練習と本番の差を埋めるのがプロ それを支えるものは!?【原田香里のゴルフ未来会議】
ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。今日は開幕まであと1カ月を切った今の時期のプロたちについて、広い視野から見ていきたいと思います。
山口県の実家がやっている練習場でのジュニアレッスンについて、先週お話ししたことを覚えていてくださる方も多いかと思います。地元のジュニアのレッスン会で、不定期ですが帰省したときに私が指導することがある、という内容でした。そこでの一幕をご紹介することで、みなさんに伝わることがあるかもしれないと思ったのでお話しします。
ある保護者の方から、こんな質問を受けました。「この子はドロー一辺倒なのですが、フェードも打てたほうがいいですか」と。私はこう答えました。「そりゃあ、打てたほうがいいです。ドロー一辺倒が悪いということでは決してありません。ただコースや天気、そのときの調子などで、ドロー一辺倒ではうまくコースマネジメントできないことも起きてきます。そんなときに、フェードの打ち方を知識として知り、そして打てるようになれば、武器になります」。
レベルは違っても、プロにも同じことが言えます。ドローもフェードも、それぞれ高い球も低い球も同じように打てる、というのはすごい人です。それでも“持ち球”というのは必ずあって、それがベースになってそこからさまざまな応用ができるようになります。こうしてゴルフの広がりが生まれ、さまざまなコース、状況に対応できるようになっていくのです。この厚みは大きな武器になります。
アマチュアでもプロでも、ゴルファーとして成長していく過程で、その必要性を感じながら技を広げていきます。試合はその実践の場。開幕まで1カ月を切った今の時期のプロたちも、それが実戦でできるように繰り返し練習をしている状態だと思います。
今年は、久しぶりにコロナ前のように海外で合宿をする選手も増えたようで、さまざまな方法でプロたちは調整を続けています。一番大切なのはケガをしないようにすること。そしてケガをしない体でシーズンを迎えることです。その上で、試合で思うようなプレーができるように準備をしています。
JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)が出しているツアーの詳しいスタッツで一目瞭然の自分の強みと弱点を見ながら、どこを磨けばいいかを考えながらやっているはずです。現役時代の私は、黙々と一人でトレーニングをして、練習をしていました。最近は、トレーナーやコーチが同じ選手同士や、他種目のアスリートとともにオフの合宿をする人が増えているようです。
一人でやっていると、自分のペースではできるのですが、心が折れそうになる場合もあるようです。幸い、私は大丈夫でしたが、やはり練習だけというのはつまらないと感じることがあるからです。それに一人でやっていると、周囲の仕上がり具合が気になってしまう、ということもありますね。
逆に仲間と一緒に練習していると、周囲がどんな状況かがよくわかります。それに刺激を受けるのはいいことですが、気にしすぎてしまうと、うまくいかなくなります。
練習と試合のときの動きの差をできるだけ少なくする、というのがプロのしていることです。でも、だからといって絶好調ならいいということでもありません。絶好調でも不調であっても、とにかくしっかりとスコアを作ること。プロとはそういうものです。そのためにも、前述のジュニアの保護者の方に聞かれたようなことを、そのレベルに応じてやっていくことになります。
リランキング制度によって、シードを持たない選手はスタートダッシュをしなくては、という気持ちになっていると思います。オフの調整は本当に大変です。けれども、どんなときもスコアを作る、というプロのあり方そのものは、今も昔も変わりません。それを支えるのが、地味なことを延々と続けていく、日々の練習の積み重ねです。開幕戦までもうひと踏ん張りです。
■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。
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