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名捕手・谷繁が語る「ナンバー1投手論」。現役最強は納得の一方、“コントロール史上最高の男”は意外な人選?

今や押しも押されぬ日本のエースとなった山本。もし谷繁とバッテリーを組んでいたら、いったいどれだけの成績を残していたのだろうか。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)
イバン・ロドリゲスが持つメジャー歴代最多の2427試合どころか、野村克也の2921試合を上回り、2963試合の捕手出場の“世界記録”を持つのが元中日の谷繁元信だ。

豊富な経験に裏打ちされた慧眼で、昨年の日本シリーズを前に多くの評論家が絶対エース山本由伸を擁するオリックスの日本一を予想する中、「捕手の中村悠平がリードするヤクルト投手陣がオリックス打線を抑える」と、ヤクルトの日本一を的中させたのはさすがだった。

そんなレジェンドの谷繁が「今一番受けてみたい投手」は、やはり山本だという。その理由は「2年連続で最下位だったチームが一躍優勝争いに加わったのは、バッテリーの力によるところが大きい。その軸となったのが山本だから」だ。

プロ2年目の2018年、中継ぎで32ホールドをマークし球界の耳目を集めて以来、山本は毎年進化し続けている。

19年は最優秀防御率のタイトルを獲得し、翌20年は奪三振王に輝いた。150キロ台中盤のストレートに加えて、150キロに迫るフォークやカットボールを武器に、昨年の東京五輪では日本代表悲願の金メダル獲得の原動力に。史上8人目の投手五冠を達成し、沢村賞にも輝いた。まさに「10年に一人」の大投手と言っても過言ではない。
日本シリーズでは第1戦と第6戦に登板し、計15イニングで20奪三振3失点。「全球種を勝負球にできる点は、ダルビッシュ有に似ている」「あれだけの球を投げてくれると、捕手をやっていて楽だろう」と谷繁は語る。

その語り口からも分かるように、谷繁は総合力よりも球種の観点から“No.1投手”を選ぶ。「フォークは佐々木主浩さん」「カットボールは川上憲伸」「ストレートの投手は特にいない」。

興味深いのは、コントロールNo.1に吉見一起ではなく、斉藤明夫を挙げたことだ。1977年に大洋ホエールズ(現DeNA)にドラフト1位で入団したこの右腕は、史上6人しかいない100勝&100セーブ達成者の一人で、現在はプロ野球ニュースの解説でもおなじみ。口ヒゲをたくわえた強面のあのお方である。

現役時代の斎藤の顔には今以上に威圧感があり、マウンドで仁王立ちする姿が印象的だった。その一方で通算与四球率2.56は歴代トップ30にも入っておらず、特別コントロールに秀でたイメージはない。だが、谷繁いわく、「打者の弱点のゾーンの打率をさらに低くするため、ボールゾーンも使うのが配球だ」。その証拠に現役時代の斎藤は「ミットを構えたところに寸分たがわずボールが来た」という。

特別速い球も持たず、ストレートとカーブのみで並みいる強打者を抑えた秘訣はそこにあった。引退当時、まだプロ5年目だった若き日の谷繁には、その抜群のコントロールが印象に残ったのだろう。

文●小村正英

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