なぜ髙田真希は輝き続けられるのか 36歳女子バスケットボール日本代表選手の秘密【第1回】

写真:髙田真希(デンソーアイリス)/提供:ロイター・アフロ

髙田真希(たかだまき)。

今年36歳の、女子バスケットボール日本代表のセンターである。

2009年から日本代表に選出されてから15年以上に渡り日本女子バスケ界を牽引、リオデジャネイロ、東京、パリとオリンピック3大会連続出場。

2021年開催の東京オリンピックでは、全6試合のうち5試合で2桁得点を記録、日本の大黒柱として五輪史上初となる銀メダル獲得の立役者となった。

所属のデンソーアイリスが参戦する女子トップリーグ「Wリーグ」においては、得点、リバウンド、スティール、スタートでの出場数の通算記録で歴代1位。

世代交代の波が訪れる女子バスケットボール界で、なぜ、髙田は輝き続けられるのか。

そこにあるはずの秘密を探った。(第1回/全5回)

写真:東京五輪銀メダル獲得を喜び合う髙田真希(デンソーアイリス)/提供:長田洋平/アフロスポーツ

 

若い頃は「課題をクリアしなければ」という感情

── コンタクトの激しいバスケットボールの世界で、これだけ長く、第一線で高いパフォーマンスを維持し続けられるのはなぜでしょうか。

髙田: 自分としては、気持ちが一番大事だと思っています。常に高い目標を設定しているからかなと。

── それぞれのステージで、どんな目標だったんでしょうか。

髙田: 小さい頃から「オリンピックに出たい」という夢があり、実業団に入ったときに実際に“日本代表に選ばれる”という目標を持ちました。そのためには試合でアピールしなければいけない、試合でアピールするためには練習して自分の課題に向き合わなければいけない。

当時は目の前の課題をクリアすることに必死で、とにかくこの課題をクリアしなければならないという感情でした。

掲げた目標が高ければ高いほど乗り越えるのは本当に苦労するし、辞めたくなったこともありますが、その後いろんな経験もさせてもらい、後になって「ああ、あの高い目標を乗り越えることが自分のモチベーションになっていたんだな」とわかります。

 

痛感した「世界の壁」

── そして、念願の日本代表入りを果たした後の目標は。

髙田: 当時の日本女子バスケは、オリンピックの出場権を獲得するのも難しい時代でした。

実際に世界と戦っていくなかで「ああ、世界っていうのはこういう壁があるんだ」というのを肌で感じました。オリンピックに出られないチームにも負けたりしていたので。

当時オリンピックに出場できる12枠争いは日本にとって常に厳しい戦いで「じゃあそのためには自分が何をしなければいけないか」という意識を持ってやってきました。

私自身は2016年のリオデジャネイロオリンピックに初出場しましたが、東京オリンピックまではずっと「世界の壁を超えるために」がモチベーションでしたね。

 

「女子バスケ」ってすごいと思わせたい

── そして、東京五輪で歴史的な銀メダルを獲った後の目標は。

髙田: 東京オリンピックで一つの大きな目標がクリアできた後“次、自分がどうなりたいか、何がモチベーションなのか”と思ったときに、やっぱりバスケの普及がしたいという感情が自然と生まれました。

── 大きな目標をクリアした後も、選手キャリアは続けようと思ったんですね。

髙田: 難しいと言われていたバスケットボールでメダルを獲ることもできて、正直、選手生活には満足感もありました。

ただ、それをきっかけに女子バスケがたくさんの人に知ってもらい、興味を持ってもらえて、見てもらう機会も増え、さらに応援してもらえるようになったんです。

私はここまでの歴史も知っているので、応援してもらえるのは当たり前じゃないと思います。

会場に来てもらったときに「女子バスケはやっぱりすごいな」「見てて楽しいな」と思ってもらうために、もっと練習を頑張らなきゃいけないというのが、自分自身のモチベーションになりました。

その時々でまた状況は変わると思いますが、今のところ、そのモチベーションでずっとやれてますね。

 

何歳になってもうまくなりたい気持ちを持つこと

── 東京五輪までの明確なゴールのある目標とは違っても、強い動機になるんですね。

髙田: そうですね。なんというか、アスリートとしての正解みたいなものが見つかった気がしていて、それは「何歳になってもうまくなりたい気持ちを持つこと」です。

ある程度のところまでいくと、プレースタイルをわざわざ変えなくてもそれなりにできてしまうことがあるんですよね。

でも、そうすると年齢を重ねたときに身体が動かなくなってきたり、モチベーション、自らを燃やすものがなくなって、それで引退する選手を見てきました。

できることは少なくなってるかもしれないですけど、うまくなりたい気持ちを持つことで、今までできなかったことに挑戦もするし、できないことを補うこともできる。

うまくなりたい気持ちを持ち続けるというのが最大のモチベーションであって、それがなくなったときが引退なのかな感じています。

── ありがとうございます、とても沁みる言葉です。

 


【第2回】「病院行って来い」桜花学園恩師だけが気づいた髙田真希のある異変 に続く