
写真:GALLERY・2渋谷店/撮影:SSN編集部
渋谷のバスケットボールストリートの奥、バスケファンから“ギャラツー”という愛称で愛されてきたお店がある。
GALLERY・2渋谷店。
店舗には、NBA選手のユニフォームやチームグッズが美しく配置され、3歩進めば壁面にズラりと並べられたバッシュが映える。大型ビジョンに映し出されたスタイリッシュなバスケットボールの映像が流れ、お客さんはゆったりとした空間に込められたバスケカルチャーを感じながら買い物を楽しめる"聖地"だ。

写真:渋谷店の店内にはゴールがある/撮影:SSN編集部
このEC全盛の時代に、お客さんがわざわざ店に足を運ぶ秘密はどこにあるのか。現場でお客さんと日々向き合う副店長の鈴木大介さんに話を聞いた。
超専門店の条件は「接客×知識×カルチャー」
── “超専門店”を標榜するのは、どこに自信があるからでしょうか。
鈴木: まずはスタッフの接客と知識、この2つかなと思ってます。お客様の声を聞いてそれに答えられるだけの知識があることは大事ですね。
── それは専門店の理想だと思うんですけど、スタッフの方はどうやって知識を身につけてるんですか。
鈴木: 基本的にはバスケを好きな人が入社し、その後、勉強会などもやっていますが、接客も含めて今まで積み上げてきたお店の文化、カルチャーも大きいと思います。
自分は約10年前に入社して、その後離れてこの3月にまたお店に戻ってきたんですが、スタッフの入れ替えが多少あっても、このお店の接客と知識の水準はなかなか他では難しいなと、改めて感じます。
── このGALLERY・2で働くスタッフは、競技経験者やファンの方がほとんどですか。
鈴木: 特にこの渋谷店はそうですね。アルバイトスタッフも含めて、もともとNBAやシューズが大好な人間が多く、マテリアルに関しては最初から詳しいことは多いですね。

写真:美しく陳列されたバスケットシューズの数々//提供:GALLERY・2
3x3に刺激
── ちなみに鈴木さん自身はどうやって情報収集してるんですか。
鈴木: いまはSNSが多いですね。ただ、SNSは極端な意見も多いので気をつけていて、スタッフ同士で“実際どう?”というコミュニケーションは、意識的に増やしてます。ひとつの情報に踊らされないように。
── 最近のトレンドで面白いものはありますか。
鈴木: そうですね、商品ではないんですが、新宿店で働く方が選手をやっている関係もあって、3人制バスケの3x3(スリーエックススリー)の試合を観に行ったんですよ。
オリンピック競技になりつつも、まだそこまで認知度は高くないという認識だったんですが、会場は年齢層も幅広いファンの方々で熱く盛り上がっていて。新しいバスケの形として刺激を受けました。
一口にバスケと言っても、まだまだ自分の知らない世界があるなと思いました。

写真:3x3.EXE PREMIER 2025 PLAYOFFS/提供:3x3.EXE PREMIER
接客で意識する「知っていることを喋りすぎない」
── このお店は、競技者からライト層までお客さんの層も広いかと思うんですが、相手の知識の幅も多様なときに、どう接客対応を変えていますか。
鈴木: 私が一番意識してるのは「自分が知ってることを喋りすぎない」ということです。
── ほぅ(桜木花道風)。
鈴木: お客様の声を聞くというのがまず仕事だと思っています。別にお客様と知識の見せ合いしても仕方がないので、まずはお客様の意見をお伺いして、必要なら僕らがそこを補ったり汲み取ったりしたながら、お客様が商品を選ぶ助けをする、そんな立ち位置がいいのかなと思います。
お客様と趣味が同じなので、どうしてもスタッフ自身が話しすぎてしまうこともあるんですが(笑)、お客様の声を聞くのが仕事だと伝えています。
敢えて店員が「話しかける」
── 他に「GALLERY・2」ならではの接客って他にありますか。
鈴木: いまの話と矛盾するようですが、うちは店員がまずお客様に話しかけます。時代には逆行しているのかもしれませんが。
── ほぅ(2回目)。
鈴木: お客様の層が広いので、ご自分から“”これが欲しいんだよ”という明確な方もいらっしゃれば、“よくわからないから来てみた”というお客様もとても多いんです。
お客様にも寄り添うために、一度しっかりお声をかけて、“大丈夫です”という方にはきちんと引いて、という姿勢です。困っているお客様に寄り添う接客は心がけていますね。
── 確かに、競技者向けからファン向けまでこれだけ多様な商品群ですからね。

写真:店内には多くのバスケットシューズがある//提供:GALLERY・2
「お客様を見て見ぬふりするな」
鈴木: 困っているお客さんは、辺りを見回してスタッフを探します。そのとき自分が別の作業をしていると、見て見ぬふりをしたくなるときもあるんですけど、それはやめようねという話をアルバイトの方にもしています。
私も事務作業が多くはありますが、“寄り添う接客”を背中で見せるためにも、店舗に立って自分自身が接客することは強く意識しています。

写真:ロッカールームに似ている渋谷店の店内/撮影:SSN編集部
鈴木: スタッフには、もしわからないときはお客さんの前でも正直にわかりませんと言うように伝えています。「わからないので、もっと詳しい人間を連れてきます」と。
ただ、連れてきたスタッフがわからないと信用がなくなるので、“こういうことを聞かれています”と別のスタッフに伝えられるよう、お客様から言われたことを明確に聞き取るように、と指導しています。
そうすればスタッフ同士も知識が増えていきますし、お客様から聞かれることを共有もできますし。
ECにリアル店舗が勝つためには
── 10年前にこのGALLERY・2渋谷店で働いていたとのことですが、今のお客様に変化は感じますか。
鈴木: SNSで購買動機が生まれ、ECで購入される方が増えましたね。
うちでも商品やサイズを確認してネットで商品を買うお客さんが多いのは事実です。試着した後、目の前でスマホで購入されると、さすがに悔しい気持ちになります。
── 多くの小売店が直面している問題ですよね。
鈴木: はい、価格ではネットに敵わない場面もあるからこそ、専門店は接客が大事なんだと思います。
うちのお店は、スタッフに会いに来てくれるお客様もいらっしゃいます。
スタッフの名前を覚えてくれるお客様も多く、「誰々さんに勧めてもらったシューズがすごく良かった」と伝えるためにもう1回お店に足を運んでいただけたりするのは、スタッフ自身のやりがいにもなっています。
── 確かに。多少の価格の違いよりも、信頼する人の意見を聞きながら選べるのは大事な価値ですよね。
店舗として目指す姿
── バスケファンに愛される“超専門店”として、今後目指す姿を教えてください。
鈴木: 個人的には、トレンドを作っていくお店でありたいなと思います。渋谷のバスケットボールストリートの、一番奥に構えるお店なので。
僕自身、自分がお客さんの頃から“ギャラ2”はバスケショップの聖地だと思ってきました。これからも、修学旅行生がわざわざ来てくれるような、バスケ好きが楽しめるお店を改めて作っていきたいなと思っています。
【第2回】“バスケットボールショップの聖地”GALLERY・2商品部の哲学「広く深く」(仮)
取材・文:槌谷昭人
Follow @ssn_supersports




