
寒さも厳しくなりつつある12月29日(月)。
月〜金で働く会社員にとっては年末の最終出勤日となることもきっと多いこの日に、東京体育館がある千駄ヶ谷は一際熱い空間となっていた。改札を出た瞬間から多くの人だかりがあり、試合開始の約2時間前から長蛇の列ができていた。多くの人が足を運んでいた理由は、高校バスケの最後の舞台である「ウインターカップ」を一目見るために他ならない。
2025年12月23日(火)に開幕を迎えた、高校バスケの日本一を決める全国大会「SOFTBANK WINTER CUP 2025(以下:ウインターカップ)」。
男女各60校が出場し全国の頂点を目指して戦った、高校3年生にとっては最後の舞台であるこの7日間。高校生にとって年末最後の"仕事"となる今大会において、28日(日)には女子の決勝、29日(月)には男子の決勝が行われ、寒さを忘れるほどに高校バスケで東京体育館が熱く盛り上がった。今年の優勝を見事に勝ち取ったのは、男子:福岡大学附属大濠高等学校(2年連続5度目/以下:大濠)、女子:大阪薫英女学院高等学校(初優勝/以下:大阪薫英)の2校であった。
【女子】大阪薫英が初優勝!エースの三輪(#5)が30得点13リバウンドの活躍
男子決勝の前日。12月28日(日)に行われた女子決勝。
決勝は女子バスケ界きっての名門・桜花学園高校(愛知)と悲願の初優勝を見据える大阪薫英(大阪)が相見えた。両者とも、決勝までの道のりは決して簡単なものではなかった。
夏のインターハイの女王である桜花学園は2回戦から出場。初戦の柴田学園大学附属柴田学園(青森)を96-56で下した後は接戦が続いた。3回戦の福井工業大学附属福井(福井)戦では第3Qでようやく一歩リードし、最終スコア81-78と逃げ切り。準々決勝の東海大学付属福岡(福岡)戦も61-55で接戦をものにし BEST4入り。
そして準決勝の八雲学園(東京)戦では、相手ビッグマンのテウ・アダマに50得点23リバウンドという脅威的なスタッツを残されるも、#9竹内を軸にした早い展開から得点を重ね、77-71で勝利し決勝にコマを進めた。
大阪薫英は1回戦の土浦日大(茨城)戦を72-63で制すと勢いに乗り始める。2回戦の県立湯沢翔北(秋田)を88-64で快勝した後、優勝候補である日本航空(北海道)に83-80で勝利、準々決勝の倉敷翠松(岡山)に92-65、さらには準決勝、ウインターカップ3連覇中の京都精華(京都)を80-71で下した。
桜花学園が勝てば2021年以来の3年ぶり25回目の優勝。
大阪薫英が勝てば初優勝というストーリーだ。

30得点13リバウンドを記録した大阪薫英(赤)の#5三輪
序盤は経験でまさる桜花学園がリードを広げる。2年生エースの#9竹内を軸にパスが上手くまわり、中からも外からも得点を重ねていった。しかし、大阪薫英も#5三輪を中心としたインサイドアタックで必死に喰らいつき、前半を44-35の桜花リードで折り返す展開に。
後半、先に仕掛けたのは大阪薫英。マンツーマンからゾーンディフェンスに変え、#9竹内のペイントアタックを封じたことで、桜花のリズムが狂い始める。桜花はゾーンを打開すべく3Pシュートや速攻などを仕掛けるがミスも続いてしまい、3Qを終えて54-51。桜花リードではあるものの、ついに夏の女王の背中を大阪薫英が捉えた。
4Qも大阪薫英のディフェンスに手を焼いた桜花。なかなか思うように得点が取れない中で、残り3:21、速攻から溢れたボールを#5三輪がゴール下をねじ込み、ついに大阪薫英が61-59で逆転。その後、桜花は再逆転することができず、大阪薫英リードでそのまま試合終了。最終スコア66-61で、見事に大阪薫英がウインターカップを初めて制した。この試合を牽引した#5三輪は決勝の舞台で30得点13リバウンドのダブルダブルを記録。大会を通じて大黒柱としてしっかりと大阪薫英の屋台骨を支えた。

大阪薫英の初優勝が決まった瞬間
決勝後の全体記者会見にて、大阪薫英の安藤監督は「大阪薫英に入ってから11年目。前任の大阪府立豊島高時代からずっと大阪薫英を倒したいと思っていた。大阪薫英に入ったからには日本一を目指したいと、日本一を目指す選手たちとともに歩んできた。大阪薫英の伝統を含めさまざまな思いがある中で、ウインターカップ初優勝を達成できて本当にうれしく思う」とコメント。
また、エースとしてチームを牽引した#5三輪は「1年生の頃からスタートで試合に出場していたが、これまではずっと先輩たちを日本一にさせてあげることができず、悔しい思いをしてきた。自分達の代では「絶対自分がチームを日本一にするんだ」という強い気持ちを持って40分間を戦い抜いた。初優勝はとても嬉しく思いますし、大阪薫英がチームとして1つになったからこそできたと感じています」と笑顔で語った。

