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山下美夢有のクラブセッティングに一般アマが学ぶべきことは?【プロフィッターに聞く】

山下美夢有のセッティングから学ぶべきポイントは、アイアンのシャフトにある(撮影:ALBA)

プロのクラブセッティングが、個々に最適にチューニングされているのは当然だが、技量が圧倒的に足りない我々アマチュアが学べる部分はあるのだろうか。何百もの試打シャフトや剛性分布データを駆使して、正解に導くプロフィッター澤田嘉之氏に、女子プロのセッティングから学ぶべき点を聞いた。

昨年の年間女王・山下美夢有は今年も4勝と絶好調。ショットスタッツは軒並み上位で、平均飛距離51位以外は、パーオン率2位、FWキープ率2位、トータルドライビング3位、ボールストライキング1位に加え、平均パットも2位とツアーを席捲(いずれも7月3日現在)。そんな山下のクラブから「我々アマが学ぶべきはアイアンシャフトじゃないでしょうか」と、澤田。
 
【山下美夢有のクラブセッティング】
1W:スリクソンZX5 Mk II(8.5°スピーダーNXグリーン50SR 45インチ)
3,5W:スリクソンZX Mk II(15,18°スピーダーNXグリーン50SR)
4,5U:スリクソンZX Mk II(22,25°ベンタスHB70S)
6I~PW:スリクソンZX5 Mk II(DG85 R300)
48,52,58°:クリーブランドRTX6(DG85 R300)
PT:オデッセイ ホワイト・ホットOG 2-BALLブレード
BALL:スリクソンZ-STAR XV
 
「プロ入り時のヘッドスピード38m/sから、現在は41m/s弱まで上がったそうですが、一般男性アマと同じようなスピード帯です。ただ、同じヘッドスピードでも山下プロが使う『Dynamic Gold 85』(以下、DG85)のR300を入れている人は少ないと思います。昔から【振り切れる範囲で一番重いシャフトがいい】との格言がありますが、同じスピードでもクラブに無頓着な人は、軽い50グラム台の純正カーボンでラクに打つ人も多い。また『N.S.PRO950GH』や『同ネオ』、『モーダス105』など、内心は使うのがしんどくても、スチールを使い続ける人もいます。山下プロのように、ベストなシャフトを見つけると、もっと安定して快適に打てるはずです」
 
そうは言っても、山下のように柔軟な体を効率よく使う超再現性の高いスイングと、手打ちになりがちで不安定な我々のそれでは、同じヘッドスピードでも「中身」が全く違うはず。それでも学ぶことがあるのか? 80グラム台前後のシャフトに替えるべきなのか?
 
「大事なのは振りやすさで、それは人それぞれです。ただ、お値段はしますが、最近『DG』育ちの方が移行しやすい粘り系のアイアン用カーボンが増えているのは歓迎すべきことでしょう。長らく人気の三菱ケミカル『OTi』やUSTマミヤ『ATTAS IRON』に加え、去年出たグラファイトデザイン『ラウネ』もずっと欠品していたほど人気ですし、フジクラがツアー供給中の『トラヴィル』が今月末発売です。昔のアイアン用カーボンは、ピンピンした張り感のあるものが多かったところ、今は重量帯も、しなるフィーリングも細かく選べます。加えて、軽量スチールも粘り系の『DG』とは逆に、先が走って上げやすい日本シャフト『ゼロス』も60グラム台から選べます。50グラム台の純正カーボンより、安定感を増すシャフトが素材を問わず追求できるため、すごく恵まれた時代だと感じますね」
 
粘り系の『DG』の場合、山下が使う『DG85』のR300が最も軽くてソフトな選択肢だが、より軽めの60~80グラム台で、カーボンでもスチールでもちょうどいい所がかつてないほど選べるとか。では、『DG85』を試す際に、同時に打つべきシャフトや似たフィーリングのモノはあるだろうか。
 
「今お使いのモノと症状にもよりますが、手元が緩い粘り系の『DG85』はやはり『DG』育ちの人と相性がよく、しなりが多くて復元もゆっくりで、打ち急がずショットの安定感が増しますね。同じ復元感ではないですが、一緒に試して欲しいカーボンは、滑らかなしなりの『OTi 85』『ATTAS IRON 80』。中調子の『ラウネ』は75グラムか90グラムですが、番手別設計で7番アイアン以下は復元がゆったりです。
 
今月末に発売されるフジクラ『トラヴィル85』は、過去に『モーダス』シリーズや『DG』など重いスチールを使っていた人にオススメしたい振り感で、軽量でもスチールに近いしっかり感のある手元しなりです。いずれにしても、50グラム台の純正カーボンより体を使ったスイングで安定感が増し、ラフで打ち負けることが減ったり、よりターフが取れるようになる可能性は高いです」
 
夏本番でラフがぐんぐん勢いを増してきたが、「シャフト次第でけっこう分厚い入れ方に変わる人も多いですよ」とのこと。
 
■解説/澤田嘉之
プロフィッター。4Plus Fitting Labo東宝調布スポーツパーク店で動作解析GEARSやTRACKMAN 4を駆使し、数百本のシャフトから個々人に最適な組み合わせを導き出す。静的なクラブデータと動的データを読み込むことからついたアダ名は“博士”

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