
写真:比江島慎(宇都宮ブレックス)/提供:千葉 格/アフロ
2025年10月3日。いよいよ2025-26シーズンの「りそなグループ B.LEAGUE」が開幕を迎える。10周年というメモリアルイヤーを彩るべく、「ありがとう」と感謝を多くの人に伝えた大型広告が話題にもなっている。来年2026-27シーズンから始まる「B.革新」も目前に控え、変化に対応すべく各チームがユニークな補強を施したり新アリーナが建設されたりと日本中を巻き込んでいるBリーグ。
バスケットボールを
愛するすべての人に、
ありがとう。#バスケットボールを愛するすべての人にありがとう#Bリーグ #Bリーグ10周年 #渋谷駅 pic.twitter.com/wl7D7lbenS— B.LEAGUE(Bリーグ) (@B_LEAGUE) September 29, 2025
今回は開幕前に、今シーズンの注目ポイントをいくつか紹介したい。
また、元NBA選手たちも非常に多く加入したため、まだ見ぬ彼らの素晴らしさをここで紹介できればと思う。
今シーズンの注目ポイント
まず今シーズンは来年の2026-27シーズンから始まる「B.革新」に向けた最終準備の年である(「B.革新」の詳細を知りたい方はぜひ前回記事から読んでもらいたい)。一番わかりやすいところで言うと、外国籍選手の同時にコートに立てる人数が「2名」から「3名」に変わる。ただし、契約できる人数は最大3名でこれまでと変更なし。
今シーズンを含めたこれまでのBリーグは「外国籍選手がコートに立てるのは2名まで」というルールが設けられていた。加えて、帰化枠もしくはアジア特別枠(帰化枠は、日本国籍を取得した元外国籍選手のこと。アジア特別枠は、Bリーグが定めるアジアの14カ国出身の選手のこと)を1名コートに立たせることができる。よって従来は「日本人3名+外国籍2名」が定番で、「日本人2名+帰化枠orアジア特別枠+外国籍2名」ができれば理想、といったイメージだった。
参考までに、昨年優勝した宇都宮ブレックスのスタメンは以下の通り。
ポジション | 名前 | 出場枠 |
PG | D.J ニュービル | 外国籍 |
SG | 遠藤祐亮 | 日本人 |
SF | 比江島慎 | 日本人 |
PF | ギャビン・エドワーズ | 帰化枠 |
C | グラント・ジェレット | 外国籍 |
ブレックスの場合は、控えセンターに外国籍のアイザック・フォトゥがいるため、外国籍はニュービル、ジェレット、フォトゥの3名となる。どうしても2mを超えるような日本人ビッグマンは母数が少なく獲得が難しいため、多くのチームは外国籍のビッグマンを獲得する傾向が強い。そうでもしないと高さで圧倒的に不利になってしまって思うようにリバウンドを取れずに負けてしまうからだ。ブレックスの場合は帰化枠にギャビンというビッグマンがいるから、ニュービルのような外国籍のガードを入れてもしっかりリバウンドを取ることができる。もちろんこれが正解というわけではなく、例えばガードやフォワードの選手でアジアの選手を獲得してアジア枠を使うこともOKだ。
ただし、今後はこの外国籍選手が「最大2名→3名」に増えことによって、シンプルに外国籍選手の出場機会が増えることになるわけだが、もし仮にブレックスが現状のメンバーで2026-27シーズンを迎えると、以下のラインナップを組むことが可能になる。
ポジション | 名前 | 出場枠 |
PG | D.J ニュービル | 外国籍 |
SG | 比江島慎 | 日本人 |
SF | ギャビン・エドワーズ | 帰化枠 |
PF | アイザック・フォトゥ | 外国籍 |
C | グラント・ジェレット | 外国籍 |
可能ではあるが、このメンバーが正解かと言われると難しそうだ。ギャビンにフォワードができないとは思えないが正ポジションではないため無理なコンバートになりかねない。
逆にブレックスは良い日本人選手も多いため、現状のタイムシェアを継続しながら「日本人2名+帰化枠+外国籍2名」を軸に全員で2026-27シーズン以降も走り抜けるのが、もしかすると良いのかもしれない。
一方で、外国籍選手が3人コートに立てることを見越して、ガード、フォワード、インサイドでそれぞれに外国籍選手を獲得するチームも出てきた。3人が同時にコートに出た時に個の力を存分に発揮したハイレベルなバスケットを展開できると期待してのものだろう。帰化枠やアジア特別枠を使えば、実質外国籍選手は4名までコートに立てるのだから、これを見越してロスターを作ること自体は何も不思議ではない。外国籍選手の出場枠争いはもちろんだが、日本人選手の生き残りをかけた戦いの”プロローグ”的な1シーズンに、きっと今年はなるはずだ。
