【試合後コメント/立川 vs 長野】アスレはなぜ同点でパワープレーを仕掛けたのか。上村充哉「指示が出た時点で、メンバー全員が腹を括った」
1月27日(金)、Fリーグ2022-2023 ディビジョン1第21節、立川アスレティックFC vs ボアルース長野の試合が行われた。
第1ピリオド中盤、立川がお手本のような「L(エル)」の形から、右サイドに流れた酒井遼太郎がゴール前へラストパス。ファーで皆本晃が詰めて先制に成功した。逆転残留に向け勝点が欲しい長野は、第1ピリオド残り8分以上を残してパワープレーを開始する。ボール支配率を高めつつシュートを増やし、立川が押し気味だった流れは一旦沈静化。1-0のままハーフタイムを迎えた。
迎えた第2ピリオド、長野は残り16分となったところでパワープレーを再開。徐々に攻勢を強めると残り2分16秒、米村尚也のミドルシュートの跳ね返りを田口友也が左足ボレーで沈め、1対1の同点に追い付く。しかし終了間際の残り5秒、立川がパワープレーで長野ディフェンスを押し込み、マークのズレが生まれた一瞬の隙を突いて新井裕生が左足一閃。劇的な勝ち越し弾を決め勝負あり。勝点3を獲得し、プレーオフ出場に向け大きく前進した。一方の長野は勝点9で12位のまま。11位・バサジィ大分の結果を待ちつつ、最終節の対ペスカドーラ町田戦にすべてを懸けることとなった。
試合後、立川の比嘉リカルド監督と上村充哉が記者会見に出席した。
■この試合のハイライトはこちら(ABEMAビデオ)
同点でもいい状況でパワープレーを選択した理由は?
比嘉リカルド監督(立川アスレティックFC)
──試合を振り返って。
プレーオフ出場がかかったゲームで、しかもホーム最終節ということでプレッシャーがかかる試合でした。早く決めたいという気持ちがあったものの、ディフェンスが全然ハマらなくて、なかなかリズムを掴めませんでした。先制した後も思うようにいかず、パスが繋がらないことが多かったです。
長野がパワープレーをしてきてからは、それに対するディフェンスはそれほどズレていなかったと思います。ズレていないから、相手としては(守備ブロックの)外からシュートを打つしかなかった。でも、41番(米村尚也)のミドルシュートから失点に繋がってしまいました。僕たちにとって良い勉強になったシーンだと思います。
最後はこちらもパワープレーにかけて、やり切って、気持ちで勝った。すごく良い終わり方ができました。まだ明日(4位の)町田の試合もあるし(プレーオフ出場が)決定したわけではないですけど、自分たちは最終節の北海道戦に向けて良い準備をしていきたいと思います。
──今日の試合に向けてどんなプランで臨みましたか。
僕たちは常にディフェンスから試合に入りたいと思っています。ディフェンスが安定すれば、自ずとカウンターで良い攻撃もできます。だからまずはいつも通り、ハードなディフェンスから入っていこうとしたのですが、うまくいかない部分もありましたね。そんなに崩されてはいないけど、一方で良い形で奪ってのカウンターも少なかったなと。
ディフェンスで狙い所としている場所があるのですが、それは相手によって少し変えないといけない。今日はそこで上手く連係できない場面もありました。あるいは(ピヴォと両アラの)3枚が平行に並んでしまったり、守るスペースが一瞬被ってしまったりということもあったので、その部分は次の試合までに再度修正していきたいと思います。
──長野は8回に渡りパワープレーを仕掛けてきました。比嘉監督としてはしっかり対応すれば守り切れるというイメージでしたか。
僕たちは毎週、その週末に対戦する相手のパワープレーのオフェンスとディフェンス両方を分析して、それぞれに対応できるように準備しています。このキャラクターの選手にはこの選手を当てる、この選手には必ずこいつを付ける、とかですね。逆に相手の(パワープレーの)5人のなかで、「この選手には(ある程度自由に)やらせる」っていう設定もあるんです。
今日も残り2分ちょっとまでは良いディフェンスをしていたんですよ。1回外から打たれてバーを叩いた場面がありましたけど、それ以外は危ないシーンはそんなに多くなかったです。でもやっぱり、打たれて危ない選手に対してはもっと寄せないといけない。そういうところは試合のなかで修正できないといけないですね。
──前半残り30秒ほどのところで、比嘉監督がすごく怒った場面があったように見えました。あれはやはりディフェンスで上手くいっていない場面があって激怒されていたのでしょうか。
まあ、いつも怒ってるんです(笑)。恥ずかしいですけど、僕はパーソナリティとして熱くなりやすい人です。今日も1回ではなくて、自分でも気付いていないだけで何度も熱くなっていたと思います。でしょ?
