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「僕はプレーでやり返す」“NBAの洗礼”を楽しむデニ・アブディヤ。八村塁を慕うイスラエル人が秘めた可能性<DUNKSHOOT>

今季2年目を迎えたアブディヤは、平均得点は昨季から減少しているが、リバウンドとアシストの数字は上昇している。(C)Getty Images
NBAでデビューした新人選手にとって、チャレンジングなのは世界最高峰リーグでのプレーだけではない。トラッシュトークによる心理的な揺さぶりにどう対応するかも、このリーグで生き抜く上で鍛えなくてはならない要素だ。それが外国人選手ともなれば、ハードルはさらに高くなる。

2020年のドラフトでワシントン・ウィザーズから1巡目9位指名を受け、今季2年目を迎えたイスラエル人フォワードのデニ・アブディヤはまさにいま、その洗礼を受けている。

「だいたい最初のマッチアップでやられる。でも僕が相手を止めたり、きっちりディフェンスできると、その後は徐々に収まってくることがわかってきたんだ」

ルーキーシーズンは54試合、うち32試合に先発出場して平均6.3点、4.9リバウンド、1.2アシストという数字を記録したアブディヤ。シーズン終盤に右足首を骨折したこともあって今シーズンはやや出遅れ、これまで全11試合に出場ながらもまだ先発起用はない。しかし平均21分の出場で平均5.1点、5.2リバウンドをマークしている。

「トラッシュトークを仕掛けられても気にしないよ。僕は言い返したりしない。僕はプレーでやり返す。そもそも僕にはトラッシュトークできるほどのボキャブラリーがないからね」
母国では16歳からプロとして活動してユーロリーグ出場経験もある。その当時に先輩プレーヤーから厳しく扱われた時があったというアブディヤは、コロナ禍でシーズンが休止になった2020年には、イスラエルではまだ義務である兵役にも従事。その過程で精神的タフさを養ってきているのだろう。

欧州ではディフェンスに定評があり、自身もその点に自信を持っていたが、NBAデビューシーズンの昨年は、周囲が自分を侮っていると感じたとアブディヤは話している。

「僕はアスレティック能力がそれほど高いわけじゃない。だからか、相手はあえて僕をピック&ロールに吊り出そうとする。僕なら負かせるだろうと思っているからだ。僕が相手ならスコアできると思われていた」

ただそれを彼は「自分へのチャレンジだと思って楽しんでいる」と言う。「相手が、『コイツ、足も遅いし、デカいし、俺のほうが速く動けるぜ』と考えてるのがわかると、こっちも面白くなってくるんだ。だって、ディフェンスはもっと奥が深いものだからね」
11月7日のミルウォーキー・バックス戦では、昨季ファイナルMVPのヤニス・アデトクンボとのマッチアップも任された。ヤニスには29得点を許したが、アブディヤはチームでカイル・クーズマに次ぐ9リバウンドと奮闘。試合はウィザーズが101-94で勝利した。

右足首のケガのあとは、まだ完全にコンディションは戻っておらず、それがオフェンス面に影響しているが、リバウンドやブロックは昨季から数字を伸ばし、ディフェンス面も確実に向上している。

今夏にロサンゼルス・レイカーズから加わったNBA5年目の先輩クーズマもアブディヤについて、「ディフェンス面で素晴らしい仕事をしてくれている。僕が彼について一番魅力に感じているのもそこだ。彼はすべてのことを満遍なくやれるし、しっかり守ってくれる。人の話を良く聞くし、状況を察知する力もある」と評価している。
そんな、自他ともに認める練習熱心な20歳のアブディヤについて、ウィザーズのウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチが懸念しているのは、自分に厳しすぎる点。彼はミスをすると、考えすぎてしまう傾向があるというのだ。

「まだ2年目だし、一気にすべてはできない。だから、『時間がかかるよ』と安心させてあげる必要がある。シュートを外したり、与えられたディフェンスの任務をミスしたりすると、自分に苛立ち、それが蓄積して次のアクションに影響を与えることがある」

本人は「ケガの後、長くプレーできなかったからまだ調子が戻っていない。早くコンディションを上げて、コンタクトの感触も取り戻さなくては」と焦りを伺わせるコメントをしているが、指揮官は「我々はデニを信頼している。だから彼にも、我々が彼に持っているのと同じくらいの自信を持ってもらいたいね」と語る。

昨季は同じ外国人選手として慕う1年先輩の八村塁とも数々のコンビプレーを見せてくれたアブディヤ。同じ9位指名と縁がある2人には、揃って1年の契約延長オプションが行使された。現在イースタン・カンファレンス首位と好調なウィザーズと合わせて、無限の可能性を秘めた2人の成長も見守りたい。

文●小川由紀子

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