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【日本代表】「4-0」「モビリティ」「カオスのコントロール」日本の現在地を読み解く3つのキーワード

日本代表は、10月7日にAFCアジアカップ予選の初戦を迎え、オーストラリアと戦う。11日にチャイニーズ・タイペイと戦い、成績に応じて、2024年4月のアジアカップ本大会への切符を手にする。そして、アジアカップで上位に入れば、同年9月にウズベキスタンで開催されるFIFAワールドカップの出場権を獲得できる。

つまり、アジアカップ予選は、1年後のW杯出場に向けた超重要な戦いだ。

日本は9月28日、予選に向けた国内合宿をスタートし、10月1日まで高円宮記念JFA夢フィールドでトレーニングを行い、その後、大会が行われる台湾へと移動して調整を続けている。

顕著だったのは、日本がベースとなる戦術をガラッと変更したことだ。これまで、ピヴォを軸にした3-1システムを採用してきたが、現在、試合やトレーニングで積み重ねているのは4-0システムだ。

木暮賢一郎監督いわく、2021年12月の木暮ジャパン発足からアジア王者となった2022年10月のアジアカップまでが第1フェーズであり、その後、第2フェーズへ移行してきたという。そこには、明確な意図がある。

「この1年は大事な1年。日本のフットサル界にとっても重要なこと」

そう断言する木暮監督に、国内合宿期間中に話を聞いた。

「モビリティを生かし、頭を使いながら相手よりも多く走ることが重要」
「日本のアイデンティティを持ったフットサルを、選手と共につくっている段階」
「カオスをコントロールしたい」

その言葉の真意とはなにか。

取材=本田好伸、福田悠、舞野隼大

※取材は9月29日と10月1日に実施しました

【日本代表】メンバー&スケジュール

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2022年のアジアカップ以降、次のフェーズに入った

──初日から多くのメニューが4-0を軸にしたものでした。アジアカップ予選に向けた合宿のコンセプトは?

前提として、我々は昨年のアジアカップ以降、U-23代表のフランス遠征、フル代表のモロッコやブラジル遠征で、非常にいい対戦相手とのマッチメイクを10試合以上も重ねてきました。とはいえ、ほとんどのゲームは、時間を使って準備してゲームに臨めず、みんなで集まってから1日か2日で調整してゲームを戦うサイクルでした。その取り組みで出た成果や課題を、このタイミングでブラッシュアップしてチームに落とし込むことが今回の国内合宿のテーマです。

──具体的にはどのようなことでしょうか。

攻撃、守備、トランジション、セットプレーを深掘りしています。攻撃はフランス遠征以降、少しずつ取り組んできた、モビリティを出して人との距離感を近くプレーすることで、少しずつ良くなってきた部分を具体的にアプローチしています。

──これまでは3-1を軸にしてきましたが、そこは積み上げてきた前提で、今は4-0に取り組んでいる。

物事にはフェーズがあります。自分が就任してから昨年のアジアカップまでは、4-0も大会中にやってきましたが、どちらかといえばピヴォを使った攻撃にフォーカスしてチームをつくってきました。決勝でイランに勝って優勝しましたけど、内容は、攻撃がすごく機能したというよりは、いい守備やゲームの流れを読んで勝てたと思っています。

そこで最初のステップはひとまず終わりました。

特に、立ち上げの1年目は非常に若い選手や国際経験の少ない選手が数多くいました。当然、結果と内容を求めているので、もともと持っている選手の特徴を生かす狙いもあり3-1を採用してきました。ただ、その先のステップである今回のアジアカップや、2024年のワールドカップで強豪国と対戦することを考えた時に、3-1だけでは非常に厳しいものがあります。

強豪国に勝つには、ボールを持つ時間を長くして、ディフェンスの時間を減らすことに取り組む必要があります。3-1とか4-0というよりは、選手の距離を近くして、よりモビリティを出してプレーしたいと思っています。そのなかでピヴォの選手がいればトランスフォームして、ピヴォがいなければ違う選手がピヴォのような動きをしてスペースを生み出すといったことを、昨年のアジアカップ以降から取り組んでいます。

