ジョーダンは今、何してるの?あの人って今、ヘッドコーチなの!?90年代に活躍した名プレイヤーたちの現在【NBA講座vol.15】

マイケル・ジョーダンの時代で止まっているあなたは、今ジョーダンが何をしているかご存じであろうか。なんとなく「ジョーダンブランドの社長」と予想できるかもしれない。ただ、ジョーダンのように予想できる方が珍しい。
「え、今あの人ってこんなことしているの?」「ヘッドコーチなの!?」などなど、ジョーダンの時代で止まっているNBAファンのあなたが驚いてしまうかもしれない内容について紹介していこう。シビアな現実も踏まえて。

前回記事:
ジョーダンの息子は今……!? 往年の名プレイヤーたちの現役2世NBA選手【NBA講座vol.14】

ジョーダンのセカンドキャリア

まず、ジョーダンの現在を簡単に紹介したい。ちなみに前振りをしておきながら恐縮だが、ジョーダンはジョーダンブランドの社長ではない。ジョーダンの今の仕事を、以下にまとめる。

シャーロット・ホーネッツ(NBA)のオーナー 2010年にシャーロット・ボブキャッツ(現ホーネッツ)を買収しオーナー就任。2023年6月、マイケル・ジョーダンはチームの株式の過半数を売却することで合意。ジョーダン氏は少数株主としてチームに残っている。
NASCARカップ・シリーズのチームのオーナー兼会長 ストックカーレースのトップカテゴリーに所属する「23XIレーシング」というチームの筆頭オーナー兼会長として活動中
ジョーダンブランドの意思決定者の一部 社長はサラ・メンサ氏。ジョーダンブランド初となる黒人女性の代表取締役としてニュースにもなった。あくまでマイケル・ジョーダンは、彼女らが作るものに対して意思決定の一部として関わってはいる。あくまで彼の承認なしに進めることはできないと言う考え方だ。
投資家 不動産投資やスポーツ関連やメディアにも積極的に投資。また、会員制のプライベートゴルフクラブの経営もしている。
社会貢献活動 「Michael Jordan Foundation」などを通して、教育やコミュニティ支援などの慈善活動にも参加

最近のジョーダンは、大きく分けるとゴルフ場の経営と「2」のカーレースに注力。
まずゴルフ場に関して、2019年にフロリダで開業したプライベートのゴルフクラブ「The Grove XXIII」を経営している。ここはドローンによる飲食物の配達など最先端テクノロジーが多く導入されているゴルフクラブ。100名以内しか会員になれないため、超有名なスポーツ選手やセレブが名を連ねているそう。
また、「2」の「23XIレーシング」はホーネッツを売却し少数株主になってから特に注力している事業である。そもそもジョーダンの地元であるシャーロットではNASCARが非常に盛んだったため、彼自身も幼少期から馴染み深いスポーツ。「毎週日曜は必ずレースを見に行っていた」と語るほどだった。この「NASCARが好き」という気持ちを持ち続けていたことでチームを持ち参入することになる。現在はこのNASCARというスポーツの構造改革に向けてもまい進している。

 

NBA引退後の基本的なセカンドキャリア

ジョーダンのようにどこかのスポーツチームのオーナーになることやビジネスで投資や起業をすることは比較的多いものの、やはりメジャーなセカンドキャリアとしてはコーチ職もしくは解説者などの「引退後も引き続きバスケに関わる仕事をする」人が圧倒的であろう。

規模は大なり小なりあると思うが、大きく分けると以下のようなセカンドキャリアを元NBA選手たちは形成している。

コーチ・フロント職 ・NBAや大学チームのコーチ
・GMやフロント職
※現役時代の経験を生かして、チーム作りや選手育成に関わるケース
メディア・解説者 ・試合解説やスポーツ番組のキャスター
※後述するが、比較的ここのポジションに入る元NBA選手は多い
ビジネス(投資家・起業家) ・レストランやバー、不動産、スタートアップ投資
※ここに投資して失敗する人も多い
チームオーナー・経営者 ・NBAや他スポーツのチームオーナー
※現役時代にスーパースターとして活躍し大金を稼いだ場合に限る
社会貢献・慈善活動 ・奨学金基金、地域支援、社会問題への活動
※自ら病院を建設した選手もいる

 

