
写真:メジャー挑戦前にSSKを訪問した秋山翔吾選手と社員/提供:SSK
SSKと聞いて“手に馴染むグラブ”が浮かぶ人は、かなりの野球通だ。
今年創業79年目のSSKは野球メーカーの印象が強いが、実は国内450社もあるスポーツメーカーの卸事業や、小売、さらに人材事業まで手掛ける“スポーツを軸とした総合商社”でもある。
今回、SSKで新卒・中途採用を担当するとともに、アスリートのセカンドキャリア支援やスポーツ業界で働きたい方の転職支援など、SSKの新規事業の立ち上げにも関わりながら人材に関する多岐にわたる取り組みを推進する、リレーションズ事業室の高橋直人さんに話を聞いた。
幅広い6事業を展開するSSK
── SSKは野球専門メーカー、というイメージでした。
高橋:もちろん野球のSSKでもあるんですが、当社はメーカー事業を含めて合計6つの事業を行っています。メーカー、卸、小売、指定管理事業、有料職業紹介、そしてグループ会社でスポーツイベント事業も行っています。

写真:SSKが手掛ける6事業/提供:SSK
実は、卸事業で会社全体の売上の約8割を占めています。
また、デンマークのスポーツブランドで、SSKが日本展開する自社ブランド・ヒュンメル(hummel)では、サッカー、バスケットボール、ハンドボール、バレーボールなどにも競技展開しているので、メーカー機能としては野球だけではないんですね。

写真:SSKが展開する北欧スポーツブランド/提供:SSK
── メーカー、卸、小売とスポーツ用品の商流全ての事業を持っているんですね。社員は何人くらいいますか。
高橋:現在は500人くらいですね。
── SSKを目指す学生にとって、人気の事業は何ですか。
高橋:新卒採用の場合はメーカー事業、特にプロ野球選手の担当などが人気です。やはり、野球選手のサポートが一番目につく仕事ではあるので。

写真:会社を代表する野球ブランドSSK/提供:SSK
── 会社としてもメーカー事業は重点領域ですよね。
高橋:もちろんです。SSKもhummel(ヒュンメル)も自社ブランドなので、自分たちで作って自分たちで売らないと売上が伸びていきません。
最近では特にヒュンメルが120%の成長を続けるなど好調です。
100年を越えるブランドの歴史に、ハンドボール日本代表やガンバ大阪、ジェフユナイテッド千葉などのサポートを始め、競技者層やサポーターへの認知が高まっていることが要因にあります。
さらに今年はファッションライン「ヒュンメルオー(HUMMEL 00)」を立ち上げたこともあり、ライフスタイルカテゴリーが成長していますね。
また、障がい者スポーツの支援や東京プライドへの参加、ピースマッチなどのソーシャルグッドな活動が少しずつ知られるようになってきました。
こうした取り組みが増えるにつれて、組織も拡大し、人材の投資も行っていますね。
SSKが人材ビジネスを始めた理由
── 有料職業紹介つまり人材事業もしているのは意外でした。
高橋: 確かに、他社でも“メーカーも卸も”という例はありますが、人材事業までやってる会社っていうのはめずらしいかもしれません。
── なぜ、始めたのですか。
高橋:SSKはこれまで、スポーツ用品の提供を通じて、アスリートやスポーツを楽しむ人々を支えてきました。しかし、スポーツ用品による支援はどうしても「現役の期間」に限られてしまいます。
そこで私たちは、現役中はスポーツ用品で、引退後はキャリアのサポートをすることで、スポーツにかかわる人々を、現役を終えた後も含めて“生涯”支えていくことを目指し、人材ビジネス(新規事業)を始めました。
── 確かに。“引退後の人生のほうが長いのだから”とよく言われますよね。
高橋:はい。その第一歩として、私たちはプロアスリートのセカンドキャリア支援から取り組みをスタートし、実際に元プロ野球選手の就職支援などを行ってきました。
取り組みを進める中で、SSKがこれまで築いてきた「卸事業のネットワークと信頼関係」が、次なるステージで大きな強みになると気づきました。
── どういうことでしょうか。
高橋:スポーツメーカーや小売店など、SSKと長年お付き合いのある取引先企業様を中心に、きめ細かく人材のご紹介ができると感じています。
特に、卸の仕事では、メーカーや小売店をはじめ多くの取引先と繋がりを持って、その課題も共有します。
私たちが小売店さんに日々営業していくなかで、商品の問い合わせもいただくんですが、“そもそも売る人がいないんだよね”という声がとても多いんです。メーカーも含めて、どこも人材不足なので。
SSKは商品だけではなくて、その課題も解決したい。2019年から始めた新規事業ですが、現在も多くの求人をいただいて人材を紹介しています。
── 中小企業の多いスポーツ業界では特に、採用は大きな課題ですよね。他に、SSKならではの部分ってあるんですか。
高橋:スポーツで関わる分野が広いので、求職者と企業のマッチングのバリエーションがあります。
例えば、サッカーの商品開発担当者を異なる競技の専門メーカーに紹介しました。その業界になかったものづくりの発想や方法で活躍しています。
スポーツと仕事に共通すること
── ジャンルが変わっても生き生きと働けるのは、スポーツの仕事に従事する人に何か共通点があるのでしょうか。
高橋:個人的に、仕事とスポーツは近いところがあると思っています。個人競技でもチームスポーツでも、何か目標があって、そこに向かって進んでいきますよね。
課題が出ると修正を加え、実行して、検証して、また目標に向かう。どんなスポーツにもいわゆるPDCA思考という共通項があって、それが身に付いている人材を、企業側も求めているんだと思います。
スポーツに打ち込んできた人や、スポーツの仕事に取り組んできた人には、その強みがあると思いますね。
── 確かに。採用ニーズも多いんですか。
高橋:そうですね、おかげさまで売上は昨年比プラスが続いています。
今後も、「人」と「企業」とのつながりをつくることで、スポーツ業界全体の発展にも貢献していきたいと考えています。
野球経験者は約3人に1人
── ところで、SSKの社員も、スポーツ経験者が多いんですか。
高橋:2024年に社員に「どんなスポーツをやってきたか」を聞いたアンケートの結果があります。
競技別に見るとやっぱり野球がもっとも多く、高校時代だけで約180人いるので、社員を500人と考えると、単純計算で約3人に1人が野球経験者ですね。

写真:SSK社員のスポーツ歴/提供:SSK
── 面白い数字ですね。でも「スポーツ経験無し」がその次に多いのがとても意外です。
高橋:はい。会社説明会でもこの数字を見せながら「競技経験は全く関係ありません」と伝えています(笑)。
もちろん、競技実績が活きる場面もありますが、それよりも、観ることも含めて“スポーツが好き”なことが大切だと思います。
── それはわかる気がしますね。
高橋:平日夕方5時30分に退社して、ダッシュで野球観戦に行く社員もいますし、甲子園決勝の日は机の上にスマホを置いて配信を見ながら仕事する社員が多いですね(笑)。
会社で、野球の他にもサッカーやバレーなどいろんな競技の観戦に行くイベントもやっていて、わりとたくさん社員が集まるんですよ。
みんな、スポーツ好きだなと改めて思います。
── それは、スポーツ好きな学生からすると、理想的な職場ですね(笑)。
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