
写真:髙田真希(デンソーアイリス)/提供:アフロ
「日本代表なのに3ポイントシュートが届かない...?」
日本女子バスケットボールを十数年にわたって支えてきた髙田真希。
185cmのセンターとしてゴール下で体を張り続けてきた彼女は、キャリアの終盤に差し掛かった27歳で、自らのプレースタイルを大きく変えた。
リオ五輪後に就任したトム・ホーバスHCのもとで取り組んだ“スモール・ボール”戦術で、センターでありながら3ポイントを打つという新たな挑戦だった。
それまで日本代表のセンターだった髙田が、最初に3ポイントラインからシュートを打ち始めたとき、ボールはゴールに届かなかった。
「何歳になってもうまくなりたい」という向上心が支えた試行錯誤、そしてその先に見えたプレーの幅とキャリアの可能性とは。
36歳になった今も代表の舞台に立つ髙田に話を聞いた。(第3回/全5回)
今日は、髙田真希選手のお誕生日🏀
おめでとうございます🥳
3大会連続でオリンピックに出場✨#パリ2024 での活躍を振り返ろう💫#バスケットボール @Takada08 @JAPAN_JBA pic.twitter.com/DZ9F3gjhu4
— オリンピック (@gorin) August 23, 2025
【第2回】「病院行って来い」桜花学園恩師だけが気づいた髙田真希のある異変
キャリアの終盤からプレースタイルの変更に挑戦
── 現在36歳で日本代表。年齢を重ねてプレーに変化を感じますか。
髙田: そうですね。プレースタイルで言うと、自分のポジションはセンターで、いわゆるオフェンスもディフェンスもゴール下付近にいる、大きな選手がやるポジションです。
私の身長は185cmなんですが、世界に出ていくと、同じポジションの選手は190cm後半から2mあります。それでゴール下で戦っても、高さ、フィジカルでどうしても勝てない。
2016年のリオオリンピックが終わり、女子日本代表にトム・ホーバスヘッドコーチが就任してから、2021年の東京オリンピックまでの5年間をかけて、センターも外に出て3ポイントを打つことでアドバンテージを作ろうと、3ポイントシュートを打ち始めたことが、一番大きく変わったところです。
もちろん、今もゴール下で体を張ってプレーもするんですが、あのままセンター1本だけだったらこの年齢までできていないな、と、今は実感しています。
🇯🇵男子日本代表 新ヘッドコーチ🇯🇵
トム・ホーバス氏
(前バスケットボール女子日本代表チームHC)#AkatsukiFive pic.twitter.com/nUWEgOByT0— バスケットボール日本代表 (@JAPAN_JBA) September 21, 2021
── 日本代表のキャプテンで不動のセンターだったのに、そのプレースタイルの変更は大きな挑戦でしたね。
髙田: そうですね。結局いま36歳でもまだ続けられていますが、当時27歳というキャリアの終盤に差し掛かってプレースタイルを変えることは勇気のいることですし、期間も必要です。これまでのスタイルなら、なんとなくできてしまう部分もありますから。
ただ、私の場合は、3ポイントを打ち始めたことによって、プレーの幅が広がって、今までより無理な体の張り方をしなくなって効率的に攻めることができるようになってきた、という変化も感じます。
日本代表として戦ってきたのに3ポイントが届かなかった
── でも、そのプレースタイルの変更を日本のトップレベルで実現するのは並大抵のことじゃないと思うんです。なぜ髙田選手にはできたのでしょうか。
髙田: もちろん新しいチャレンジなので、大変なこともたくさんありました。
27歳まで日本代表として世界とも戦ってきてある程度トレーニングも重ねてきたのに、いざ3ポイントを打ち始めると、届かなかったんですよ。
これで届くようになるのかな、届いたとしても実際の試合で190cmとか2mとかの相手が目の前にいて、果たして入るのかなと不安になりました。
── そこからどうしたんですか。
髙田: 毎日練習しました。うまい人はどうやって打ってるのか研究して、次の日の練習に組み込んでみて、を繰り返して。
そこから徐々に試合で打つようになって、こういう風にしたら入るな、こういう状態のときはなかなか入らないなと理解して、また練習に落とし込んでというプロセスを積み重ねていきました。
── それ以前に、プレースタイルの大きな変化を試みたことはなかったんですか。
髙田: 言い訳になりますが、大きくスタイルを変えるだけの期間が持てなかったというのもあります。日本代表の活動があり、それが終わるとリーグ戦に入り、終わるとまた日本代表の活動があって、それが一年通して毎年続きます。
体作りの面もありますが、自分のスタイルを変えるより、チーム作りにフォーカスしていくことがメインになるので。
── 確かにそうですね。
髙田: それが、リオ五輪後、ホーバスヘッドコーチが就任してから、チームのスタイルそのものが大きく変わりました。“スモール・ボール”と言われる、スピーディーで精度の高い展開と誰でも3ポイントを取れる戦術で世界と戦うという方針です。
自主練の種目も、今まではゴール下のシュートやバリエーション練習が多かったんですけど、その一つに3ポイントっていうのも加えられる。
なおかつチーム全体としてセンターも3ポイントを打つスタイルだからこそ、センターが3ポイントラインに出て打ってもいいし、チームのリズムの中で出てくるので常に打てる環境にあるというのが、自分のプレースタイルを変えるチャンスをくれました。
新しい挑戦なので大変ではありましたけど、振り返るとその時間が大切で楽しかったと思いますし、そのとき頑張ったからこそ、ここまで長くできていると感じています。
「何歳になってもうまくなりたい気持ちを持つことが大事」
── ホーバスヘッドコーチとの出会いは、髙田選手の選手キャリアに大きな影響を与えたんですね。
髙田: とても大きかったですね。最初に3ポイントを打ち始めたとき、ホーバスヘッドコーチに言われたんです。
“何歳になってもうまくなりたい気持ちを持つことがとても大事”と。
それまでは自分自身も、ここまでこのプレースタイルでできてきた部分もあるし、あとはこれを続けていけるように体を保っていこうと漠然と思っていました。
── その時点でも日本代表のセンターですからね。
髙田: でも、もしその感情でいたら、年齢とともにできないことが増えていって、キープではなく衰退していっただろうなと、振り返ると思います。
できるできないというより、自分がどうなりたいかを持って取り組むことが一番大事だなと。実際3ポイントを打つことによって効果的であることは理解できていたので、うまくなりたい気持ちを持って、何歳になっても成長しようと思ってやっています。
── 40代一般男性の私の胸にも沁みる言葉です。
髙田: 何歳になっても挑戦し向上心を持ってやれていることが、キャリアを長くしてくれているなと強く感じますね。
── なぜ、髙田選手はずっと挑戦を続けられる精神を保てるんでしょうか。
髙田: スポーツに限らず、勉強や仕事や何でもそうだと思うんですが、やったらやった分だけしっかり成果に繋がることは実感しています。
なんとなく過ごすより目標に向かって頑張っていくほうが、もちろんうまくいかないことの方が多いんですけど、でも、日々を充実させてくれるものだなと思うんです。
目標に向かって頑張る日々が、割と自分は嫌いじゃないなと思っています。
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取材・文:槌谷昭人
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