
写真左:タイリース・ハリバートン(インディアナ・ペイサーズ)/提供:AP/アフロ:写真右:シェイ・ギルジャス・アレクサンダー(オクラホマシティ・サンダー)提供:AP/アフロ
NBAは、今年の2024-25シーズンで79回目を数える。来年で80回目のシーズンとなる世界最高峰のバスケットボールリーグは、今年のPLAYOFFSを見ていると、来年以降トレンドが変わりそうな気がしてならない。
日本時間で明日6/6(金)から始まるオクラホマシティ・サンダーとインディアナ・ペイサーズによるNBA FINALSは、そんな新時代の到来を予感させるような組み合わせだ。
本記事では、初心者の方にもわかりやすいようにNBAのトレンドを踏まえつつ、今回のFINALSの勝利予想をしていく。さぁ、いよいよ最終決戦だ!
NBAのトレンドとは
ファッションや音楽で流行りがあるように、バスケットボールにもその時代ごとにトレンドはある。
わかりやすい話で言うと、ステフェン・カリーという現役のスーパースターに例えよう。彼はとにかくスリーポイントを入れる。そしてスリーポイントを打つ回数も多い。どんなにバランスを崩しても決めてしまうため、他チームはカリーが「不調」に陥るのを待つことしかできなかった。
バスケットは基本的に2点か3点でしか得点がとれないため、カリーが凄まじい確率でスリーポイントを決めてしまうと、どんなに派手なダンクをしても、一生懸命走って簡単なレイアップを決めても結局2点であるため、同じだけ3点を決められては差が開くばかりだ。
それを見て「俺たちもスリーポイント練習して、たくさん決めればカリーにも勝てる!」といった具合で始まった「スリーポイント」というトレンドが、ここ15年前くらいまでの話である。ちなみにこの時は、「スタメン全員2mいかない超スモールラインナップだけど全員スリーポイントが打てる」ようなメンバー構成も流行っていた。
余談だが、その前はシャック&コービーのような「ガードとセンターのコンビ」が流行っていたし、その前はそもそもスリーポイントもなかったため身長の大きいジャバーやオラジュワンのような「インサイドプレー」が主流であった。そのようにNBAのトレンドは時代ごとに変わっているのだ。
サンダーとペイサーズによる変革
カリーが築き上げたスリーポイント多投時代に終わりを告げようとしているのが、今年のファイナルに進出したこの2チームである。
両チーム共通した特徴でもあるが、とにかく展開が早い。スラムダンクの豊玉高校のように、速攻で仕掛けるのが両チームともに得意である。この「展開の早いスタイル」が、おそらくこれからのトレンドになるだろうと予想されているのだ。
このバスケットスタイルは、現・宇都宮ブレックスの田臥勇太がNBA入りした2004年頃のフェニックス・サンズに似ている。サンズは当時「7 second or less(7秒以内にオフェンスを終える)」という、とにかく早いスタイルを強調していたが、この2チームもまさしく「7秒以内のオフェンス」の域だ。
この考え方は、「スリーポイントを多く決めて得点を伸ばす」のではなく、「相手よりも多くオフェンスの回数を増やすことで得点を伸ばす」というもの。わかりやすく「とにかく走る」ため、小細工なしのシンプルなバスケットスタイルだから、特に今年のFINALSは、初心者が見るにはうってつけである。
このような走るバスケットをする上では、ある程度身長があって「ダンクができる選手」が重宝される。ダンクシュートはレイアップよりもシュートの成功率が高く、速攻の時に得点が決まりやすいからだ。NBAの平均身長はちょうど2mほどだが、それくらいの身長の選手は、いわゆる何でも屋・オールラウンダーが多い。最近はこのようなオールラウンダーが走ってダンクをし、外からも決めて、リバウンドを取る、といった全員バスケットスタイルがトレンドで、恐らくペイサーズとサンダーは、このスタイルのパイオニアとして、歴史に名を残すはず。
さて、ここからはFINALSの勝敗予想に移っていこう。
▼両チームの歴史
両極端なヘッドコーチ
サンダーのヘッドコーチ(以下HC):マーク・デイグノルトは、2024-25シーズンのNBAの最優秀ヘッドコーチ賞にも選ばれた、若干40歳の若手HCで、今のNBAのHCでは最年少である。元々は大学でコーチキャリアを始めており、2014年からはサンダーの下部組織「オクラホマシティ・ブルー」で指揮を取っていた。2019年に内部昇格し、直近4年間で勝ち星を大きく伸ばしている(20→40→57→68)ことが評価された。
マークの指導は非常に現代的で、個性をとにかく尊重したオープンマインドな指導法をすることで有名である。トップダウンで「このプレーをしなさい」ではなく、選手1人ひとりに耳を傾けて、チームがどうすればお互いを高めあえるか、というシステムを構築してきた。平均年齢24歳の若手軍団・サンダーが、ここまで結果を出せているのも間違いなくマークの功績だろう。
一方のペイサーズのHCは、百戦錬磨のリック・カーライル。マークとは打って変わって、厳しいことを要求し高い目標を与える。そこに妥協や甘さは一切なく、同じ目標に向かって全力で向かう、リーダータイプのHCである。2011年にダラス・マーベリックスを優勝に導いた名将が、今度はジョーダンの時代にペイサーズのHCをしていながらも達成できなかったインディアナに栄冠を持ち帰ることに本気でトライしているのだ。
カーライルは歴代11の通算993勝という、とんでもない記録を持っているHCであるが、その勝利数が語るように、HCとしての先述の引き出しも非常に多い。そして今年のペイサーズは、その戦略を理解し即コートに反映できるクレバーなガード:タイリース・ハリバートンがいる。ハリバートンを中心としたとにかく走るバスケットをするために、スタメン以外の選手も起用する”10人バスケ”を今シーズンは強調しているが、そのように普段から全員で頑張る姿勢が、カーライルのおかげでペイサーズには根付いているのかもしれない。
▼3年前まで両チームは82試合あるシーズンで25試合以下の勝利数だった。
HISTORIC TURNAROUND 🔁
This Finals marks just the second time in NBA history that both teams had 25 or fewer wins 3 years prior!
