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心・技・体すべてが整った無欲のアイドル “価値を知らない”強さが勝利を生んだ【名勝負ものがたり】 | ゴルフのポータルサイトALBA.Net

初優勝時から次の優勝が待たれるほどの人気者

歳月が流れても、語り継がれる戦いがある。役者や舞台、筋書きはもちろんのこと、芝や空の色、風の音に至るまでの鮮やかな記憶。かたずを飲んで見守る人の息づかいや、その後の喝采まで含めた名勝負の舞台裏が、関わった人の証言で、よみがえる。

こちらもアイドル!プロテストに合格したばかりの松澤知加子

選手には時として、心・技・体の3つの波が、高いところでバチッと合う時がある。1986年、9月。26歳の生駒佳与子には、それが来ていた。プロならば、誰もが欲しい日本女子プロ実力ナンバーワンのタイトル・日本女子プロゴルフ選手権を前にしても、生駒の精神状態は穏やかだった。

前週に行われた「キヤノンクィーンズ」でプロ2勝目を飾ったばかり。21歳の若さでシード選手として活躍しリックスの良さも相まって人気が先行。早くから優勝を望む声にさらされ、前年の「北海道女子オープン」におけるプロ初優勝後にも「早く2勝目を」という声が周囲から上がっていた。それだけに、ようやく重圧から解放されたばかりだったからだ。

「ベテランの選手にとっては、『どうしても欲しいタイトル』ということにもなるでしょうが、私はまだ20代の半ばでしたし、前の週に勝っていたから気持ちが楽でした」。大一番に対しても特段気負いもなく、緊張感に苦しむこともなく、平常心で臨むことができていた。

技術面でも、充実の時を迎えていた。岡本綾子の事務所「ピージープランニング」とマネジメント契約。前年の12月には渡米してトレーニングも共にしていた。国内の試合に岡本が出場する時には、練習ラウンドに同伴し「ラフかまらはこうやって打つんだ、とか」(生駒)、その技術を間近に見て吸収。試合をこなしながらト阿玉らトッププロたちの中でもまれ、着実に成長していた頃だった。「トさんとか、大迫さんとか、うまい人たちと回ることができたことで、集中していいものをもらえた」。

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