なぜ日本の女子バスケは銀メダルを獲得できたのか。そして日本女子バスケの現在地は?【女子バスケの軌跡 Part.2】

日本の女子バスケが東京五輪(2021)で銀メダルを獲得した。これは紛れもない事実であり歴史的な快挙である。時は流れパリ五輪(2024)では、銀メダルを獲得したという期待を背に臨んだものの、まさかの0勝3敗でグループステージ敗退。
天と地を味わった女子日本代表ではあるが、先日行われたアジア杯では準優勝をするなど明るい未来も見えている。今回は女子日本代表とこれまでと未来について紹介していこう。

前回記事:
プロバスケ選手が企業の福利厚生を使える!? Wリーグとは一体?【女子バスケの軌跡 Part.1】

女子バスケの国際大会の実績

そもそもだが、日本の女子バスケは世界的に見ても強い方である。ここが男子と決定的に違うポイントだ。東京五輪(2021)の際は、開催時点でFIBAランキング10位。パリ五輪(2024)の際は、開催時点で9位であった。ちなみに、男子は東京の時に42位でパリの時は26位だった。

非常に簡単に伝えてしまうが、国際大会で安定的に上位の成績を残しているからFIBAランキングが高いのである。それだけ、女子バスケは国際大会で勝っているのだ。以下、簡単に東京五輪直前から直近までの国際大会についてまとめる。

2017 FIBAアジアカップ 優勝(3連覇)
2018 FIBAワールドカップ 7位
2019 FIBAアジアカップ 優勝(4連覇)
2021 東京2020五輪 銀メダル
2021 FIBAアジアカップ 優勝(5連覇)
2022 FIBAワールドカップ 9位
2023 FIBAアジアカップ 準優勝
2024 パリ2024五輪 12位
2025 FIBAアジアカップ 準優勝

直近のアジアカップで準優勝した際、最年少・19歳の田中こころ選手がオールスターファイブを受賞したが、女子バスケは特にこのような采配をしばしば行う。要は若いうちから国際大会を経験させ場数を踏ませるということである。新たなスターの誕生として話題にもなったが、このように世代が変わっても常に新しい顔が生まれていることや世界でも戦える戦力を保持し続けられている理由は、良くも悪くもよくある話で「ベテランと若手」の代替わりが非常にうまくいっている=若手の育成が非常に良いからであろう。

歴史的快挙!銀メダル獲得の要因

東京五輪に出場する前のFIBAランキングは10位。地元開催による優位性は多少なりともあると考えられていたが、まさか銀メダルを獲得すると確信していた人はきっと多くない。もちろん「可能性はある」と考えられていたが、銀メダル獲得時に大きく日本が盛り上がったことは今もなおメディアで取り上げられている。

この銀メダル獲得に大きく貢献したのがトム・ホーバスというヘッドコーチ。彼は東京五輪で女子を銀メダルに導いたことが評価され、現在男子の日本代表のヘッドコーチを務めているが、そもそも彼がどういった人物なのかを簡単に紹介したい。

トム・ホーバスHCの経歴

1990-94 アメリカの大学卒業後、ポルトガルリーグを経てトヨタ(現A東京)入団。
4年連続得点王や2年連続3ポイント王に輝く
1994-95 NBAのアトランタ・ホークスや独立リーグCBAでプレー
95-2001 日本復帰。トヨタ(現A東京)→東芝(現川崎)でプレーし引退
01-09 アメリカ帰国。一般企業に就職し、高校でコーチを経験
10-17 三度日本へ。最初はJX(現ENEOS)でコーチとして着任
11年から女子日本代表のアシスタントコーチ就任
16年にはJX(現ENEOS)でHCに昇格しコーチオブザイヤーも受賞
17年には女子日本代表もHCに昇格
17年以降 日本人に合ったスピードとスリーポイントとディフェンスにフォーカスした戦術を導入。結果的に17年と19年のアジアカップでは連覇を達成。加えて東京五輪で銀メダルの獲得に導いた。

ホーバスHCの強みは、まず通訳なしでコミュニケーションが取れることに加え、これまでの「海外選手の高さにどう対抗するか」という考え方以上に「自分たちの強みをどう生かすか」にフォーカスした戦術を作ることに注力。結果、日本人のサイズや成功率の高いスリーポイントを生かした早い展開のバスケットスタイルを確立した。

東京五輪をプレイバック

▪️グループ予選(グループB)
第1戦(7月27日):日本 74 – 70 フランス
第2戦(7月30日):日本 69 – 86 アメリカ
第3戦(8月2日):日本 102 – 83 ナイジェリア

グループ予選を2勝1敗で2位通過。1位通過はアメリカ。

▪️決勝トーナメント
【準々決勝:日本 86 – 85 ベルギー】

ベルギーにはエマ・ミースマン(WNBAのスター)が所属。後にこの東京五輪で得点王に輝くことになるのだが、この日も25得点・11リバウンド・6アシスト・3スティールを記録し大車輪の活躍だった。日本はホーバスHCの元でスピードとスリーポイントを武器にオフェンスを組み立てるも、エマを止められず残り数分まで劣勢の状態が続いていた。
ただ、最後残り15秒で町田から林へパスが繋がり、林が見事にスリーポイントを決め切って逆転に導いた。町田は18本のアシストを記録した。

