
現在行われている2025年のNBA FINALSは、2016年以来・9年ぶりにGAME.7が開催されることとなった。そもそも、GAME.7までもつれるシリーズは過去を見ても記録にも記憶にも残ることが非常に多い。きっと今シリーズもそうなるはず。最終戦のGAME.7は、日本時間6/23(月) 9:00ティップオフ。
その前に、前回の記事に引き続きNBA FINALSの名場面について紹介していく。「ジョーダン」で止まっているあなたが、改めてNBAを好きになるキッカケになれれば非常にうれしく思う。今回は、後編。
▼これまでのシリーズ
▶もしジョーダンが今のNBAにいたら?コアファン編集部員に聞くNBA講座 vol.1
▶︎NBA選手ってお給料いくらなの?コアファン編集部員に聞くNBA講座 vol.2
▶「Gリーグ」の“G”は○○の頭文字!? コアファン編集部員に聞くNBA講座 vol.3
▶︎ジョーダンのブルズがやっぱり最強?優勝回数から見る、NBA勢力図【NBA講座 vol.4】
▶︎<NBA名場面>NBAは、まずここから知るべし!年代別優勝チーム解説【NBA講座vol.5】
2009-10年/ロサンゼルス・レイカーズ vs ボストン・セルティックス
まず前提から話したい。前回の記事の最後で2003-04シーズンのデトロイト・ピストンズについて触れたが、その前の3年間は、ロサンゼルス・レイカーズが3連覇(スリーピート)を達成していた。この時の「NEXT ジョーダン」とも言われていたNBAレジェンドのコービー・ブライアントと、216cm120kgの圧倒的な存在感でゴール下を支配したシャキール・オニールの「シャック&コービー」を止められるチームはいなかった。ちなみにこの3連覇の全てでFINAL MVPを受賞したのはシャックだった。
コービーはあまりにストイックなことでも知られている存在だった。朝の3時からシューティングを始めていたし、「24時間バスケに没頭する」「ジョーダン(23)のひとつ上をいく」という意味で、背番号を「24」にしたりと、とにかくバスケへの向き合い方が人とはかけ離れているほどだった。
一方のシャックはオフコートで派手な振る舞いをする陽気な性格で、選手としてのコンディション作りも何度も失敗していた。そういった意識の違いから2人は不仲になっていく。そして2000年代のレイカーズはシャックが全てMVPを受賞したことで、世間的にはシャックの方が評価が高かったこともコービーは不満だった。「シャックがいないとコービーは優勝できない」とまで言われていた。これは後に「和解」することとなるが、当時はこのような背景もあり2人は最強のコンビなのに性格的に最悪の相性だったため、結局、2004年ピストンズに敗北してコンビ解散することとなった。
コンビ解散しシャックはマイアミ・ヒートへ。移籍してからわずか2年でドウェイン・ウェイドと2006年のNBA FINALSで優勝を勝ち取った。その一方でコービーはファイナルに行くことができず、2008年にFINALSへ進出するもボストン・セルティックスに2-4で敗北。ここでも「やっぱりコービーはシャックがいないと勝てない」と言われた。
タイトルとして挙げた「2009-10年のNBA FINALS」は、コービーが自分の価値を証明する年になったためピックアップした。結論からいうと、ボストン・セルティックスとのシリーズで4-3で勝利し優勝。2年前のリベンジ達成と共に、コービーはFINAL MVPを獲得した。
「シャック」ではないが、新たな相棒「パウ・ガソル」とのコンビは歴史的に見ても史上最強のデュオのひとつだったと思う。
レイカーズとしては、セルティックスに敗れた2008年のFINALSを含め、2009、2010年と3年連続での出場を果たし、2009、2010を優勝し2連覇達成。スリーピートがかかった2011年は、フィル・ジャクソンHCが「コーチ業の完全引退」を宣言していた年であったがPLAYOFFS一回戦で敗退した。その後、コービーは膝の怪我やアキレス腱断裂で厳しいシーズンを送っていたものの、2015-16シーズン、コービーにとって最後の引退試合で60得点を記録するなど、本当に惜しまれながらコートを後にした。そしてその5年後。2020年1月にコービーは飛行機の不慮の事故で、わずか41歳の若さにてこの世を去った。語りきれないほどの功績を残したコービーを讃え、その2020年からオールスターのMVPを「NBAオールスターゲーム コービー・ブライアントMVP賞」と改称したことをはじめ、NBAではコービーへのリスペクトを込めて、現在も様々な活動が行われている。
2016-17年/クリーブランド・キャバリアーズ vs ゴールデンステイト・ウォリアーズ
コービーが2連覇を達成した翌年から、「レブロンの時代」が到来する。
レブロンとは、レブロン・ジェームズのことである。2003年のNBAドラフトで高卒にもかかわらず鳴り物入りしたレブロン。地元:クリーブランドのチームに入団したことで街は盛り上がり、そしてレブロンも地元チームに入れたことを非常に喜んだ。
入団してわずか4年後の2007年には、チームとして史上初となるNBA FINALS進出に導いた。ただ、FINALSは4連敗で敗退。以降もなかなか勝てなかった。勝てない理由をレブロン1人のせいにされていた時代もあった。当然だがレブロンは優勝したい。優勝するために全てをバスケに捧げていたが、勝つことができなかったし、フロントも勝てるチームを作ることができなかった。
そんな中でレブロンはついに、クリーブランドを離れる決断をする。2011年。仲の良かったドウェイン・ウェイドとクリス・ボッシュと共に、スーパースタートリオ(“スリーキングス”と称された)を、マイアミ・ヒートで結成した。
