ラグビーと和菓子の異質なタッグ。未来を『共創』する秘策とは(シャイニングアークス×船橋屋)
2022年に開幕した新リーグ・NTTジャパンラグビーリーグワンに所属していたNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安は、老舗和菓子屋の船橋屋と『スポーツ共創パートナーシップ』を締結しています。
(※2022年6月30日いっぱいで体制変更のためNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス東京ベイ浦安は活動を終了し、7月より新チームを立ち上げ予定です。本原稿では『シャイニングアークス』の名で展開いたします)
シャイニングアークスはNTTジャパンラグビーリーグワン2022開幕に合わせ、ホストスタジアムを東京都江東区の夢の島競技場に設定。浦安だけではなく、江東区エリアの地域活性化の起爆剤として同区発祥の船橋屋との取り組みを始めました。
そんな両社は22年2月から4月にかけて、知見や課題を共有し、パートナーシップの方向性を確認する計4回のワークショップを実施しました。注目すべきは参加者の多様性です。パートナーシップ担当者だけでなく、シャイニングアークスの選手やスタッフ、船橋屋からは製造、販売担当者などが参加しました。ラグビーと和菓子という、まったく異なる商材を扱う両社。幅広い部署からアイデアを持ち寄り、新たな共創の可能性を探ることが狙いです。
スポンサーシップからパートナーシップへ。新たな『共創』の形を示すシャイニングアークスの取り組みについて、かつては選手として活躍し、現在は「ビジネスデザインリーダー」職に従事する石神勝(いしがみ・まさる)氏に伺いました。
働きながらプレーすることで得られた幸せ
—まず、石神さんの職種について伺います。ビジネスデザインリーダーという職種は、新鮮な響きがあります。就任したのは、いつ頃なのでしょうか?
2020年です。選手を引退したのは2018年で、しばらくは学生や外国人のリクルーターをしていました。
実は、このビジネスデザインリーダーは、僕が就任するにあたって新たに設立された役職なんです。新リーグ開幕にあたって、地域との繋がりを強化する必要がありました。当初は、外部の経験者を呼ぶ選択肢もあったようです。
ただ、それでは予期せぬハレーションが起きてしまうかもしれない。母体企業とチームの繋がりが強いこともあり、会社やラグビーのことを知っている自分に声がかかりました。すべてが初めてのことだったので、最初は戸惑いもあり、今でも手探りでやっている状態ですね。
—ラグビーは長らく企業スポーツとして発展してきましたが、現役時代から仕事と競技の両立に負担はありませんでしたか?
個人的には、働きながら競技ができたことはよかったと思います。僕はチームがトップリーグに昇格した年に移籍加入しました。周囲からは「どうして昇格したばかりのチームに移籍するのか」と疑問の声があったのも事実です。
僕自身もIT企業に対して、真面目な人が多く、少し冷たいのではないかという印象がありました。ただ、秩父宮で試合があったときに、選手が会社の人に囲まれて話をしていたんです。その様子を見て「すごくいいな」と。一緒に働く人に応援してもらえるのは幸せですし、僕が引退するときも多くの人に見届けてもらうことができました。「社員でよかったな」と実感しました。
ディズニーの街・浦安に、スポーツでさらなる価値を
—新リーグ開幕にあたり、スポンサー獲得の動きにも変化はありましたか?
社内でも新たにスポンサーを獲得しようという動きがありました。ただ、NTTという会社の特性として、お客さんが幅広いという特徴があります。どこの業界、地域をターゲットにするのか、社内で議論を重ねました。ラグビー部再編の話もあったので、むやみやたらにお声かけすることはせず、最終的には検討を重ねて絞った形で提案させていただきました。
—ラグビーは単一企業の色が強く、スポンサー獲得においては他スポーツとは違った難しさがあると思います。
金額にこだわるのか、広告効果にこだわるのか、判断基準はさまざまなので難しいです。それに加えて、コロナ禍では協賛という形だけでは厳しいと感じます。コロナ禍で浦安市は税収が大幅に減少したとの報道もありますし、スポーツチームが金銭の話だけをしても受け入れてもらえません。お互いにメリットのある取り組みである必要があります。
—地域活性化には行政との関係性も重要です。
行政とのやりとりは、僕ではなくGMが担当しています。話を聞く限り、かなり綿密なコミュニケーションは取れているようですね。浦安といえばディズニーというイメージが強いですが、スポーツでさらなる価値を提供して、地域を共に盛り上げていきたいです。
—スポーツ界全体として、広告を売る時代ではなくなってきていますよね。
ラグビーの注目度を考えると、広告掲載にどれだけの価値を感じてもらえるかといえば……広告費を捻出してもらうのは難しいと思います。それ以外の部分で何ができるのか、どんなメリットがあるのかを考えることで、長いお付き合いに繋がると考えています。船橋屋さんは和菓子を取り扱う企業です。もちろんラグビーとは接点がないことを考慮したうえで取り組みをはじめました。
ーコロナ禍において、地域との繋がりをどのように構築するかは悩みどころではないですか?
チームだけでなく、企業としての制限があるなかでファンとの交流の機会をどう作るかはすごく考えています。もちろん難しい部分もありますが、その一方で新しい発見もありました。会社が早い段階でリモート化を進めていたので、その経験からオンラインで交流する環境はすぐに作ることができました。こういうやり方もあるのか、と。
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