そんな翌年の「B.革新」をターゲットにした今シーズンは、今までになかった起用方法や戦術が間違いなく試される1年になるだろう。最終準備の年を迎えて、各チームが来年を見据えてどのような戦いを繰り広げるか。そしてその中でどのチームが優勝を勝ち取るのかは大注目のポイントだ。
注目の新外国籍選手たち
外国籍選手が同時に3名までコートに立てるようになる2026-27シーズン。外国籍選手から見れば、特になかなかNBAなどで結果が出ていない選手からすると、プレータイムをしっかりともらえて、そこそこのお給料を毎月ちゃんともらえるのは悪くない話である。実際、日本のバスケットボールというマーケットの盛り上がりや競技レベルなどに魅力を感じて、NBAなどで素晴らしい実績を残してきた選手たちが、今年は日本にやってきた。今回は特に驚いた5名をピックアップして紹介していきたい。
ジャリル・オカフォー/レバンガ北海道
「生まれた時代が悪かった」としばしば言われる2015年のNBAドラフト全体3位指名を受けたビッグマン。ちなみに八村塁はドラフト全体9位だった。このことからも、以下にオカフォーがNBA入りする前に評価を受けていたかがわかるはず。
ドラフト1年目にして「NBAオールルーキー1stチーム」に選出されたこともあり、211cmながらしなやかな動きができるストレッチビッグマンである。簡単にいうとスーパースターなのだ。
オカフォーはゴール下の高いフィニッシュ力が売りの選手。80年代に「ドリーム・シェイク」という技で多くのファンを魅了したアキーム・オラジュワンのようなフットワークの軽さとステップワークで相手センターを翻弄して得点を決められるのだが、残念ながらスリーポイントの制度はそこまで高くない。
もし、オカフォーがジョーダンの時代に生まれていたら、きっと彼はスーパースターだっただろう。昔のNBAはインサイドでどれだけ得点を取れるかが重要視されていたため、オカフォーのような選手は引く手あまただっただろう。ただ、オカフォーがドラフト入りした2015年といえば、NBAはステフェン・カリーとウォリアーズがスリーポイント中心のバスケットボールで初めて優勝した年であり、以降もそのスタイルで何度も優勝を勝ち取った。
これによって、オカフォーのようなインサイドで存在感のある選手はNBAでは年々需要がなくなっていってしまったのだ。
ただ、あくまで今の時代のNBAに合わなかったというだけであり、オカフォー自身のスキルは未だにアンストッパブルなものがある。NBAの下部リーグである「Gリーグ」のインディアナ・マッドアンツで富永啓生と同じチームであり、今度は舞台を日本に移して再び同じチームでタッグを組む。この2人がBリーグをどう席巻していくかは非常に楽しみである。
ジャレット・カルバー/仙台89ers
八村塁と同じ2019年のNBAドラフトで、八村より高い全体6位指名でNBA入りを果たした、名門・テキサス工科大学出身のエリート。大学時代はエースでありプレイメイカーとして圧倒的な存在感を放っていたものの、残念ながらNBAでは「スポットシューター」と「ディフェンダー」という、いわゆる「3&D(スリーポイントとディフェンスが得意な選手)」として活躍した。ただ、カルバーはボールを持って輝く選手でもあったことで、なかなかNBAでは大学ほどの輝きを放つことができなかった。
海外リーグやGリーグで再び自分がエースとしてプレーできる環境に身を置いてからは、とてものびのびプレーをしており、得点も圧倒的に伸びる結果となった。1人で30得点以上を重ねる試合も多く、本来の持ち味を取り戻したタイミングで、仙台に加入が決まった。
今年の仙台は、カルバー(SF)と2m超えの外国籍2名+アジア特別枠でセルジオ(SG)という構成で、日本人ビッグマンで代表経験を持つ井上宗一郎もいる。カルバーをどのように起用していくかが非常に楽しみであるが、おそらく「カルバー+井上+外国籍」で、走るバスケットを展開しつつインサイドを固めていくのではないだろうか。カルバーが新天地の日本で、どこまで本来の持ち味を出せるか非常に楽しみだ。
ナシール・リトル/千葉ジェッツ
2023-24シーズンにNBAのフェニックス・サンズで渡邊雄太とチームメイトだったリトル。サンズの前はポートランド・トレイルブレイザーズに所属しており、スタメンを張っていた時期もある実力者である。アスレチックなプレーと精度の高い3P、またハードなディフェンスが武器の選手だ。手足が長くフィジカルも強ければ経験値もある。
