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ここがヘンだよプロ野球アウォード投票!「最多失策のサンズに1票」「“一塁手・村上宗隆”に二桁も」<SLUGGER>

サンズは19年にKBOでゴールデン・グラブ賞を受賞しているが、これは守備の名手を表彰するものではない。写真:山手琢也
 12月15日にMVPと新人王が発表され、2021年の連盟表彰者がすべて出揃った。だが、中には思わず首をかしげてしまうような投票内容も……。今回の各アウォード投票にまつわる疑問点をまとめてみた。

▼山本由伸に3位票すら投じなかった記者が1人
 パ・リーグMVPは史上8人目の投手五冠を達成し、オリックスのリーグ優勝に貢献した山本由伸が受賞。MVP投票は1位から3位までそれぞれ1人ずつ名前を書いて投票し、順位をもとにポイントを集計する(1位5ポイント、2位3ポイント、1位1ポイント)のだが、山本は1位283票、2位と3位を1票ずつで、2位に959ポイント差の1419ポイントと圧倒的な支持を集めた。

 もちろん、これは順当だな結果だが、問題は全部足しても285票にしかならないこと。有効投票総数は286票なので、山本に対して3位票すら投じなかった記者が1人だけいたのである。

 1位票の内訳を見ると、山本以外に同じオリックスの杉本裕太郎と宮城大弥にそれぞれ2票、1票入っていて、ちょうど有効投票数と同じ286となる。だが、2位は「該当者なし」が16票、3位では25票もあった。想像をたくましくすれば、「MVPは一人しか選ばない」と決めている記者が杉本か宮城に1位票を投じ、2位・3位を「該当者なし」とした結果、山本に入らなかったのではないか。

 実際のところは分からないが、そうとでも考えない限り理解できない投票結果だった。
 ▼外野手最多7失策のサンズをゴールデン・グラブに
 鈴木誠也(広島)、近本光司(阪神)、大島洋平(中日)の3人が受賞したセ・リーグ外野手部門では、サンズ(阪神)に1票が投じられた。

 だが、サンズは今季、比較的守備負担の少ないレフトを守りながら、両リーグ最多タイの7失策を喫している。エラーが手痛い失点につながるケースも多かった。もともと足が遅く守備範囲が狭い上、肩も強いわけではない。懸命にプレーする姿勢はあっても、お世辞にも名手とは言えないのは衆目の一致するところだろう。

 ちなみに、投票4位以降では丸佳浩(巨人)、塩見泰隆(ヤクルト)、松原聖弥(巨人)、桑原将志(DeNA)と続く。仮に投票者がレフト、センター、ライトから一人ずつ選ぶと決めていたとしても、レフトには青木宣親(ヤクルト)や西川龍馬(広島)がいる。ここでも、サンズより賞にふさわしい選択肢があったはずだ。投票者は、一体どのような根拠でサンズに票を投じたのだろうか。
 ▼外野出場わずか10試合の選手がベストナイン!?
 ゴールデン・グラブ賞とは異なり、ベストナインの選考に明確な定義はない。とはいえ、「ベスト」と名がつくからには、外野出場10試合、打率.174の陽川尚将(阪神)にセ・リーグ外野手部門で1票が入っているのはいくら何でも疑問だ。

 陽川だけではない。外野での先発出場がわずか11試合にとどまり、打撃でも不振だった松山竜平(広島)や、主な役割は守備固めで100打席にも立っていない荒木貴裕(ヤクルト)にも票が投じられている。

 セ・リーグの外野手部門は、受賞した鈴木誠也(広島)、近本光司(阪神)、塩見泰隆(ヤクルト)以外にも、DeNAの3人(2年連続打率3割をクリアした佐野恵太、打率3割&28本塁打を記録したオースティン、リーグ5位の打率.310を残した桑原将志)などが好成績を残していた。

 単純に考えて、陽川に投票した記者はこの6人のうち最低でも4人を除外していたことになる。たとえば鈴木、近本と来て、3人目に塩見でも佐野でもオースティンでも桑原でもなく陽川を選んだ、ということだ。そう考えれば、いかにいびつな選択だったかがよく分かるだろう。
 ▼「ポジション間違い」で村上が受賞を逃した可能性も……?

 パ・リーグ一塁手部門では杉本裕太郎(オリックス)に3票、セ・リーグ一塁手部門では村上宗隆(ヤクルト)に12票が入った。だが今季、杉本の一塁での先発出場は4試合、村上は8試合でしかない。前者はライト(126試合)、後者は三塁(136試合)での出場が圧倒的に多く、実際にベストナインを受賞している。他に入れたい選手がいたからあえて一塁で入れたのか、それとも単に間違えたのかは分からないが、いずれにしても不思議な話だ。

 ましてやベストナイン投票では、基本的に複数のポジションに同じ選手の名前を書くことは許されていない。特にセ・リーグの三塁手は岡本和真(巨人)が本塁打と打点の二冠を獲得しており、もし村上と票数が拮抗していた場合はこの12票が賞の行方を左右した可能性もあった。「大事故」につながらなかったから良かったが、選手がその年守ったポジションはしっかり把握しておきたいところだ。

構成●SLUGGER編集部
 

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