
一度は引退を決意し、ピッチを離れた。それでも室田祐希は、再びフットサルと向き合う道を選んだ。
エスポラーダ北海道をけん引したエースは、今シーズンの週間MVPに4度も選出。16試合で25ゴールを挙げて堂々の得点ランキング首位に立ち、F2優勝とF1復帰の立役者として圧倒的な存在感を示してきた。
11月30日の第17節、首位・デウソン神戸との天王山は、先制点を呼び込み、追いつかれても同点弾をお膳立てし、そして残り1分で決勝点をたたき込んだ。神戸が引き分け以上で優勝という最終決戦で、これ以上ない立役者となった。
迎えた最終戦となる第18節。神戸が先に最終戦を終えたことで、勝てば自力優勝が決まる大一番。室田は、3200人を超える観客の前で2ゴールを挙げ、チームを勝利に導いた。
2023-2024シーズンを終えて現役引退を宣言していた室田が、「北海道をF1に再昇格させる」と決意して復帰してから2年。有言実行、悲願を果たした胸中にどんな感情があるのか。そして、3シーズンぶりに舞い戻るF1で、室田は何を見せるのか──。
取材=本田好伸
編集=伊藤千梅
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優勝の瞬間は、不満が大きかった

──F2優勝、そしてF1昇格おめでとうございます。優勝を決めた瞬間はピッチでどのような気持ちでしたか?
最終節のマルバ水戸FC戦は試合内容が良くなかったので、試合終了の瞬間はプレーに対する不満のほうが大きかったように思います。優勝と同時に来シーズンのF1昇格を決めたものの、「このクオリティではまたF2に落ちてしまう」という危機感が強かった。なので、その瞬間はうれしさがすごくあったわけではありません。
──何よりも結果が重視される試合でありながらも、内容へのこだわりもあった。
もちろん、あの試合は勝つことが一番大事でしたが、去年からF1を見据えて戦ってきましたし、その舞台で対等に渡り合える力をつけないといけないと思っていました。なので、試合終了の笛が鳴った瞬間は「まだまだ」という気持ちが出てきたのかなと思います。ただ、セレモニーで表彰してもらった時は切り替えてみんなで喜びを分かち合えていました。
──第17節は首位・神戸との直接対決でした。
神戸が勝ったら彼らの優勝が決まるという状況で相手のホーム戦だったので、試合前は完全アウェイになるかなと思っていました。でも、北海道のサポーターもたくさん来てくれて、アウェイを感じることもなかったですし、本当に応援の力がありがたいな、と。
──先制されて焦る気持ちも?
いえ、チーム内にヤバいといった雰囲気はありませんでした。相手は若い選手も多く、逆にこっちには経験がある選手が多いので、最後に逆転すればいいと落ち着いていました。
前半は審判のジャッジにフラストレーションを溜めてしまうこともありましたが、ハーフタイムでは「そこ(審判の判定)に目を向けるのはやめよう」という話をしました。最後は自分たちがやるしかないということを再確認できました。
──第2ピリオドの立ち上がりで追いつきながらも、また勝ち越されました。
その時はまだ試合時間が7分くらい残っていましたし、それだけあれば点は動くので、特に焦りはありませんでした。チャンスもかなりありましたし、定位置攻撃のまま点が取れたらいいなとは思っていましたが、結果的にはセットプレーから取ることができました。
──37分に鈴木裕太郎選手が同点弾を決めてから、残り2分からパワープレーを始めました。そして1分を切ったところで、室田選手の逆転弾。ドラマのような展開でした。
そこまで出場機会がなかった佐藤(明生)がゴレイロとして入っていたので、パス回しで感触を合わせようと、最初はボールを散らしていました。パワープレーからチャンスをつくれると思っていましたし、ゴールシーンはその佐藤がブロックに入ってくれたので自分で持ち運んで右足を振り抜きました。最初に相手に当たって、ゴール前でも裕太郎くんが競り合っている相手にもボールが当たっていたようですが、どんな形でも良かったですね。
16試合で25得点の大活躍

