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アマ打点は“9割がトウ”だから。ミズノ『S23』ウェッジ、9月16日デビュー【打ってみた】

トウへの肉盛りでセンター重心を狙う、ミズノ『S23』ウェッジ(左)。右は比較したヒール重心の『T22』

15日、ミズノが新商品発表&試打会を埼玉県のコースで行った。発表された新作は『S23』ウェッジ(税込24,200円)。新たな仕上げ「カッパーコバルト仕上げ」と「ホワイトサテンブラッシュ仕上げ」の2種類からなるグレインフローフォージドHD製法の“センター重心”軟鉄ウェッジである。

ミズノが救うアマの「9割がトウ打点問題」

開発に辺り、同社研究陣はアマチュアのウェッジの実打点を調査。すると「スコア70台〜120台のアマの90%以上がトウ側打点で、フェースセンターから大きく外れることが分かりました」。そこで、スイートスポット(芯)をフェースセンターに近づけるため、バック部の肉を取り、トウ側に集中的に約10gを配分。

「大多数の市販ウェッジの芯が実はヒール寄りにあり、ここをフェースセンターに近づけられたモノはごく僅か。軟鉄の一体構造ながら、多くのアマの実打点に芯を近づけることで、ショートしがちな方でもしっかり距離を出していただけます」(同社)

記者もそうだが「オープンスタンスで目標に真っすぐ振る」セオリーが染み付く人はフルショットと異なり、アプローチはカット軌道でトウ打点になりがち。バンカー越えなど重圧がかかると上下軌道もズレ、より芯から外れた打点で「ショート」のミスが増えてしまう。

芯に打点が近づくほど初速が上がってエネルギー効率が増すのがゴルフクラブの運命で、それは1Wもウェッジも同じこと。9割のアマの打点に合わせたのが、今回の『S23』ウェッジというわけだ。ただ、記者が打つと、その新機軸の問題を感じたのも事実である。

■トウ肉盛りが「重く」感じてしまう!

ここまで極端なトウ側への集中荷重ウェッジはほぼ記憶にない。よって、従来の通常ウェッジを使ってきた記者にとって、『S23』の試打では衝撃体験が待っていた。

まず、同社はツアープロが求める高い操作性を具現化した既存『T22』と、今作『S23』の比較試打を要望。ショットマーカーで調べると、どちらも記者の打点は同社の言う通りのトウ側……。そこは分かっていたが『T22』の直後に『S23』を試すと「重い!」。

同じヘッド重量とのことだが、ワッグルから始動、バックスイング、切り返し、インパクト付近まで『S23』は『T22』よりかなり重い。ヘッドは同サイズ・重さだが、動き出して遠心力がかかると『T22』より8ミリも重心距離の長い『S23』は、打ち手に重量感とオートマチックさを感じさせる。

ただ、クラブは“何かを失えば、何かが得られる”トレードオフの関係がつきもの。短重心距離の『T22』が高い操作性をくれるのに対し、8ミリ重心距離が長い『S23』は鈍感でオートマチックさを与える両極端な性能だ。プロと逆に、一定の動きをしたい初心者やアベレージ層には「スピンの入る、セットウェッジ」感覚かもしれない。

■30yで「+3.5y」、70yで「+10y」増!

『T22』と『S23』の同一スペック(56度)で70ヤード想定の打ち比べをトラックマン計測で2球ずつ行うと、弾道の違いが顕著に現れた。トウ打点の筆者は、『S23』で+10yも飛ぶ結果になり、初速が『T22』より『+2m/s』で、スピン量も多くなった。次に30yで2球打ち比べると、こちらも『+1m/s』ほど『S23』が速く、同じ振り幅とスピードで打ったつもりでも+3〜4yほど飛ぶ結果に。

同社は「ロボット実験で60yから+3〜4y、30yで+2〜3yほど『S23』が飛ぶ結果ですが、フルショットほど差が大きくなります」。打ち方が固定できてフィーリング入らないロボットはそうでも、人間の場合は、スイングや反応で差が異なるとのことだが、「どんな人が影響を受けやすいのか?」。

「短い重心距離に慣れて操作を求めてきた、フェース開閉の大きな男子プロに近い人ほど、『S23』より『T22』のような重心距離の短いウェッジを好む傾向です。反対に、開閉をあまり使わずプレーンに乗ったまま動かす人ほど『S23』を重く感じず、ショートのミスを防げて恩恵を受けやすいと言えます」。

記者は開閉が大きく、インパクトでパンチ(手元を止めヘッドの重さを乗せる)の入るタイプ故、遅れたトウの重さがモロに加撃に加わるのか。『T22』よりシャフトのしなりやトルクも大きく感じ、しなり戻りと共にトウの重さが余計に伝わり飛んでしまう感覚だった。

■大型アイアン使用者は、48〜52°で試す価値大!

なお、当日の来場者(クラブに詳しい識者や、メディアの記者ら)12人中「全員が程度の差はあれトウ打点」とのこと。記者が最も『T22』と『S23』の距離差が出たサンプルだったとか。同社は『S23』は「男子プロの求めるモノではない」と認めつつ、こう言う。

「軟鉄一体構造で、構えた顔つきはプロから評判の良かった『S18』を踏襲していますが、重心距離が極端に長い所は開閉が大きく操作性を求める人には不向きかもしれません。ただ、弊社の『JPX923ホットメタル』シリーズなど、大きなヘッドのアイアンを使う人には重心距離が整います。トウ打点のショートを防ぐだけでなく、アイアンの流れで振り感を整え、引っかけずに打てる利点もあります」(同)

これには記者も同意する。昨今ストロングロフト化したアイアンの使用者は、約43°に立ったPWとの間を埋めるため、48°を追加する必要に迫られがち。その48°や52°といったフルショットを多用するロフト帯で「S23ならアイアンとのつながりが良くなる」と感じた。

グリーン周りで様々な操作を使う58°などSWは従来通りが良いが、「大型の最新アイアン使用者は、PWの下に『S23』を試す価値アリ」と感じた。これらのロフト帯で単品ウェッジを追加したはいいが、「ショートばかりで届かない」なら試してほしい。

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