当然、クリーブランドのファンからは「裏切り者」と言われたし、さらに”スリーキングス”結成初年度はダラス・マーベリックスにNBA FINALSで敗北を喫したことで「どうせお前は勝てない」と散々な言われっぷりでもあった。
ただ、翌年以降、2012年と2013年はNBA FINALSで優勝を果たす。この2連覇の際にMVPを獲得したのはレブロンであった。2014年はFINALSでサンアントニオ・スパーズに敗れたためスリーピート達成とはいかず、ここで”スリーキングス”は解体をした。
解体後、レブロンが復帰先に選んだのはクリーブランドだった。地元ファンは大いに沸いた。復帰直後の2015年にいきなりNBA FINALSに導き、「やっぱりレブロンは凄い!」となった。ただ、その目の前に立ちはだかったのは、カリー率いる「ゴールデンステイト・ウォリアーズ」。2015年のFINALSでは、GAME.2をオーバータイムの末に制し、GAME.3も取ったが、その後3連敗で虚しくシリーズ敗退。その結果「やっぱりレブロンじゃ無理なのか……」と、多くのファンが落胆した。
その翌シーズンもクリーブランドをNBA FINALSに導いたレブロンだったが、対戦相手は同じくウォリアーズ。この年のウォリアーズは、NBAが82試合あるのに対して、過去最高の「73勝9敗」という、ジョーダンの時代のブルズ(72勝10敗)を超えるNBA最高成績を残したとんでもない1年だった。
FINALSはGAME.3こそ勝利したものの、他はボロボロ。GAME.4終了時点で1勝3敗と後がない状態で、レブロンが一気に覚醒する。
40点超えのパフォーマンスで3勝3敗のイーブンに戻すと、GAME.7は4点差を守り切って優勝に導いた。文字で伝えると質素なものであるが、1勝3敗から大逆転勝利をしたシリーズは2025年現在のNBAでもない、歴史上初の出来事となった。
ようやく、地元のクリーブランドをNBAで優勝をさせることができたレブロンは勝利後に大粒の涙を流し、ファンに対して感謝のメッセージを述べた。
次の章で詳しく話をしていくが、レブロンとキャバリアーズが優勝できたのはこの年だけである。次の2017年、2018年も同じ顔合わせ(ウォリアーズvsキャバリアーズ/このカードによるFINALSは2015年〜2018年までで4年連続)になったが、2017年は1勝4敗、2018年は0勝4敗でボコボコにされた。
2022-23年/ゴールデンステイト・ウォリアーズ vs ボストン・セルティックス
レブロンとキャバリアーズに1勝3敗で敗れたウォリアーズは、2017年にNBAの中でも超スーパースターの1人であるケビン・デュラントを獲得する。これによって完成した最強のスタメン5人を”デス・ラインナップ”と世間は呼んだ。言葉通り、この5人を相手にしたら即死(絶対に勝てない)と思われるほどのスーパースター軍団だったわけで、結果的に2017年、2018年の2回のNBA FINALSでレブロンとキャバリアーズをボコボコにできた。ただ、この2年間でMVPを取ったのは移籍してきたデュラントであった。
シャック&コービーの話ではないが、結局元々いた人間ではなく移籍してきた人間が評価されることに対して、今回で言うと「ステフェン・カリー」が的になった。要は「カリーはデュラントが居るから勝てた」と言われたのだ。
もちろん、カリーはデュラントがいない2015年にNBA FINALSでレブロン率いるキャバリアーズに勝利しているしそんなこと言われる筋合いはないのだが、2016年に敗れてすぐにスター集団を作ったことで、世間はカリーとウォリアーズを叩いた。
当然このデス・ラインナップは選手の契約金にとんでもない額を使っていたため、NBAが設定するサラリーキャップ(選手の契約に使っていいお金の上限)を裕に超えていた。サラリーキャップを超えるとラグジュアリータックス(贅沢税)をリーグに支払わないといけないが、3シーズン連続でラグジュアリータックスを支払ったチームは、4年目以降に改善できないと「リピータータックス」として、簡単に言うと「倍の贅沢税」を支払う義務がある。
高額な税金をリーグに払うことを避けるべく、結局デュラントは在籍4年、リピータータックスの対象にならない年に他チームへ移籍した(在籍は2016年から2019年まで)。よって、このウォリアーズの王朝は最初から終わりがわかっていたような契約だったとも言われている。
デュラントが去った2019年。たまたま年が重なっただけであるが、ウォリアーズは本拠地をサンフランシスコのチェイス・センターに移転。ただ、カリーがシーズン序盤に骨折。相棒のクレイ・トンプソンは2019年のFINALSの膝の怪我でシーズン全休となったことで、2019年以降、長い低迷期が続いた。
2022-23シーズンのウォリアーズは、2015年の時と同じような形だった。前評判はそこまで高くなかったが、チームは若手とベテランが見事に融合をしドラフトで獲得した選手も成長。また、ずっと伸び悩んでいて”ハズレ”とも言われていた2014年のドラフト1位のアンドリュー・ウィギンズが大ベテランとなったアンドレ・イグダーラによって急成長をしたことで、一気にカンファレンス3位に到達。
この年は長年の相棒であるカリーとトンプソンの"スプラッシュブラザーズ"も非常に健康だったことで、PLAYOFFSの勝ち方を知る2人がシーズン後半から徐々に本領を発揮しFINALS優勝まで駆け抜けた。2022年の優勝で、カリーはMVPを獲得。FINALSにはすでにこの時で6度出場していたが、FINAL MVPを受賞したのは初であった。この時に、「デュラントがいなくても勝てる」ことを証明したカリーは、37歳となった今もゴールデンステイト・ウォリアーズのフランチャイズプレイヤーとして活躍を続けている。
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