千葉ジェッツのロスターに目を向けると、外国籍はリトル(SG/SF)、DJホグ(PF)、ムーニー(C)の3名。アジア枠のビッグマンで208cmのマイケル・オウ、元NBA選手である渡邊雄太がいる。もちろん、日本バスケ界ではオンコートでもオフコートでも人気である富樫勇樹も千葉ジェッツだ。
2026-27のB.革新以降は「富樫、リトル、渡邉、ホグ、ムーニー」というラインナップを組むことができるため、これを見るとNBA Gリーグのチームにも勝てそうなほどのインパクトだ。インサイドのメンバーだけではなく、千葉には優秀な日本人のウイングもたくさんいるため、リトルがSFやPFまでローテーションできると、さらに千葉は良いローテーションでタイムシェアをしながらシーズンを過ごしていけることになるだろう。現時点では上記のラインナップはできないものの、渡邉がPFをできるためリトルはコンスタントに出場してくるはず。NBAでも活躍し続けてきた小さな巨人が、日本のBリーグを席巻する。
ブランドン・デイヴィス/アルバルク東京
NBAでしっかりと過ごすことができたのは1シーズンと少しであったが、そのあとユーロリーグに渡ると、どのチームでもMVP級の活躍を見せチームを優勝にも導いてきたデイヴィス。ユーロリーグでは「オールユーロ1stチーム」にも選出された経験があるスター選手であり、彼がアルバルク東京に加入したというニュースは業界内でも話題になった。
208cm 110kgのビッグマンで、アスレチックなプレーが魅力。素晴らしい跳躍力を武器にした激しいダンクやブロックショットで幾度となく観客を沸かせて来た。今回ピックアップした中では最年長である34歳だが、ベテランらしく高いバスケットIQを持ち合わせており、重要な局面での判断力も素晴らしいものがある。
アルバルクは昨年シーズン途中にビッグマンのアルトゥーラス・グダイティスが離脱、シーズン終了後にブラジル代表でありチームのエースでもあったレオナルド・メインデルがチームを離れることになった。デイビスともう1人のマーカス・フォスターが新規加入になったが、この2人が優勝への鍵を握ると考えて差し支えない。特にデイビスはインサイドと得点の両面での活躍が期待されることに止まらず、1年目ながらベテランらしいチームを勝利に導くプレーを見せてくれることも期待されている。ユーロリーグのレジェンドは、アルバルク東京をどこまで連れていってくれるのか。
スタンリー・ジョンソン/長崎ヴェルカ
今オフ一番のビッグサプライズと言っても過言ではないのが、長崎ヴェルカのスタンリー・ジョンソン加入だろう。最初に紹介したオカフォーと同じ2015年のドラフトで、全体8位でデトロイト・ピストンズ入りしたジョンソンは、8年もの間NBAで活躍をした。その後はさまざまなチームを渡り歩いたジョンソンではあったが、2021-22年にはレブロン・ジェームズとコンビを組んで、主にディフェンスとフィジカルで存在感を発揮。レブロンからも太鼓判を押され、レイカーズでは素晴らしい1年を送っていた。
一方でジョンソンは、より自分の活躍できる場所を求めて2022年以降は主にユーロリーグなどでプレーを重ねていた。そこで自分自身がまだまだ活躍できることを証明し、今年から日本を拠点にすることを決定したとのこと。フリーになったら確実に決めてくる高確率の3Pは未だに脅威的であり、Bリーグのプレシーズンゲームの長崎ヴェルカvs熊本ヴォルターズ戦では、前半だけで4本の3Pを決めるという圧巻のパフォーマンスを披露した。
198cmながらフィジカルも強く走れる選手であればこそ、長崎ヴェルカの戦術にはきっとフィットするであろう。何よりもジョンソンはディフェンスが一番の強みである。ラン&ガンのバスケスタイルのみならずディフェンシブなロースコアゲームもものにできる経験とIQを兼ね備えているため、彼を止めるのは一筋縄ではきっといかないだろう。
まとめ
明日から開幕するBリーグは、バスケットLIVEとDAZNで視聴可能である。
バスケットLIVEは携帯電話がソフトバンクかYモバイルであれば無料で視聴可能。2023年のW杯以降、今Bリーグは非常に人気コンテンツになっておりチケットも争奪戦だ。
「まだ見たことはないけど見てみたい」という方は、ぜひ配信でご覧ください。
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