【第2回】“バスケットボールショップの聖地”GALLERY・2商品部の哲学「広く深く」

“バスケットボールショップの聖地”とも呼ばれる、GALLERY・2渋谷店。

「超専門店」を掲げ、多くのバスケファンを魅了してきたそのお店の品揃えはどんな戦略で行われているのだろう。東京と神奈川2県に展開するGALLERY・2の商品部バイヤーである飯田哲哉さんに話を聞いた。


【第1回】バスケットボール“超専門店”GALLERY・2スタッフに聞いた 愛されるカルチャーを生む接客とは

写真:ロッカールームに似ている渋谷店の店内/提供:GALLERY・2

 

写真:ニヤリファイル/撮影:SSN編集部

 

現場の情報を買い付けにフィードバックする

── 飯田さんはバイヤー歴は長いんでしょうか。

飯田: いや、私もいま勉強中なんです(笑)、この4月からグループ化したタイミングで初めて商品部になったので。

それまでは、95年に新宿店でバスケットボールに携わってから30年、ずっと店舗で働いてきました。

もともと、それぞれの個店で仕入れて個店で売っていたので、買い付けの経験は長いんですが。

写真:渋谷店の店内/撮影:SSN編集部

── なるほど。ファンが欲しいものをラインナップしてるお店という評価がありますが、どうやってラインナップを決めているんでしょうか。

飯田: 店舗に立っていたときは、お客さんと会話もできるし、お客さんの服装も見られます。お客さんからの意見、情報を、商品の買い付けにフィードバックするというのは大事にしています。

商品部になってから、幸い当社にはバスケに詳しく感度の高いスタッフがいっぱいいるので、多く会話するようにしています。

ただ、いまはトレンドの移り変わりが早く、買い付けは基本的に半年先の商品なので、半年後にそのトレンドが生き残っているかどうかの判断は難しいです。

写真:渋谷店で人気のdeuce(デュース)ブランド/撮影:SSN編集部

 

渋谷店で外した商品は他の店舗でも売れない

── ファンが置いて欲しいものは多いと思いますが、飯田さんはどう判断していくんですか。

飯田: 売上予測によるとしか言いようがないんですが、でも、売れるかどうかわからないリスクはあるが周りのお店が扱ってないから、敢えて置くという判断もあります。

── お店のブランド感を作りますよね。最近で、その象徴的な商品はありますか。

飯田: AIR DRIBBLE(エアドリブル)ですかね。室内で静かにドリブル練習できる器具で、値段は2万円ほどするんですが、店舗に置いています。

写真:AIR DRIBBLE(エアドリブル)/提供:GALLERY・2

飯田: あとは新宿店ですが、ブランドで言うとRIGORER(リゴラ) という中国のブランドの扱いを始めています。

写真:RIGORER(リゴラ) のAR2/提供:GALLERY・2

── この渋谷店の他に、6店舗あるんですよね。

飯田: はい。ただ、やっぱりこの渋谷店がGALLERY・2を象徴するお店なので、この店舗の品揃えは“広く深く”を意識していますね。

この渋谷店で外した商品は他のお店でも売れないです。

これが全国展開していたら“このエリアは売れた”ということがあると思いますが、当社は東京と神奈川だけなので、普段は最寄りのお店で買っていただくお客さんが、週末は渋谷店に行こうかと来ていただける距離です。

なので、渋谷店は最終的に売り切る、という役割も担っています。

── これだけの幅広いラインナップで、売り切る役割は大変ですね。

飯田: 渋谷店は鮮度を大事にしたいので、他店舗も含めて全体として、どう見切りをつけていくか、品番数も削らないといけない場面もある、いま商品部として一番考えているところです。

── 他に、商品部の仕事の難しさはありますか。

飯田: 今は現場にいられないので、情報収集、お客さんと会話しながら感じてきた肌感的なもの無いのが難しいですね。

いま売れているものは、数字見ればわかるじゃないですか。ただ、それが上げ調子なのか、もう頂点なのか、そういった感触は店舗の現場が教えてくれるものなので。

 

渋谷店ではNikeが売れている

── では、いま上げ調子で売れている商品は何ですか。

飯田: シューズだったらNIKE JA3(ジャ スリー)ですね。NBAのジャ・モラント選手のシグネチャーモデルで、現時点では圧倒的です。

あとは、同じNIKEのサブリナも安定していて、週間・月間足数だと必ず上位に来ます。WNBA(女性版のNBA)のサブリナ・イオナスクという、スーパースター選手のシグネチャーモデルでレディースのシューズなんですが、履きやすさとスタイリッシュなフォルムで、継続して履く男子選手が多いのが特徴です。

写真:NIKE JA3(ジャ スリー)/提供:GALLERY・2

写真:NIKE SABRINA 3/提供:GALLERY・2

── アパレルではいかがでしょう。

飯田: アパレルでも、メーカーで言えばNikeが売れています、特に渋谷に関しては。

ここ最近ではスエット系の秋冬物も売れているのと、通年ではバスパン(バスケボールパンツ)が安定しているので、トータルの売上も大きくなっています。

写真:NIKEのバスパン(バスケボールパンツ)/提供:/提供:GALLERY・2

飯田: それ以外で言うと、仕入れの数自体は少ないですが、NBAカードは入荷すればすぐ売れますし、フィギュアも人気ですね。

写真:小物類も充実している店内/撮影:SSN編集部

 

日本人選手の活躍と女性層のトレンド

── 日本人選手のNBA挑戦や代表戦は、用具市場にどんな影響を与えていますか。

飯田: 河村勇輝選手の影響は大きいと思います。渡米して以降、お店に来られた海外のお客さんから聞かれることが増えました。シグニチャーモデルを買われる方も多いですね。

── バスケに興味を持つ女性が増えている印象ですが、なにか変化は感じますか。

飯田: はい、数年前から、よりトレンドに敏感な女性のお客さんが増えている実感があります。

かつては、レディースウェアはシンプルなものしかないから、仕方なくメンズを着るという女性の方が多かったんですが、今は、メンズのものを女性が着るのがバスケでは普通だという流れがあります。

さらにそれが顕著になり、いよいよ垣根がなくなった印象です。各メーカーが、SNSで、メンズのものを着た女性モデルを起用していることもあり、SNSの影響を感じます。

 

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Gallery2商品部の挑戦

── 今後、商品部がチャレンジしていきたいことを教えてください。

飯田: いま取り扱ってないブランドの扱いを広げていきたいと常に思っています。コロナ禍以降少し絞ってきた部分もあるので、やはりGALLERY・2の原点に戻り「なんだこれは」と思ってもらえるようものまで扱いたい。

一方で、先ほど申し上げた在庫管理上のジレンマもあり、4月からグループ化したところなので、まさにその両立がこれからの挑戦だと思っています。


【第3回】“ちょっと大きめ”は間違い? バスケットボールシューズ選びの正解をGALLERY・2スタッフに聞いた

取材・文:槌谷昭人