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「怠け者だった」——“鉄人”鳥谷敬が明かしたプロ人生18年の秘訣。何よりも重要だった「自分自身を理解する力」とは
「基本、自分は怠け者なんで」
元阪神タイガースの鳥谷敬氏は、3月16日に都内の中学校で開いた講演で、ふた回りも歳の差がある生徒たちに向け、そう語りだした。
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意外な言葉だった。それは彼がアスリートとして、エリート街道を歩んできたからだ。埼玉県の強豪校・聖望学園から早稲田大学に進学。2003年にはドラフト1位で阪神タイガースに入団し、21年に千葉ロッテで現役を引退するまでプロ生活は18年も続いた。そのなかで、2243試合に出場し、通算安打数は2099本を数えた。
“鉄人”というイメージの強い鳥谷氏だけに、幼少期から練習の虫だったのかと勝手に描いていた。それだけに「たぶん、本格的に(大学で)プロを目指すまでは家で一回も練習をしたことはなかった」というのは、いささか驚きだった。
それでもプロになった。40歳のレジェンドは、球界最高峰を目指していくうえでの、“怠け者”だという自分との向き合い方を、中学生にこう話した。
「毎朝11時には練習に必ず行くようにしていました。その時間に『鳥谷は来るんだ』とみんなに植え付けるという感じですね。人の目を使って、自分がそこに行くしかないという状況を作る。それで練習に行って、ぼーっとしているのも勿体ないから、練習するという流れを意識してました。そうすれば、必然的に動けるので」
自らの性格と向き合い、それを受け止めたうえで、最適の努力を続けた。そんな鳥谷氏は、「自分を理解することが大事になる」とも説いた。
「自分は小さいころからスポーツはある程度できた。でも、常に打つことや、走ることで、誰かしらに負けてきた。一番になったことはほぼない。それが小さい頃はコンプレックスだった。でも、プロに入ったら、全部をある程度できることが最高の武器に変わった。
どれも平均よりも少しだけでもできることで、代走や代打、守備固めを出されることもないっていうのは、本当に武器になった。だから、自分自身を自分で理解するっていう作業をしておくと、何か将来的に夢を達成していくうえでの鍵になると思う」
中学生への講演会という経験は「ほとんど初めて」だという鳥谷氏。それでも多感なティーンエージャーたちに「選択した後に、その選択を成功に導くために努力を毎日するというのが大切。その自分で決めるということをやってほしい」とメッセージを送る姿は、まさに“先生”のようであった。
取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)
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