関わり方を変えて……再びNBAに挑戦する人たち

まず、選手を引退した後にコーチやアシスタントコーチとしてNBAに再び挑戦している人は13人いる。他、1人だけ審判として挑戦する元NBA選手もいるが、13人の中で選手としてもコーチとしても優勝を経験したのは、たった3人しかいない。

名前 選手としての優勝 コーチとしての優勝 特徴
スティーブ・カー ・1996–1998 ブルズ (3回)
・1999, 2003 スパーズ (2回)
2015, 2017, 2018, 2022 ウォリアーズ (4回) 現役選手・コーチ両方で複数回優勝。史上最強の二刀流
ティロン・ルー 2000, 2001 レイカーズ (2回) 2016 クリーブランド・キャバリアーズ (1回) 現役時代は控えPGで優勝に貢献。HCとしてキャブスを優勝に導いた立役者
ドック・リバース 1983 ボストン・セルティックス (1回) 2008 ボストン・セルティックス (1回) プレイヤー時代は控え、コーチとしては名将。堅実派の成功例

 

▼2024-25時点でヘッドコーチ、アシスタントコーチをしている元NBA選手

【ヘッドコーチ】

名前 現在の所属チーム名 コーチ開始年
ドック・リバース ミルウォーキー・バックス 1999年(オーランド・マジック)
ジェイソン・キッド ダラス・マーベリックス 2013年(ブルックリン・ネッツ)
スティーブ・カー ゴールデンステイト・ウォリアーズ 2014年(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)
ティロン・ルー ロサンゼルス・クリッパーズ 2016年(クリーブランド・キャバリアーズ)
ウィリー・グリーン ニューオーリンズ・ペリカンズ 2021年(ニューオーリンズ・ペリカンズ)
チャウンシー・ビラップス ポートランド・トレイルブレイザーズ 2021年(ロサンゼルス・クリッパーズ)
ダグ・クリスティ サクラメント・キングス 2025年(サクラメント・キングス)

【アシスタントコーチ、審判】

名前 現在の所属チーム
カロン・バトラー マイアミ・ヒート
サム・キャセール ボストン・セルティックス
ロイヤル・アイヴィ ヒューストン・ロケッツ
コーリス・ウィリアムソン サンアントニオ・スパーズ
ジャロン・コリンズ ニューオーリンズ・ペリカンズ
ケンバ・ウォーカー シャーロット・ホーネッツ
※プレイヤー強化コーチ
レオン・ウッド NBA審判

事実上のNBA引退が決まっても3x3から再挑戦

また、アメリカ独自の3人制バスケのプロリーグ「BIG3」で活動してNBA復帰に向けてアピールする選手もいた(非常にレアなケース)。
2017年にスタートした「BIG3」は2017年にスタートしたが、創設者のアイス・キューブ(ラッパー兼映画プロデューサー)が創設し非常に話題となった。ハーフコートで距離が近く、6月-8月の短期間でシーズンが行われる。3ポイントよりさらに遠い一部のエリアを「4ポイントゾーン」と設定してゲームに面白みを追加したことで、よりエンタメ性の高いバスケットを展開した。

そのBIG3で毎年のようにMVPを獲得しているのがジョー・ジョンソン。
彼は1on1に非常に強い選手でありNBA在籍時代は「アイソ・ジョー」という愛称でも呼ばれていた。ジョンソンは2018年4月のNBA公式戦出場を最後に、引退宣言はせずに出場機会がなくなってしまった存在だが、その翌年である2019年にBIG3に挑戦。そこから毎年のようにMVPを受賞したり所属チームを優勝に導く中で、2021年12月にボストン・セルティックスと10日間契約を結んで、3年ぶりにNBAの試合に出場した。当時40歳ではあったが、ジョンソンは今もBIG3で活躍する往年の大スターである。彼は現在44歳だが、まだ選手としてのNBA復帰を諦めていないのかもしれない。

こんなことしているの!?意外なキャリア

番組「Shaqtin' A Fool」が大バズり

例えばスポーツ番組のキャスターなどをしている人間は正直に言うと多い。ただ、自分たちでバズる人気番組を作った事例はほぼない。元レイカーズに所属していたビッグマンのシャキール・オニールは「Shaqtin' A Fool」という、いわゆるNBA選手の「珍プレー・好プレー」を取り上げて小馬鹿にした番組が非常に人気。NBA選手側からすると「不名誉なことの象徴」とも言われているため、番組に取り上げられないように変なプレーはしないように心掛けていると語る選手も少なくない。

また、ケーブルテレビのTNTで放送している「Inside the NBA」で人気解説者としてシャキール・オニールと、彼の先輩に当たるチャールズ・バークレーは活躍している。

金融業界に転身し起業!