(上村充哉選手「はい(笑)」)
だよね(笑)。今日は多分怒ることも多かったと思います。ただそれでも、選手たちが深い所で信用してくれているのがありがたいですね。僕の熱くなる性格をよく分かった上で接してくれているので、そこはいつも選手たちに感謝しています。
──試合展開を抜きにして、今日は終盤に同点だった場合はパワープレーに行こうと戦前から考えていましたか。
はい、そうです。勝ちたい、勝ちたい。とにかく勝ちたい。(4位の)町田がチャンスを見い出せないようにしたかったんです。ましてやせっかくの最後のホームゲームでしたし。パワープレーの攻撃でも良い形を作れたので、今後に向けて自信になったと思います。選手がよくやってくれました。
──第2ピリオド残り28秒でタイムアウトを取りました。そのすぐ後に勝ち越しゴールが生まれましたが、ベンチではどのような指示を与えたのですか。
パワープレーで左サイドから繋いで最後(中村)充に打たせるパターンを伝えました。充が縦パスを受けた時点でシュートだけでなくセグンドと間(あいだ)の選択肢もありました。シュートを狙ってキーパーに止められてしまいましたけど、惜しかったですね。
──勝ち越しゴールが決まった瞬間はどんな心境でしたか。
僕は嬉しい気持ちよりも、決まった瞬間に「早く(皆本)晃戻れ!喜んでないでディフェンスしろ!相手はまたパワープレー来るから!打ってくるから!」って言っていました(笑)。時間もなかったですから、「キックオフになった瞬間にボールにアタックしろ!」と。
引き分けでも悪くないなかで勝ちにいって、点を取って勝ち切った選手たちは随分大人になってきているなと思います。残り時間も少なくてあれだけプレッシャーのあるなかで点を取れたのは自信になりますし、メンタル的にもかなり成長していますね。
もがき、苦しみ、眠れない日々──大事な試合で手にした勝利に安堵
上村充哉(立川アスレティックFC)
──試合を振り返って。
難しい試合でしたし、相手が特殊な戦い方をしてきたなかで、とにかく勝ち切れたことがすべてかなと思います。プレーオフもまだ決まっていないですし、次の北海道戦に勝ってその先に進みたいと思います。
──なかなか追加点を奪えなかったなか、残り2分少々で1-1の同点に追い付かれて、精神的にもかなり厳しい状況だったと思います。そこから残り5秒で勝ち越すまでの選手たちの心理はどのような状態だったでしょうか。
僕個人的には、諸々の状況を考えると正直引き分けでも悪くはないかなとは思っていました。勝点1を取るだけでも(4位の)町田とは4差になるところだったので。町田が残り2試合のうちどちらか1つでも落とせば僕らがプレーオフに行けますから。
ただ、先ほど監督が言ったように「勝ちに行くぞ」と指示が出て、それを聞いた時点でピッチ内にいた5人もベンチにいたメンバーも腹を括ったので。その時点で整理されていたというか、中途半端な攻撃をするのではなくて仕留めにいくぞと思っていたので、しっかり目の前のプレーに集中できていました。
──勝ち越しゴールの瞬間はどんな心境でしたか。
あの瞬間は結構相手のディフェンスがズレて(新井)裕生に誰も強く寄せて来なかったので、「打て打て!」と思って。決めてくれて良かったです。
──SNSでも少し話題になりましたが、今日は小学生のサポーターの方が太鼓を叩いていたようですね。それに関して感想を聞かせていただいてもよろしいでしょうか。
SNS上でも太鼓を使った応援に関して色んな意見があったなかで、(皆本)晃くんも社長としては新人だし、難しいところもあるなかで頑張ってやってくれています。色んな意見があると思うので何が正解かは難しいなとは思っていましたけど、小学生のサポーターさんも今日頑張ってくれていましたし、何とか頑張って勝利をプレゼントしたかったので、勝てて良かったです。試合中もよく聞こえていましたし、とても心強かったです。
──1点を先制した第1ピリオド途中からパワープレーを受けるかたちとなりました。長時間辛抱強く戦わなければならない展開となったなかで、上村選手自身、ピッチ内でかなり多くのことに気を配ってプレーされたのではないかと思います。試合を通して一番気を付けていたポイントはどこでしたか。
まず、全部が全部守り切るのは難しいかなと思っていて、危ないシーンを作られることも十分に想定していました。決められてしまったときのメンタルコントロールだけはしっかりしようと考えていて、それが時間的に結構ギリギリのタイミングだったので少し難しくはなりましたけど。何とか最後まで集中を切らさずに戦えたのは良かったかなと思います。
あとはやっぱりカウンターで追加点を取ろうと狙っていて、そのなかで自分が2回くらい相手のパスを引っ掛けて前に行けるチャンスがあったんですけど、2回ともあまり良い判断ができずにチャンスをフイにしてしまったので。そこはまた次節に向けて修正していきたいと思います。
──今日はかなりプレッシャーの掛かる試合だったと思いますが、いかがでしたか。
プレッシャーは正直毎試合ありますね。今季は特に、内田隼太がいなくなって、ジョーがいなくなって、本当の意味で「自分が引っ張っていかないと」と決意を持って臨んだシーズンで、でも開幕戦から思うようにいかなくて。正直苦しみましたし、眠れないときもあったし。
それでも今、何とかチームはこの位置にいるんですけど。今日負けたら厳しい状況になっていた可能性もあったので、今日は特にプレッシャーはありました。無事に勝つことができてホッとしています。
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