ヘッドウエア『ブラッククローバー』
今回、取り上げるのはキャップで知られる「ブラッククローバー」。これまでは、“アスリートが培ってきた優れたスキルは、最高のギアを手にすることで最大限に発揮される”という前提で、スポーツギアを紹介してきたが、キャップの場合は少し毛色が違うかもしれない。
今日、キャップが存在感を見せるのはスポーツシーンだけではない。ファッション性の高いヘッドウエアであり、普段着のように日常と密接に関わるアイテムでもあるからだ。確かにキャップをかぶるときに、これがスポーツウエアだという意識をもってかぶる人はあまりいないだろう。
とはいえ、キャップはスポーツの隆盛とともに普及してきた側面もある。野球、ゴルフ、テニスなどでは、トップアスリートたちがキャップをかぶってプレーしているのはあたり前な光景だ。そして草野球選手も、月1ゴルファーも同じようにキャップをかぶってプレーしている。実はこの「ブラッククローバー」も、当初はゴルフキャップを手がけて、ブランドバリューを高めていったという経緯がある。
だがプロのゲームを司るオフィシャルのルールでは、野球はチームで同一のユニフォームが義務づけられているものの、帽子(キャップ)をかぶらなくてはならないという文言はないらしい。またゴルフもルールとしてキャップの着用は明記されてはいない(ゴルフコースによってはドレスコードとして帽子の着用を求めているところはあるが…)。ひと昔前は、プロゴルファーでもキャップをかぶらない選手も多かった。
キャップはプロユースのアイテムでもありながら、一方でプレーのスキル、それどころかプレー経験の有無に関わらず、気軽にかぶることができる。あえてキャップをスポーツウエアとするのであれば、誰もが気軽にかぶれる、ハードルが高くないスポーツウエアとなるだろう。スポーツという視点から見たとき、ここにキャップが愛されてきた理由があるといえるだろう。
当初、ゴルフキャップとして私たちの前に現れた「ブラッククローバー」は、シンプルなデザインの中に配された、シンボルマークであるよつ葉のクローバーが新鮮な印象を与えた。そしてゴルフコースでは、ゴルフクラブのブランドネームが幅をきかせたキャップばかりが目立つ中で、ゴルファーが選ぶキャップの選択肢を広げてくれた。
「ブラッククローバー」は2008年、アメリカのソルトレイクシティで誕生した。当時のスタッフたちが抱いていたのは、より質の高い帽子を作りたいという思いだった。その当時、店頭に並んでいた帽子は、どれもオリジナリティに欠けた面白みのないものばかりで、さらにその品質も満足できないものばかりだったからだと言う。
最初の試作品が誕生したとき、その帽子はシンプルでありながらシャープなカラー、繊細で丹念なステッチワーク、高性能なヘッドバンドなど、当時の帽子の水準を超えるクオリティを備えていた。ここがスタートとなり、「ブラッククローバー」は素材、デザイン性、フィット感、着け心地、そのすべてにおいて高品質な帽子を作るための模索を絶えず続けてきた。そしてその過程で、新たな技術も導入された。
そんな技術のひとつが“メモリーフィット”だ。ヘッドバンドの部分に高品質な形状記憶ウレタンを注入することで、かぶったときのフィット感は著しく向上した。それによって長い時間かぶっているときの不快感も軽減することができた。これは「ブラッククローバー」を代表する機能として知られている。
「ブラッククローバー」は現在3つの方向で商品を展開している。オーセンティックなデザインに、ブランドの象徴であるよつ葉のクローバーをフィーチャーし、最高水準の職人ワザを取り入れ、またドライで涼しいパフォーマンスウィックなどの機能的な素材をつぎ込んだPCオリジナルシリーズ。そして上記のメモリーフィットを搭載したシリーズ。さらにタウンウエアを想定したライフスタイルシリーズだ。とはいえ、それぞれのシリーズによって、かぶる用途が限定されているものではなく、いかなるシーンにもマッチし、快適なかぶり心地を約束する。
そして忘れてはならないのが、「ブラッククローバー」の魅力がスポーツ、それに基づく機能性からだけでは語りきれないということだ。ファッション目線から見ても、とりわけライフスタイルシリーズの充実ぶりには目を見張る。ゴルフを例にとれば、シリアスなゴルファーにも、ゴルフとは無縁な若い世代にも、ともに受け入れられるようなキャップを作れるブランドはわずかではないだろうか。それを実現しているこのブランドのラインナップは実に奥深い。
ファッションコンシャスな若い世代が、デニムと無地のTシャツを組み合わせても、レトロサーフなスタイルを目指しても、キャップが欠かせないストリート風の着こなしをしても、満足できるキャップが「ブラッククローバー」には揃っている。これはアパレルブランドがウエアの片手間にキャップを作っているのではなく、帽子からスタートしたブランドだからこその実力と言えるだろう。
デザイン、カラーと多彩なラインナップを誇る「ブラッククローバー」。そこに共通するのは、“Live Lucky”というブランドからのメッセージが込められた文字だ。この文字が帽子のどこにあしらわれているかはさまざまだが、ほとんどのモデルで目にすることができる。
この文字に込められたメッセージの意味は、老若男女を問わず人生を最大限に楽しみ、悔いのない自分らしい人生を過ごしてほしいというもの。モノづくりのこだわりはここから起因しているものであり、帽子をかぶることで“Live Lucky”につながるインスピレーションが生まれるようにという願いが込められている。
ただ帽子をかぶるだけで、そこまで大げさなことではない…、とも思える。ただ希望、平和、そして幸運をもたらすといわれる、よつ葉のクローバーをいただくキャップをかぶるとき、そんな気持ちがどこかに宿るかのようにも思えてくる。
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