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“金足旋風”を巻き起こした吉田輝星の現在地。プロ3年でわずか1勝の剛腕が秘めたる可能性とビッグボスの期待は?

新庄新監督のもとで捲土重来を期する吉田。プロの舞台では伸び悩んでいる感が否めないが、持てるポテンシャルは特大だ。写真:産経新聞社
「投手3人、野手4人のタレントをつくりたい」

北海道日本ハムファイターズの「ビッグボス」こと新庄剛志新監督は、昨年11月の就任会見でスター養成を“公約”に掲げた。人気選手が増えれば、必然的にチームは強くなるという考えだ。
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うってつけの存在がいる。今年に高卒4年目を迎える吉田輝星だ。

プロ入りまでの過程、端正な顔立ち、大舞台でも物おじしない性格と、スター要素たっぷりの逸材である。ここに実績が加われば、ビッグボスパワーとの相乗効果で一気に全国区のタレントへと駆け上がる可能性を秘めている。

2018年夏。野球ファンの垣根を越え、老若男女が秋田県の金足農業の快進撃に夢中になった。地区予選から全11試合を地元出身の9人で戦い抜き、甲子園準優勝を果たした“雑草軍団”は、日本人の心をくすぐった。まさに漫画のようなストーリーのマウンドにいた吉田は、誰が見ても主人公だった。
分かっていても打てない——。ベース上で浮かび上がると評された直球を武器に、横浜、近江、日大三ら強豪校を次々と斬った。決勝こそ藤原恭大(現ロッテ)、根尾昂(現中日)ら逸材を擁した大阪桐蔭に敗れたが、聖地で投げた881球は見た者の胸を熱くした。

当然、スカウトからの評価も急上昇。大学進学が既定路線だったが、ドラフト1位で日本ハムから指名を受け、自らの意志でプロ入りを決断した。

だが、プロの舞台はそうは甘くない。1年目の19年6月に広島との交流戦でデビューし、5回1失点で初勝利を挙げた吉田だったが、その後は鳴かず飛ばず。昨季までの3年間で1軍戦10試合の登板にとどまり、1勝6敗、防御率9.72と苦しんだ。

ここまで通用しなかった理由は、大きく2つ考えられる。ひとつは変化球の質。直球だけで抑えられるほど、プロの打者はたやすくない。もちろん、吉田自身もキレや精度向上の必要性は早くから認識し、課題克服に取り組んできた。しかしながら、田中将大(楽天)のスプリットや、チームメイトの伊藤大海が投げるスライダーのような、困ったときに頼りになる、いわゆる伝家の宝刀が現状では見当たらない。

もうひとつは、直球のクオリティーがプロで圧倒的とまでは言えない点だ。分かっていても空振りが取れる真っすぐがあれば、今と同じ変化球でも打者への効果は格段に上がる。これまでの3年間は2軍戦では押し込めても、1軍の好打者たちには捉えられる場面が多く見受けられた。 変化球の得意不得意は生まれ持った指先の器用さなど、先天的な要素も大きく影響する。目標に掲げる「日本一の投手」になるため、吉田の場合は打者の手元で伸びる、質の高い直球をさらに向上させる方がより現実的だろう。

実際、昨季の2軍戦では、試合序盤を直球のみに制限して臨み、意図的に強化を図っていた。まだ21歳と伸びしろは十分に秘めている。昨年8月にはイースタン・リーグ月間MVPを獲得するなど、飛躍に向けた足場も整いつつある。

新指揮官へのアピール度も上々だ。マスコミにもNGなしでリップサービスするビッグボスだが、監督就任後の選手に対するコメントは清宮、杉谷ら一部をのぞいて控えめ。そのなかで吉田は、秋季キャンプのブルペン投球で直球を絶賛され、オフには襟足の伸びた髪形も「切った方がいい」と勧められた。期待の大きさは、ひしひしと伝わってくる。
春季キャンプでは新庄監督が指導を依頼した元阪神の守護神、藤川球児氏から直接手ほどきを受け、火の玉ストレートの極意を授かった。1月下旬の新型コロナ感染による出遅れはあったが、今後行なわれる実戦での結果次第では、開幕1軍入りも十分狙える位置につけている。

ビッグボス新体制になり、開幕ローテーションは依然として予測不可能だ。それでも背番号18が、新たに幕を開ける新庄劇場の主役候補であるのは間違いない。

構成●THE DIGEST編集部

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