──振り返ると苦しい時期もあったのではないでしょうか?
そうですね。アウェイで戦った第7節のヴォスクオーレ仙台戦で負けた時は危機感が強まりましたし、序盤で3敗目を喫したのでさすがに厳しいとも思いました。その時は監督が交代してチームをつくっている途中だからと自分に言い聞かせていた部分もありますけど、そこから一度も敗れないで進めたことは、うまく気持ちを入れ替えられたのかなと思います。
──室田選手自身として、F1から離れたことで、コンディションが落ちてしまう感覚は?
それは特に感じていませんでした。引退を決めていたなかで3月末に復帰した昨シーズンよりも準備時間があったので、今年のコンディションは良かったと感じています。
──今シーズンは16試合で25得点という数字を残しました。
ゴール数が伸びたのは、F1と比べて得点が動きやすいリーグだということもあるとは思います。それに、今シーズンは“点が取れる年”だったのかなと。常にゴールを意識していますが、入らない時は入らないので。今シーズンはいろいろなものがうまくハマりましたね。
──自分で奪ってそのままカウンターで決めきるなど、その技術が際立ちました。
もちろんそうやって自分で決めきったゴールもありますけど、周りの選手がいるからこそ僕が生きていると思います。ただ仕掛けるだけでは突破が難しくても、ピヴォが逆サイドで相手を引っ張ってくれているから縦が空くように、味方の動きに生かされています。定位置攻撃では、基本的に味方の動きをうまく使いながら仕掛けることが多かったと思います。
──連係もうまく機能していました。
シュライカー大阪から入ってきた笠島(大暉)は同じセットでやっていましたが、少しずつ合ってきた感覚もありましたし、すごくいい選手だと思います。
今は若い選手が増えましたけど、平山(将望)監督はそうした選手に教えるのが本当にうまいな、と。それに、若い選手が情熱をもってプレーしていることも大きい。みんな真面目ですし、自分から聞きに来る選手も多いので、いい雰囲気でやれていると感じていました。
若い選手へのアドバイスは、特に(水上)玄太くんや宮原(勇哉)がよくコミュニケーションを取っていますし、宮原は本当に熱心。彼が戻ってきたことも大きかったですね。
──そうしたベテラン選手の活躍もすごかったですね。
今シーズンは玄太くんが得点を取れたことも大きかったですし、裕太郎くんもそうですけど、40歳オーバーの2人が年齢を感じさせないプレーを見せながら、結果も出しています。自分も、彼らと一緒に試合に出るとやっぱり連係しやすい。あの年齢でここまでのレベルでやっているのはすごいことですし、本当にチームに欠かせない選手たちです。
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3シーズンぶりに俺を見に来て!

──F2での2年間を振り返っていかがですか?
昨シーズンは僕も出られない試合がありましたし、(優勝してF1に昇格した)ボアルース長野にはどこも勝てませんでした。彼らがとにかく強かったということだと思います。
今シーズンは失点数が多かった序盤は難しい試合も多かったですし、チームの入れ替わりもあるなかで苦しい時期もありながら、若手とベテランのチーム構成がうまくマッチして、雰囲気も良く、今シーズンこそはいけると自信をもてた中盤戦以降だったと思います。
──来シーズンは3シーズンぶりにF1での戦いとなります。
この2年間でレベル感も変わっていると思いますし、やれるのか、やれないのかはまだわかりません。ただ、チーム内でもF1復帰を念頭において練習してきましたし、強度が低かったらその都度伝えながら、高い水準でトレーニングを続けられたとは思っています。
何より、見ていて楽しいプレーは変わらずに意識していきたいですね。
──ちなみに、F1の試合は見ていましたか?
見ていました。どのチームがどんな戦いをしているといった目線ではなく、純粋にフットサルが好きで見ていたという感じですね(笑)。
──では、気になるチームや選手は?
やっぱり、自分もプレーしていたペスカドーラ町田は見ますね。当時は高校生だった(毛利)元亮や(甲斐)稜人が主軸になっているのはうれしいですね。あとは、バルドラール浦安のタケ(本石猛裕)とかカズ(菅谷知寿)など、仲が良かった選手の試合をけっこう見ます。それもただ、いちフットサルファンとして見ている感じですけど(笑)。
それと、長野はディフェンスもいいですし、チームとして仕上がっていますよね。やっぱり、昇格したチームが1年で落ちてしまってはF2のレベルは上がらないと思いますし、長野がF1でも結果を残しているのは、僕らからしてもうれしいことです。
──名古屋オーシャンズはどうですか?
めっちゃ点を取っていますよね。星を落とさないなとも思いますし、吉川(智貴)先輩が最後の年ということもあって、いつも以上に一つになっている感じもしています。
──現役引退を表明している選手も多いですよね。
それに関しては「1年遅かった」というのが正直な思いです。(諸江)剣語も、リュウさん(星龍太)もですけど、もう一度、同じピッチで戦いたかったな、と。
──チームとしてどこを目指しますか?
とにかく、一つの勝利が大事。もちろん優勝を目指しますけど、いきなり「優勝します」と簡単には言えません。だからまずは1試合1試合戦うしかないと思います。
まずは、やってみるしかないですね。自分自身、すごく楽しみにしています。3シーズンぶりのF1の舞台になるので、みなさんぜひ、俺を見に来てください!

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