
写真:少年野球チームからお礼のメッセージ/提供:SSK
急激に進む少子化、子どもたちの運動部離れ、さらに中学部活動の地域移行。
いま、日本でスポーツに関わる企業や人は、“スポーツがなぜ必要で、社会にどんな貢献ができるか”を掲げ、中長期的視野で活動を続ける必要に迫られている。
しかし、ベンチャー企業や個人事業主も多い日本のスポーツ業界で、現実に明日の売上に直結しない事業に取り組める企業がどれほどあるだろうか。
創業79年。メーカー、小売、卸、人材紹介まで6つの事業を手がける“スポーツ総合商社”のSSKは、“100年企業”を見据え、意外な事業や社員への少し変わった福利厚生に投資を続けている。
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“スポーツ・コ・クリエーション”とは?
── 公式サイトなどでも打ち出している“スポーツ・コ・クリエーション”とは、何のことでしょうか。
高橋: はい。販売や売上に直結する事業ではなく、スポーツを通じて豊かな生活をサポートするというミッションのもと、イベントや事業を通じてより多くの人がスポーツに触れる機会を作っていこうという、全社的な活動です。
── 具体的にはどんな活動ですか。
高橋: 例えば、2015年からプロ野球選手会と共に、キャッチボールクラシックという、相手を思いやって投げるキャッチボールイベントを行っています。
9人1組のチームが2分間で何回キャッチボールができたかというイベントなんですが、野球の基本であるキャッチボールの正確さやスピードを学べると共に、仲間を思いやり、チームワークを高めることができると好評で、コロナ禍で始まったリモート開催をきっかけに、海外からの参加も増えています。
── 野球人口の底上げにも貢献しますね。
高橋: そうですね。
キャッチボールを通じたつながりという意味では、今年4月に、大阪・関西万博の会場内、大屋根リングの上で「世界キャッチボールプロジェクト」というイベントも行われました。
当社協賛で、世界70の国と地域から集まった人たちが約2kmの輪になってキャッチボールをつなぎ、国境を越えて人と人がつながる場になりました。ちなみに、フィナーレのボールを受けたのは、元ヤクルトスワローズの古田敦也さんでした。
私たちが大切にする“スポーツを通じて社会とつながる”姿勢を体現する施策になったかなと思います。

写真:世界キャッチボールプロジェクトの様子/提供:SSK
“自慢の親になれる”社員サポート?
高橋:あと、社員向けにも少し変わったプロジェクトもあって。
── というと。
高橋: 2015年から始まった社員サポート制度なんですが、当社社員の平均年齢は42.7歳で、お子さんが少年野球などのチームに入り、そのコーチやお手伝いをしているパターンが結構多いんです。
── 想像つきます(笑)。どの競技も、ジュニアチームは保護者のボランティアとしての貢献が支えてますからね。
高橋: スポーツ会社の社員として、まずは自身が健康でスポーツを楽しむこと、そしてそれを次の世代に繋げていくことはとても大切だという思いから、年間3万5000円の自社商品提供枠を設け、チームで使う商品購入を目的に、年に1回補助を行っています。
野球、ソフトボール、サッカー(フットサル)、ハンドボール、バスケットボール、バレーボールの6つの主力カテゴリーの、中学生年代までのチームに関係している社員が対象です。

写真:チームからお礼のメッセージ/提供:SSK
── それは面白いですね。チームの保護者の方にも喜ばれそう。
高橋: はい。野球で言えばヘルメットやバットケース、それ以外の競技でも、ビブスやマーカーコーンなど買い替えづらいものを購入しているケースが多いですね。
── いやー、わかります。どうしても持ち出しが多くなる保護者の方々に、追加の費用は求めづらいですからね。

写真:サッカーでも活用/提供:SSK
SSKは「100年企業」を目指す
高橋: この制度ができるまでは、SSKで働いていることを隠して参加していた社員が、このサポート制度を活用することで、チームのみなさんからとても感謝され、子どもにとって“自慢の親”になれたという嬉しい声も届いています。
── それは親にとって一番嬉しい(笑)。これまで何人くらいその制度を活用しているんですか。
高橋: 2015年の制度開始以来、累計で300件を超えます。
── グラスルーツのスポーツ現場へのサポートを制度化して実施しているのは、老舗のスポーツ企業の力だなあと思いますね。
高橋: 当社は今年創業79年になるんですが、会社の中での共通認識が“100年企業を目指す”ということです。自分たちが率先して健康で、スポーツを楽しんで、それを次の世代に繋げていく必要があります。
目の前の売上ももちろん大切ですが、中長期的な施策は分けて、どちらにも投資していこうという考えですね。
── 歴史があるからこそ、スポーツと社会を繋ぐ、息の長い事業にも積極投資できるんだなと感じました。今後も期待しています。
高橋: ありがとうございました。
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