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マエケンやパ最優秀中継ぎを抑えて1位になったのは、ロッテの右腕!【西尾典文が選ぶ『最もコントロールが良かった高校生5人』】<SLUGGER>

高校時代から出色の制球力を見せていた二木。プロでも通算与四球率は2.25と強みを生かしている。写真:THE DIGEST
長年アマチュア野球を見ていると、「これまで見た選手のなかで誰が一番凄かったですか?」という質問をよく聞かれる。投手や野手、カテゴリーによっても異なるため絞るのはなかなか困難だ。

しかし、ここではテーマとカテゴリーに分けてランキング形式で5人ずつ紹介していきたいと思う。対象は現在の記録をとるスタイルでアマチュア野球を見始めた2001年秋以降の選手とした。今回は「本当にコントロールが良かった投手」の高校生編だ。

5位:堀瑞輝(広島新庄→16年ドラフト1位日本ハム) 

1年秋からエースとなり、早くから活躍を見せていた堀。下級生の頃は、大きな印象はなかったが、やはり3年夏に出場した甲子園でのピッチングは素晴らしかった。初戦の関東一戦こそ立ち上がりに苦しんだものの、尻上がりに調子を上げて12回を完投。続く富山第一戦、木更津総合戦も9回を一人で投げ抜き、いずれも四死球を与えなかった。

ストレートはもちろんだが、右打者のヒザ元へのスライダーのコントロールが抜群で、その完成度は高校生離れしたものがあった。プロではより厳しいコースを狙って与四球は多い傾向にあるが、ピンチの場面では高校時代に見せた制球力の良さを発揮。昨年は最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得するなど、チームに欠かせない存在となった。
4位:葛西侑也(大垣日大) 

当時の大垣日大は1学年上の阿知羅拓馬(元中日)が評判を集めていたが、その阿知羅を差し置いてエースとして活躍したのが葛西。とりわけ1年秋のピッチングは強烈だった。東海大会初戦の常葉橘戦では9回2死までパーフェクトピッチング。27人目の打者に内野安打を許して大記録達成を逃したものの、緩急自在にストライクゾーンを広く使う投球は見事だった。

2度出場した春のセンバツでは2年時は興南、3年は東海大相模といずれも優勝校の前に敗れたが、左のサイド気味から繰り出す独特のボールの角度と高い制球力で、スピードがなくても抑えられる投手の好例だった。社会人でほとんど登板を見る機会がなかったのは残念だが、技巧派左腕として記憶に残っている。

3位:大塚尚仁(九州学院→12年ドラフト3位楽天) 

1年夏、2年春、3年春と甲子園に3度出場。下級生の頃からとにかくコントロールが良く、試合を作れる投手という印象が強かった。なかでも印象に残っているのが3年春のセンバツだ。

初戦の女満別戦では四死球0で10奪三振完封。高い注目を集めていた相手エースの二階堂誠治に見事に投げ勝っている。続く2回戦では春夏連覇を達成した大阪桐蔭を相手に逆転負けを喫したものの、5回まで被安打3、四死球0で無失点と王者を焦らせる投球を見せた。

プロでは一軍登板わずか9試合でユニホームを脱いでいるが、高校時代の両サイドへのコントロールは抜群で、内角を厳しく突いて外の変化球を踏み込ませない投球は見事だった。

2位:前田健太(PL学園→06年高校生ドラフト1位広島) 

高校1年夏から登板を見る機会は多かったが、本格化したと感じたのは2年春に行われた日大三との練習試合だ。ほとんどのボールが低めに集まり、投げ損じの少なさに驚かされたのをよく覚えている。

とくに印象的だったのが、インコースへの投球だ。 捕手が内角のストライクゾーンぎりぎりに構えることが何球も続くこともしばしばあり、ネット裏で見ているスカウトやファンからも「まだ内角行くのか……」という声が漏れたこともあった。高校時代はまだ線が細く、ボールの力は田中将大(駒大苫小牧→楽天)、大嶺祐太(八重山商工→ロッテ)、増渕竜義(鷲宮→ヤクルト)の方が上だったが、コントロールに関しては前田が頭ひとつ抜けた存在だった。
1位:二木康太(鹿児島情報→13年ドラフト6位ロッテ) 

前田を抑えて1位に選んだのが、現在ロッテで活躍している二木だ。その投球を見たのは17年夏の鹿児島大会・対喜界戦。当時のプロフィールは187センチ、73キロとなっており、第一印象はとにかく細いというものだったが、投げ始めてすぐに評判になっていることがよく分かった。とにかく捕手のミットが構えた位置から動かないのだ。

フォームは少しギクシャクしたところがあったが、左肩がぎりぎりまで開かず、小さいテイクバックでコンパクトに縦に腕が振れるため、左右にボールがぶれることは皆無。ちなみに、この時のストレートの最速は137キロとドラフト候補としては物足りない数字だったが、それでも支配下での指名(6位)を勝ち取ったのは将来性と高い制球力の賜物と言えるだろう。

他に候補として考えた選手としては大谷智久(報徳学園)、大原慎司(明秀日立)、唐川侑己(成田)、野村亮介(静清)、飯田晴海(常総学院)、田口麗斗(広島新庄)、奥川恭伸(星稜)、根本悠楓(苫小牧中央)、笠島尚樹(敦賀気比)、小園健太(市和歌山)などの名前が挙がる。

このなかでは根本が今年のキャンプで頭角を現しつつあるが、高校3年夏の投球はやはり高校生離れしたものがあった。根本以外にも堀、大塚、大谷、大原、田口など上背がなくてもプロになっている選手も多いが、やはり制球力が高く評価された結果と言えそうだ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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