【準決勝:日本 87 – 71 フランス】

予選グループで4点差の大接戦を演じたフランスと再戦。フランスは世界ランキング5位の強豪であり、予選グループ敗退を受けて日本に合わせて修正をしてくると予想されていたが、日本のスピードとスリーポイントがそれらを上回った。特にエースPGの町田瑠唯がこの日も引き続き冴え、オリンピック歴代最多記録となる19アシストを記録。町田が序盤からリズムを作ったことでシューター陣も波に乗り、序盤から一気に20点差をつけて早々に試合を支配した。
この日はスリーポイントが11/22の成功で50%と脅威的な数字を残したことに加え、ディフェンスでフランスを封じ込めたことも勝因となった。

【決勝:日本 75 – 90 アメリカ】

オリンピックで6連覇中の絶対王者・アメリカ。ブリトニー・グライナー(206cm)がインサイドで存在感を発揮し30得点・5リバウンド・2アシスト。これを筆頭に、最近自身のシグネチャーシューズを発売したエイジャ・ウィルソン(193cm)が19点・7リバウンド・5アシストを記録。また特にディフェンス面での貢献が光ったブレアナ・ステュアート(191cm)が14得点・14リバウンド・5アシスト・4スティールと、主力がフルに活躍をした。
一方の日本は、序盤から自分たちのリズムを作れなかった。早い展開にも慣れているWNBAの選手たちを擁するアメリカの対応力に苦しんだ。特にアウトサイドの選手たちも身長が高いためチェックの高さもこれまでと比べものにはならなかった。
ハードチェックされる前にスピードで崩してフリーを作ることもホーバスジャパンの狙いでは合ったが、この日は特に後半から得意のスリーポイントが入らなかった。結局決勝では8/31で26%という成功率。アメリカのディフェンスの勝利だった。日本はキャプテンの高田(17得点)とベンチ出場ながら得点源として活躍した本橋(16得点)以外、2桁得点はいなかった。エースである町田も押さえ込まれた。とはいえ試合終了後には、初の銀メダル獲得を喜び、またオリンピック7連覇となったアメリカ代表を讃えていた。
この大会で町田瑠唯は大会ベスト5とアシスト王に輝いた。この活躍により、翌年WNBAのワシントン・ミスティックスへ移籍・日本人4人目のWNBAプレイヤーになった。

町田瑠唯 提供・写真:西村尚己/アフロスポーツ

世界の壁、再び。パリでは予選敗退

パリ五輪では死のグループであるグループCに配置された。アメリカ、ドイツ、ベルギー、日本という組み合わせだが、前回の東京五輪で銀メダルを取った日本とはいえ厳しい戦いになることは予想された。さらに、世界各国が日本への対策を徹底して行ってきたこともポイントになった。良くも悪くも東京五輪の時はそこまで注目されていなかったため対策も甘めだった。ただパリではそうはいかず、徹底的に対策を練られた。結果的には0勝3敗でグループ予選敗退になってしまった。

各国はセオリー通りに高さとパワーを生かして得点することに加えて、早めにプレスをかけてきたりアウトサイドチェックを徹底するなど、自分たちの強みを生かしつつ日本の強みを消す作戦を立ててきていた。そのため、スリーポイントシュートの確率も東京五輪に比べると低くなってしまい、またその対策をされる前提で、さらに上をいく作戦を立てる・実行することができなかった。実はパリ五輪のタイミングではトム・ホーバス氏は男子のヘッドコーチになっていたため、女子のヘッドコーチは恩塚亨氏が就任。厳しい声もあったが、恩塚ヘッドコーチは自身の責任であると批判を受け入れたことも話題となった。

初戦となったアメリカ戦は、東京五輪でも散々やられたエイジャ・ウィルソンが支配的なパフォーマンス。24得点13リバウンド4ブロックと獅子奮迅の活躍だった。日本は前半で9本のスリーポイントを決めたが、後半にはアメリカに圧倒され76-102で終了。
2戦目のドイツ戦は、エースのサトウ・サバリーが33得点で大爆発。終始拮抗した展開を続けてきたが最後は日本が得点機会を作り出せずに万事急須。彼女を止めることができていれば勝てたかもしれないが、64-75で後がない状態に。
是が非でも1勝をもぎ取りたい日本の3戦目の相手はベルギー。東京五輪でも準々決勝で対戦した相手でありエマ・ミースマン(WNBAのスター)が所属していた。ベルギーは日本への対策を徹底していたこともあり、第1Qから大爆発。特にエマが前半から得点を量産した。第1Qで崩れた流れを日本はなかなか立て直すことができずに試合終了のブザーが鳴る。ファイナルスコア58-85で完璧に押さえ込まれ、日本のパリ五輪は予選敗退&出場国12国の中で最下位という結果に終わった。

日本の女子バスケの現在地

パリオリンピックは、わずか1年前の話である。ただ、パリ五輪で分かったことは、日本の調子が良いことや日本の爆発力などの前に、世界各国の進化が顕著であった。日本は完璧に研究され、戦術を封じられていたことが東京とパリの結果の違いを生み出しているはずだ。
さらに、東京で活躍した選手も4年たてば4歳も年を重ねたことになる。中堅選手はベテランになっているし、ベテランは引退もチラつく。このように若手と上手く入れ替えをしないといけないタイミングになっていることも事実だ。

また、好材料ではあるが、19歳で日本代表に選ばれたENEOSのPG・田中こころや、アイシンの野口など未来のスター候補も頭角を表し始めている。先日行われたアジアカップでは準優勝に終わったが、現時点で日本代表は世界ランキング9位。次に目指すのは2028年のロサンゼルス五輪であるが、果たして新たなスターが登場するか、今から楽しみだ。

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