「やっぱり寂しいですよね」 有村智恵が地元で戦い抜いた1週間

地元・熊本のギャラリーを沸かせた有村智恵(撮影:米山聡明)

<KKT杯バンテリンレディス 最終日◇16日◇熊本空港カントリークラブ(熊本県)◇6523ヤード・パー72>

昨年11月にツアーからの休養を宣言し、それ以来となるスポット参戦を地元・熊本で迎えた有村智恵。練習不足を口にしていたなかで予選通過を果たしただけでなく、トップ10フィニッシュという好成績で3日間を戦い抜いた。

最終日は14番からの3連続バーディを奪うなどのプレーで7バーディ・2ボギー・1ダブルボギーの「69」をマーク。初日「72」、2日目「71」と徐々にスコアを伸ばし、それに合わせて順位も右肩上がりに浮上した。最終18番パー5では1.5メートルのバーディパットを決めきる勝負強さも発揮。「リーダーボードを見たうえでパット決めて終えられたのが気持ちよかった」と笑顔を見せ、これでトータル4アンダー・10位タイに乗せた。

選手としての有村をひと目みようと、多くのギャラリーが駆け付けた地元戦。そんななか、2日目にはツアー最多記録に並ぶ自身6度目のエースも達成した。「光るプレーをみせられたのは、役目を果たせたというか。帰ってきた意味があった」とも話していたが、この1週間を終えたらまたツアーから離れる生活となる。「やっぱり寂しいですよね」。その気持ちは素直だ。

予選通過を決めた土曜日には、「すごい楽しいし、モヤモヤしますよね。試合出たいなという気持ちになっちゃう部分もある(笑)」と休養中のスポット参戦で抱く胸中を吐露。それでも「自分自身が決めた選択だから、割り切って楽しめたらいいかなと思う」。そして最後まで戦い抜き、ギャラリーを沸かせ続けた。

2戦目については未定だが、この一戦は有村にとっても大きな意味を持つ経験となった。「いま外からゴルフをみていてすごく勉強になっています。確実にいい時間として今後の糧になっていくと思っているし、試合に出られて間近でいろんないい選手のプレーを見られた。今週吸収したものを今後の人生に役立てていきたいし、最終的にゴルフ界が良くなることが一番やりたいこと。みんなが頑張ってくれて、自分が盛り上げられたらいいなと思います」。

ツアー12勝を飾る実力者としても、いまの女子ゴルフ界には期待もある。「今年は若い勢いよりもベテランやシンデレラガールが現れたり、今までの流れとちょっと違うツアーになっているなと。完全にファン目線で見ているのですが(笑)。いい選手もたくさん出ている印象もある。純粋に楽しみだなと思っています」。最終日には熊本から生まれたルーキー奥山純菜と同組でラウンドし、そのポテンシャルも絶賛した。

今大会で獲得できたメルセデス・ポイントで「あわよくばリランキングどうにかならないかとちょっとだけ思った(笑)」と冗談を織り交ぜながら、満足そうな笑顔とともに幕を閉じた1週間。「自分自身もいろんな理由があって(ツアーから)離れているので、人生経験はみんなに見せていきたいなとは思う」とも話したツアー最前線を走ってきた“先輩”。有村自身が望む形でツアー復帰をするその時を気長に待ちながら、ひとりのアスリートとしてゴルフ界を盛り上げていく姿を応援していきたい。(文・笠井あかり)

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