インディアナ・ペイサーズなどで活躍したトロイ・マーフィーはNBAで12年間プレーした後に、コロンビア大学で社会学の学位を取得し投資銀行へ就職する。これはNBA在籍したばかりの若い頃に、突然手に入ってしまった莫大なお金をどう管理すれば良いかわからず、信頼できるアドバイザーを探すことに苦労したことがキッカケ。
「これからNBAで活躍する未来のスターたちに、お金の管理で苦労してほしくない」と、投資銀行では特に「突然の富」を得た人に対して、低コストのインデックスファンドや税効率の高い投資戦略を進めるなどのアドバイスに注力する。
そして2019年に「Sweven Wealth」を設立。この会社は突然の富を得た人々に対し、財務計画や投資戦略のアドバイスを提供する会社である。さらに会社の利益は財務教育を支援する非営利団体に寄付。マーフィーは、金融リテラシーの向上と、アスリートや急成長した企業の従業員が直面する財務問題への対処を目指し今もまい進している。

さまざまな関わり方で、90年代の元NBA選手たちは今もバスケットに関わっていることが多い。NBAに入るくらいだから、当然だが心底バスケットボールが好きなのであろう。
今回の記事をキッカケに、「好きな選手の名前+現在」と検索して、引退後の推し選手も応援してみてはいかがか。

前回記事:
ジョーダンの息子は今……!? 往年の名プレイヤーたちの現役2世NBA選手【NBA講座vol.14】

【番外編】厳しい現実

NBAに限った話ではないが、マーフィーが起業するのも納得できるほど、元NBA選手の破産率は非常に高い。Sports Illustratedの調査によれば、「元NBA選手は引退後5年以内に約60%の人が引退後に財政的困難に直面する」というデータがある。現役時代は膨大なお金を得たことで豪邸や高級車、ブランド品などを購入しても問題なかったが、引退してからはそれを維持できない。そして価値観を変えられない。引退後も浪費をしすぎてしまったり、なかなかビジネスで上手くいかずに破産をしてしまったり、犯罪を犯してホームレスになってしまうケースなどなど。いずれにしてもお金に関するトラブルは非常に多い。

183cmでドリブル技術に長け、またダボダボな格好を流行らせたプレーでもファッションでもリーダー的存在だったアレン・アイバーソンは、NBAのキャリアで約200億円を稼いだ。ただ、浪費癖が全く治らなかったことで、引退後も散財をしまくった。投資でも失敗したが、アイバーソンが行ったのは「高級不動産投資」「ナイトクラブ関連の店舗出店」「アパレル事業への投資」等々がメイン。不動産は管理費や固定資産税が高すぎたがアイバーソン購入後に土地の価値が下がってしまい売却が難しくなり、またナイトクラブはそもそも店舗の経営経験がなかったため赤字だけが残って閉店。アパレルブランドもナイトクラブ同様である。また、最終的にはスポーツベッティングなどのギャンブルにも手を出したこと、詐欺まがいの案件にも引っかかったことなどもあった。
アイバーソンの場合は完全に金融リテラシー不足と管理不足が原因で、最終的には破産宣告を受けることとなってしまったのだ。

シャキール・オニールと一緒に新しいビジネスを始めるという噂も

このようにNBA選手は若い20代前半、場合によっては10代で大金を手にしてしまうことで引退後に金融トラブルを頻繁に起こしてしまっているが、お金は一切悪くない。選手たちが自ら学び計画的な運用や節税ができるようにならないといけない。ジョーダンやレブロンなどはしっかりとこの辺りの運用を勉強したことで、引退後も投資やビジネスで大成功し億万長者を維持することができている。マーフィーのように現役の頃から学べる環境を作っている企業は本当に貴重である。

NBAの平均在籍年数は「約4.5〜4.8年」であるとBasketball Referenceが統計を出している。スター選手でない限り、10年・15年と活躍し続けることは本当に難しい世界なのだ。引退後に何をするか。何ができるかは、スポーツ選手以外にも共通して言えることかもしれない。