めないというラウンドだった。いいプレーができて自信になった。マスターズまで、まだ時間がある。しっかり高めていければと思う」
シグネチャー・イベントである同大会は賞金総額2000万ドル、優勝賞金400万ドル(約6億円)だ。それも松山のさらなるモチベーションになっていたのではないだろうか。
勝ってナンボ、稼いでナンボのプロゴルファー。「ここぞ」というところでタイムリーに勝利し、6億円を手に入れた松山のあっぱれな勝ちっぷりに、世界中のゴルフファンが驚きながら沸いている。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
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