
東大阪の地で、スポーツ量販店の卓球売り場に約10年立ち続ける岩佐直樹さん。
自身も卓球をこよなく愛するプレーヤーでもあり、量販店の卓球売り場の活性化に人一倍情熱を注いできた。
第1回(全3回)の今回は、奥が深い卓球用具の世界で、いかにしてスポーツ量販店の売り場を“専門店化”してきたのか、話を聞いた。

写真:お店の試打台/提供:SUPER SPORTS XEBIO
“鶴の一声”で試打台が実現
── 岩佐さんが卓球売り場を担当する東大阪店は、試打ができる卓球台があって、これは量販店ではめずらしいですよね。
岩佐: そうですね。いま、スーパースポーツゼビオではある程度しっかり打てる試打台があるのは、福岡天神店と、この東大阪店ですね。もっと試打台がある店舗を増やしたいというのが私の目標です。
── 卓球売り場を担当された10年前から、試打台はあったんですか。
岩佐: いえ、最初は他のお店と同じく商品を並べて売るだけだったんですが、7年前くらいに社長が店舗を巡回に来たときに“卓球できるスタッフがいて、卓球台もあるんだから、広げて打てるようにすればいいじゃないか”という話をいただいて。
私もやる気はあったんですが、それまで、常時卓球台を店舗に広げておくということになかなかGOサインが出なかったんです。
── 社長の鶴の一声で、長年の願いが叶ったんですね(笑)
岩佐: はい(笑)。
強みは「売り場がコミュニケーションの場になっていること」
岩佐: メーカーさんにも協力していただいて、試打用ラケット・ラバーとして一般の中上級者が使うような用具も揃え、試せる状態にしました。すると、もともと量販店にいらっしゃっていた初級者層に加えて、中上級者層のお客さんも徐々に増えていき、売れ筋も変わっていきました。
今では、売り場が試打台を中心にコミュニケーションの場にもなっていることが、うちの店舗の強みになっていると思います。
── 売上も上がりましたか。
岩佐: 目に見えて上がっていきました。売上が上がればまた品揃えも充実させられる、という好循環になりましたね。
── 「量販店の専門店化」の成功例ですね。
岩佐: はい。私自身は、専門店に見習うべきは、品揃えではなく試打環境を含むサービスの部分だと思います。
まだ専門店に叶わない“人”と“サービス”
── ただ、たまたま岩佐さんのような競技経験のあるスタッフがいる場合を除けば、量販店のスタッフにそのサービスを求めるのは難しくないですか。
岩佐: おっしゃる通り、現時点ではまだ専門店とは差があると思います。商品知識や、ラバー張りの技術においても。
でも、量販店が専門店と戦うには、私たちが学んで専門店に寄せていくべきだと思います。
品揃えは商品部と協力すればなんとかなるので、人とサービスの部分を量販店の卓球売り場は改良していかないといけない。
── では、専門店化が成功した量販店の卓球売り場は、専門店にはない良さが何かあるのでしょうか。
岩佐: お客さんにとって入りやすい、敷居が低いという点はあると思います。お客さんから“専門店だと買わないといけないというプレッシャーを感じる”という声はよく聞くので。
── 東大阪店ではお客様の年齢層はどんな感じですか。
岩佐:学生が4割、30~40代が4割、それ以上の年配層が2割くらいです。特に東大阪店では、ラージボールを楽しむ60代以上のお客様も多く、地元クラブと提携していて、そこの方がラバーを張り替えに来てくださるので、他のお店より大人の割合が多いと思います。
部活が少ない学校にも卓球部はある
── ところで、それぞれの世代の方が、卓球を始めるきっかけは何なのでしょうか。
岩佐: まず、卓球を始める方が一番多いのが中学校の部活動ですが、“なんで卓球部入ったの”と聞いてみると、私がコーチをしている中学校もそうなんですが、今の学校には、あまり部活動の選択肢がなかったりするんですよね。
卓球、バスケット、テニス、サッカー、運動部はそれくらいの学校もあります。卓球は手軽に始められ、また多くの人が一度はレジャー等で卓球に触れたことが
ある身近さ、親しみやすさから選ぶ人も多いです。
小学生は、張本選手、早田選手、伊藤選手らトップ選手をテレビで観て“卓球ってかっこいい”という憧れで始める子が多いという印象です。
── シニアの方はいかがですか。
岩佐: 年配層の方は、地域の公民館のサークルで、運動不足だからちょっと卓球を始めようという方が多いですね。
昔テニスをやっていたけど、もうテニスの動きはちょっとしんどくなってきたから卓球に変えたという方も結構いますね。卓球だとまだ動きが少ないからやれそう、というモチベーションのシニアの方ですね。
── インバウンドのお客さんは来ますか。
岩佐: 東大阪店に関してはあまり来ていません。昨年の12月から免税も始めたので、もう少し認知を広げていきたいですね。
ただ、京都店などの海外のお客様が多い店舗の卓球売り場では、インバウンド需要は盛り上がっていますね。
── 何を購入するんでしょう。
岩佐: バタフライの高額商品のまとめ買いですね。樊振東や林昀儒、ビスカリアなどのラケットと、ディグニクスなどの高額ラバーです。メイドインジャパン製品の人気は高いです。
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