Pacers/Thunder Game 1 of the #NBAFinals presented by @YouTubeTV gets underway tomorrow at 8:30pm/et on ABC. pic.twitter.com/xY0ZWfS3BT
— NBA (@NBA) June 4, 2025
体力勝負の持久戦
サッカーではしばしば見られるが、2チームの1試合あたりの走行距離に注目したい。このNBA FINALSは、おそらく近年稀に見る走力戦になるだろう。
走行距離に関して、ペイサーズはリーグ2位の19.1マイル(約30.5km)に対し、サンダーは16位の18.5マイル(約29.7km)で、約1kmの差がある。ペイサーズはパスもとにかくよく回すし、人が常に動いている状態に加え、ディフェンスでもオールコートプレスをかけることが理由であると考えている。
一方のサンダーは「ミスはパスから起きる確率が高い」と考えて、ドリブルを多く起用するスタイルが特徴的。その上で全員がドリブルに合わせたカッティングやスクリーンをかけてスペースを上手く作っている。
両チーム共に「走るバスケット」であるが、もし万が一、GAME.7までもつれる試合となった場合は、どちらに体力が残っているかが勝負の分かれ目になる気もしている。そうなった場合は身長にアドバンテージを持つサンダーがどうしても有利になるだろう。ペイサーズは走力戦で、最後の最後までしっかり走り切りたいところだ。
▼数字から見る両チームの分析
🔥 BEST TWO TEAMS SINCE JAN. 1 🔥
OKC and IND come in with the top two records in 2025, and the stats confirm their dominance!
Here's how the numbers stack up ahead of IND/OKC Game 1 of the #NBAFinals presented by @YouTubeTV, tomorrow at 8:30pm/et on ABC. pic.twitter.com/Jwp1HVYhrI
— NBA (@NBA) June 4, 2025
ジンクス
少し前の記事でも紹介したが、79年の歴史があるNBAにはやはりジンクスがある。それは「MVPを受賞した選手がいるチームは、受賞年に優勝できない」というものだ。
今回でいうと、サンダーのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが2024-25シーズンのMVPであるが、果たしてシェイは、そのジンクスを打ち破ることはできるか。
一方のペイサーズは、ダークホースとして決勝まで勝ち上がっている想定外なところがある。また、シーズン中の直接対決では、12/27の試合で114-120で敗戦、3/30の試合で111-132で敗戦し、今シーズンはまだサンダーから勝ち星を上げていない。そういった意味でも、PLAYOFFSでビュンビュンに吹いているインディアナの追い風を、FINALSでも吹かせたいところだ。
最後に。個人的に今回のFINALSは甲乙付け難く非常に良い勝負をすると思う。
シーズンをみているとサンダーは穴がなかったし若い選手たちがイキイキとプレーする姿は見ていて爽快だった。一方のインディアナは勢いが凄すぎる。ハリバートンはもちろんだが、2018-19シーズンにラプターズで優勝経験のあるパスカル・シアカムの存在も大きい。シリーズ通して「やられたらやり返す」といった具合で得点が多く入る試合が多いはず。間違いなく下馬評はサンダー優勝だが、個人的には4-2でペイサーズ。彼らの大逆転と勝負強さに、このプレーオフはとてもワクワクさせられたから、最後に彼らが優勝するところを見てみたい。
サンダーが優勝すれば、なんとシアトル・スーパーソニックス時代を含め46年ぶり。一方のペイサーズが優勝すれば、NBA入りしてからはなんと初優勝である。新時代の幕開けとなるNBA FINALSは、いよいよ日本時間の明日6/6(金)9:30からティップオフ。
視聴方法について
NBAは日本では3つの方法にて見ることができる。 1・楽天NBA:月額4,500円(税込)/全試合視聴可能/デバイス2台まで同時視聴可能 2・WOWOW:月額2,530円(税込)/毎週7試合まで視聴可能/デバイス1台まで 3・ABEMA de WOWSPO:月額1,980円(税込)/毎週7試合まで視聴可能/デバイス2台まで同時視聴可能 ※なお、楽天モバイルの契約者は、楽天NBAにてNBAの試合が全試合無料で観戦可能。 ライブ配信ではなく試合後のハイライト動画なども様々なチャンネルからアップされている。 試合の全てを丸ごとみたい方は、ぜひ上記の方法にてご観戦をお楽しみを。
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