「選手はショーマン」プロバスケ選手兼歌手が見つめるスポーツとエンターテインメントの融合【第3話】

「実力だけあっても契約しない」

── 一方で、選手契約の判断基準としては、勝ち負けもありますよね。

廣島:Bリーグは実力がなければ選手契約しないと思いますが、3人制バスケは、仮にバスケットの実力が足りなくてもチームに還元できることがたくさんあります。基本的に他の仕事をしながらの活動ですし。

逆に言えば、バスケの実力だけあっても契約したくないですね。

僕らはあくまで地域のみなさんの力で成り立っている、ショーマンなので。そこで暮らす人たちに愛される人間性が伴ってないと、プロじゃないと僕は思います。

バスケにはもちろん本気で向き合いますが、本質的にチームの価値はバスケではなく、人だと考えています。

── でも、その言語化しづらい部分は、オーナーの好き嫌いなどの恣意的な判断が入って、選手から不満が出ないですか。

廣島:なので、うちは3人制のチームでは珍しいと思うんですが、ランク制度を今年から導入しています。

実力に応じて報酬は発生するんですが、人間性評価も要素として入っています。

── というと。

廣島:例えば、練習の出席日数何%以上出席がなければランクが降格するとか。

選手も日中は他の仕事をしているので、夜の練習に“行けたら行きます”みたいな感覚になりがちなんですが、それではチームの雰囲気が甘くなるので。

写真:北総ライノス(HOKUSO RHINOS.EXE)/提供:3x3.EXE PREMIER

── 他に独自のルールはありますか。

廣島:S、A、B、Cとランクがあるうちの、SとAの選手はうち単独でないと契約しません。

オフに他チームの練習に行くとかはいいと思いますが、大事な時期に他リーグや、別チームに練習行ってしまったり、大事な試合に選手がほとんど集まらなかったことも過去経験しているので。

──選手とはリーグが契約するんですよね。

廣島:はい、チームはリーグに登録されている選手から契約を取るという形なんです。チームの選手年俸負担が軽くなる反面、チームと選手の契約は、現状では実質ないようなものです。

今後の発展のためには、リーグ、チーム、選手の3者間でしっかり契約を結んで、実際の運用を決めることが大事だと思っています。

── どれくらいの頻度で練習しているんですか。

廣島:週3回、仕事が終わった夜です。練習生も入れて14人で練習してますね。土日は試合です。昨年は、年間の公式戦試合数が30試合くらいでしたが、今年は80試合くらいに増やす予定です。

そうすると、露出と交流の機会はもちろんのこと、練習生の子たちも出場機会も得られるチャンスも増えますし、試合が最も成長を加速させると思うので、今年はさらに活動量を増やしていきますよ。

写真:北総ライノス(HOKUSO RHINOS.EXE)のファンたちと/提供:3x3.EXE PREMIER

写真:廣島祐一朗(北総ライノス(HOKUSO RHINOS.EXE))/提供:3x3.EXE PREMIER

路上の輝き

取材のきっかけは、3人制バスケ選手のデュアルキャリアについて私が興味を持っていたからだ。

歌手で紅白のバックコーラスをしたバスケ選手がいる、と聞き、その経緯を知りたくなったのだ。

話を聞いていくと、怪我で一度は断念したバスケットや、声帯ポリープで諦めた歌手の道、アメリカでストリートパフォーマンスで生活した期間、再びバスケットに出会って選手を目指し始める日々、その瞬間に躊躇なく飛び込み、懸け、挫折し、でも次の挑戦へとまた走り出す男の軌跡だった。

そのショーマンシップが、オーナーとして率いる「北総ライノス」にも溢れている。

廣島祐一朗。
歌もバスケットもストリートで花開いた、路上の輝きである。

写真:廣島祐一朗(北総ライノス(HOKUSO RHINOS.EXE))/提供:3x3.EXE PREMIER


▶︎【第1話】プロバスケット選手と歌手を両立させる男 挫折と挑戦の物語
▶︎【第2話】「お前、バスケやってたのか?」9年ぶりにボールに触れたのはハーレムの路上だった

取材・文:槌谷昭人

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