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docomoがスポーツビジネス?敏腕マーケッターが語る業界で求められるもの

「スポーツの仕事に就くことにおいて、スポーツが好きということは二の次、三の次。やりたいことも二の次で、その職種について正しいキャリアを積んできているのかというのがポイントだと思うんですよね。」

(柏崎健太)

前編では、陸上一筋だった生活を一変し新卒で入社した企業でプロ野球日本シリーズやロンドン五輪のスポンサーシップ経験、オリンピックに大会連続ゴールドメダリストとの出会いなどファーストキャリアで培ったスポーツビジネスの基礎力について語っていただきました。

後編となる今回は、数社を経てdocomoというスポーツビジネスから少し離れたように見える場所を選ぶまで、そしてスポーツ界で求められる力について伺います。柏崎さん曰く、外資系スポーツメーカーでの仕事は「1つの目標」でありました。ではなぜ、柏崎さんは夢見た憧れの職を辞め、新天地としてdocomoを選んだのでしょうか?

自身のゴールを明確に定め、ゴールに着くにはどうしたら良いか。基本に忠実ながら確実性の高い柏崎さんのキャリアビルドの描き方は非常に参考になります。さらに、スポーツビジネスに携わるに当たって必要なことはなんなのか、語っていただきました。

外資系スポーツメーカーが採用で求めること

僕の目標として“スポーツ業界でかっこいい仕事をしながら豊かな生活を送る”こと、というのがあったのですが、これを満たせる場所は3つしかないと思いました。

1つは大手広告代理店のスポーツ局で権利を武器に仕事をする。2つ目はメディアのスポーツ局。3つ目は外資系スポーツメーカー。その中で自分のキャリアやバックグラウンドや適性、思いも含めて考えた結果、3つ目かなと。
スポーツ業界を志す人でも、大手広告代理店に憧れる人は多いです。ただし、10,000人程いる社員の中でもその職に就けるのは5%に満たない。そもそも入社するのには新卒が全てということでした。メディアも同じです。※2012年当時。

外資系スポーツメーカーというとadidasやNIKEですね。ですが、キャリアパス的にそこへ向かうのは難しいんです。外資系のスポーツメーカーなどは完全なる中途採用で即戦力が求められるので、消費商材やコンシューマグッズでスポーツマーケティングしているような、同じような業界や職種でのキャリアがないと無理なんです。加えて、人気ブランドへの入社は競争率が高い。

その部分のキャリアを構築したいと思い、日本発のベンチャー企業「airweave」に向かいました。もともと雑誌で為末大さんやトップアスリートが使い始めたものがあるという情報を得てこの会社の存在を知ったんです。結果的にここに勤めることが出来たのですが、当時の同社のフェーズはまさにスポーツマーケティングを活用しながら急成長で拡大する時期。1年間で一般企業の3倍働くとか言われた時代ですが、様々な経験をさせてもらいました。

もちろん最初から華々しいマーケティング業務に就けた分けではなく、最初は全国の百貨店を周って売り場を立ち上げていました。1か月に10店舗。閉店後のエアコンの消えた寝具売り場で汗だくでベットを組み立てた時期もありました。

“スポーツ好き”である以前に…当時、この会社には本当に優秀なマーケッターが多く、P&G、SONY、NISSAN、LOUIS VUITTON、Baccaratをはじめ国内外の有名ブランドでならしてきた人間が多く、会議の時などは全く歯が立たなかった。各々が知識や経験に加え自信を持っていましたから。そんな人たちは別にスポーツが好きでなくても、何でも高次元で実現できてしまうんですね。スポーツの仕事好きの前にマーケッターとして論破できないといけない。スポーツが好きというのは2の次、3の次だと実感した瞬間でした。

そこから念願叶って外資系スポーツメーカーであるOAKLEYへ転職することができました。
ここでは各々が気軽に話し合えるフラットな雰囲気から、あるコンサルティング会社が持つ“3000以上あるデータからその人のスキルに合わせて年俸を作る。” というような人事制度をはじめこれまでの社会人生活を覆すカルチャーが多数存在しました。

トップアスリートの眼をサポートする世界初の視機能測定車両「Rolling O Lab」のプレスカンファレンスを担当したのですが、自分の未熟さゆえに煮詰まってしまい、「困っていること>」という題名のメールを全員に送ったら、「これはどうだ?あれはどうだ?」と周りのメンバーが一気にサポートしてくれたんです。このスポーツマインド溢れるカルチャーに触れて、これまで経験した様々な無駄なビジネス文化が吹っ飛んだ気がします。

そしてスポーツマーケティングの神髄に、ここで触れることができました。OAKLEYには「Authenticity」と「On the Pitch」というポリシーがあります。言葉の通り競技の時に使う、自分が勝負をかける時の桧舞台にOAKLEYのアイウェアを持っていくということですね。

“OAKLEYのアイウェアをかけてないと勝てない。自分のパフォーマンスにはOAKLEYのアイウェアが必要だ、だから勝てるんだ”というストーリーを作るんです。そしてただ強いだけでなく、譲れない自分を持っている、芯の強い選手をサポートしに行く。この姿勢はまさに“ブランド”を象徴することで、スポーツマーケティングチームで何度も聞いたワードです。

OAKLEYは自分の選手時代のバックグラウンド、人脈、仕事での経験全てを投資できる環境がありました。仕事をしているのか趣味をしているのか分らないくらい、この職場は自分に合っていました。ただ、10年ちょっとPRやマーケティングをスポーツ周りでやってきて、何となく肝心なものが抜けている気がしてきたんです。

大企業がスポーツビジネスで何を残せるか?

そんなタイミングでエージェントが、「docomoがスポーツビジネスに参入する」という話を持ってきました。

言うまでもなくdocomoは日本を代表する企業ですし、この集団がスポーツビジネスに参入したらどうなるのだろうか?というワクワク感があったんです。「キャリアは掛け算」という言葉がありますが、経験してきたK社のような大きな会社のダイナミズム、airweaveのように新規ビジネスが伸び行く快感のどちらも味わえるのでは?と考えました。そして、docomoへ転職をしました。この会社のアセットや力を使ってスポーツビジネスにどこまでインパクトを残せるのかという課題に対して、今、自分が最も注力しています。

また、前職までの経験で僕自身が抜けていると感じた肝心なものは「マネタイズ」です。
結局色々汎用性があって活躍できる人と言うのはマネタイズのことを知っているわけです。事業のことをわかっていて、マーケティングやプロモーションという部分が全部わかる。

そして、そういう人が企業のトップにいます。そして、自分がそのポジションを狙って行くには今のままだと難しいと感じましたし、30代前半から中盤という年齢のときに新規開発のところからマネタイズの形作りを経験することによって、スポーツビジネス全般に対するキャリアに厚みを持てるだろうと思ったんです。だから、docomoに来ました。

ここでは経営層の仕事、「docomo Sports」のような会社を作って、それに参画できるようにしたいというのがまず1つの目標ですね。あとはどこかの通過点としてマーケティング関連のダイレクターを経験したいと思っています。

柏崎健太氏

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