大事なのは、なぜそれに取り組むかということです。ピヴォにはいい選手がいます。ただ、より体が大きな海外の選手や、今の世界のファウルの基準は非常にコンタクトが激しいことを考えると、ピヴォを起点にすることが困難なゲーム展開になってきます。そのなかで、ピヴォの選手に成長してもらう道と、ピヴォの選手も自陣方向に降りてきてプレーできる道をつくりたい。それでもうまくいかなければ、ピヴォの選手がいない状態でプレーする。一番いいのは、その3つすべての方法を持てることであって、今はそういった取り組みをしているということです。

おそらく、日本のFリーグで起きている現象やレベルと世界のそれとではまったく違うと思います。特に、この間のFutsal Nations Cupにおけるブラジルvsイランの決勝のように、モビリティはないけれども足を使えるGKや、フィジカル的に優れたゲーム構造も存在します。我々がこのサイズ感で同じ土俵に立つのは難しい。日本のアイデンティティや持ち味はなにかということをアジアカップ以降、スタッフでいろいろとアイデアを出して、今そのフェーズに入っているということです。

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本気で日本人に合ったフットサルに取り組んでいる

──前体制のブルーノ・ジャパンでは、強度の高い守備を武器にW杯を戦いました。モビリティは日本人ならではの武器になり得ますか?

我々はブルーノ・ガルシア、それ以前のミゲル・ロドリゴからスペインのフットサルを学んできましたが、攻撃を構築するというより、守備とセットプレーを軸にチームづくりをしてきたと感じています。おそらく、オフェンスに対して多くの時間を費やすことは今までなかったと思います。どちらかというと、スペインにあるフォーマットを日本に持ち込んで、そこに日本人選手がアダプトしていったという構図です。小学生年代のバーモントカップや中学生、高校生年代の大会など、育成年代からどういう環境下で日本の選手が育っているかをつぶさに感じながら、今は、かつてのような“日頃から取り組む機会がない”といったフィルターをかけていないので、ベストを築くために、選手とともに本気で日本人に合ったフットサルに取り組んでいます。

──先日のFutsal Nations Cupでは、自陣でボールを回している時に、石田健太郎選手などがパスを出した後、ブロックしてから後方にスプリントしてサポートする形が多いように感じました。あの動きにはどんな狙いが?

ボールホルダーをフリーにすることと、スペインやいわゆるモダンなフットサルの3人目の守備者がカバーリングを考えるものに対して、自分たちが後ろに下がることで時間とスペースをつくったり、相手がカバーリングをしてくれたりすれば、前には進まないですけど、健太郎のような配球に優れた選手がフリーになってプレスを回避できる狙いがあります。

もし、ベタ付きでマンツーマンのディフェンスをしてくれたら、カバーリングのいない状況でアタックできる。我々がスペインから学んできた守備のシステムに対して、負荷をかけながら、なおかつボールを保持して、チーム全員で時間とスペースをつくるためのアイデアの一つとして、そういう動きを練習しています。

──深い位置に下がるため、ある程度フリーでボールを受けられるメリットもある。

自分たちが前に走ると相手は後ろに下がるので、スペースは消えますよね。自分たちが後ろに下がって相手が来たらスペースは広くなり、来なかったら中央や奥のスペースは使えないですけど、後ろのスペースは使えます。我々は長くボールを持ち、相手を引き出した状態でアタックしたい。我慢強くボールを保持するためには、いいバランスで全員がしっかりとサポートできて、ボールホルダーよりも後ろに人がいるという、いくつかの原則に基づいてプレーできればと思っています。

スペースをいいタイミングで使いたいので、そこまでは我慢強くボールを持つ必要があります。多くのゴールを奪うことが難しいゲームもあるでしょうし、長くボールを持つことができれば、物理的に守備をする時間も減ります。どのスポーツでもそうですが、強豪国を相手に40分間、守り続けることは簡単ではありません。

──これまで以上に高い技術力が求められそうです。ただたしかに、保持率を上げることで守備の時間を減らせれば、相手が焦れて寄って来た際に前線のスペースをうまく使うことができますね。

そうです。攻撃や守備、トランジションで日本人のスピードや運動量というモビリティを生かし、頭を使いながら相手よりも多く走ることが重要ではないかと思っています。

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