【最終スコア】
薫英 66:20|15|16|15|
桜花 61:24|20|10|07|
【大会ベスト5】
幡出麗実:3年(大阪薫英 #4)
三輪美良々:3年(大阪薫英 #5)
松本璃音:2年(大阪薫英 #6)
濱田ななの:3年(桜花学園 #6)
山田桜来:3年(桜花学園 #7)

写真左から、薫英の#4幡出、#5三輪、#6松本、桜花の#6濱田、#7山田
【男子】福大大濠が2連覇!1・2年生の活躍を3年生が牽引
福大大濠(福岡)は3年連続の決勝進出で、勝てばウインターカップ2連覇。
一方の東山(京都)は5年ぶり3度目の決勝で勝てば初優勝という組み合わせ。
福大大濠は、1・2回戦を圧倒するも3回戦で強豪の開志国際(新潟)と激突。オーバータイムまで持つれた激戦は、延長戦で#14本田が決めた2本のビッグショットでリードを広げ、粘る開志国際を振り切って77-75で勝利。そして準決勝。昨年の決勝と同カードであり、夏のインターハイ王者の鳥取城北(鳥取)と対戦。前半は大濠リードで折り返すも、第3Qに鳥取城北が息を吹き返し、54-52で最終Qへ。#5吉岡や#23ジャックの活躍で粘る鳥取城北を振り切って、最終スコア69-66で決勝進出を決めた。
一方の東山は、中部第一(愛知(1回戦))、八王子(東京(準々決勝))と対戦。始まる前から厳しい戦いになることがわかっていたが、中部第一に18点差(最終:86-68)、八王子に3点差(77-74)と接戦の末に勝利。エースの#5佐藤凪が躍動し、八王子戦では29得点7アシスト4リバウンドの40分間フル出場という獅子奮迅の活躍だった。準決勝は数多のスタープレイヤーを輩出している高校バスケ界の超名門である福岡第一(福岡)との対戦。「走るバスケット」を展開する福岡第一を相手に、負けじと得点を重ねるが、前半を36-35で終え接戦が予想された。しかし、この日も躍動したのはエースの#5佐藤凪。終わってみれば25得点10アシストのダブルダブルで、自ら得点しながら周りを生かしてチーム全体を盛り上げた。後半はディフェンスもギアを上げ、最終スコア72-58で東山が5年ぶりに決勝の舞台へ立つことに。
福大大濠は2連覇、東山は初優勝をかけて望んだウインターカップの最終日である12月29日。

赤が東山(京都)、白が福大大濠(福岡)
試合は第1Qから福大大濠ペース。1年生エースの#23ジャックと2年生エース#14本田が1on1で得点するシーンもありながら、控えながら15得点を記録した#8サントス、#7村上、#11櫻井らが良いところで得点を重ねる。なんとか接戦に持ち込みたい東山は、#5佐藤凪が自ら得点してつなぐも、大濠のディフェンスをなかなか崩すことができず、55-37の18点差・大濠リードで前半終了。
後半になっても流れは変わらなかった。3年生のゲームキャプテンである#13榎木が、この日は得意のゲームメイクに留まらず自ら得点も量産。試合を通して外角のシュートを決め切り3Pは6/9。合計22得点を記録してスコアリーダーとしても活躍し、また声を出しコミュニケーションを密に取ってフロアバランスを整えるなど、リーダーシップを遺憾無く発揮した。

[写真左]東山の#5佐藤 [写真右]大濠の#13榎木
最後まで東山を圧倒した大濠が、最終スコア97-71で圧倒。ウインターカップ2025は、大濠の2連覇で幕を閉じた。また、男子決勝カードは奇しくも昨年の準決勝と同一カードとなり、その際も84-58で大濠が勝利。ただ、今年も昨年も「26点差」を記録することとなり、東山に取っては苦い思い出となった。
決勝後の全体記者会見で、大濠の片峰監督は「今大会、福岡から東京に入る前に「優勝すると決めている。”優勝したい”ではなく、”優勝する”と決めて臨んでいた。また、11名でローテーションして今日の決勝まで全員でコンディションを整えながらプレータイムを共有しながらこの大一番を迎えられた。選手たちは本当によくやってくれた。誇らしい選手たちです」と胸を張った。
ゲームキャプテンであり決勝で圧巻のパフォーマンスを見せた#13榎木は「2連覇がかかったウインターカップの重要性は大会前から理解して、練習中から厳しくやってきた。学年として一丸となれたことが大きいと思います。厳しい時も3年生中心に声を掛け合っていて、試合でやるべきことを遂行できたのがよかった」と、彼らしく落ち着いた口ぶりで喜びを噛み締めた。

【最終スコア】
大濠 97:25|30|21|21|
東山 71:13|24|19|15|
【大会ベスト5】
吉岡陽:3年(福大大濠 #5)
本田蕗以:2年(福大大濠 #14)
白谷柱誠ジャック:1年(福大大濠 #23)
佐藤凪:3年(東山高校 #5)
中村颯斗:2年(東山高校 #8)

写真左から、大濠の#5吉岡、#14本田、#23ジャック、東山の#5佐藤、#8中村
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