ジョーダンの息子は今……!? 往年の名プレイヤーたちの現役2世NBA選手【NBA講座vol.14】

マイケル・ジョーダンは、2025年8月現在で62歳。ジョーダンは5人の子宝に恵まれているが、あなたはその5人の子どもたちが今どこで何をしているかご存じだろうか。
「「バスケの神様」と称されたジョーダンの息子・娘」というだけで期待してしまうファンもきっと多いと思うが、今回はレジェンド選手の息子で現役NBA選手として活躍している「2世NBA選手」について紹介していきたい。余談だが「3世」まではいなかったため記載しない。
ジョーダンで止まっているあなたはもちろん、NBAを全く見たことがない方でも読みやすいように少し余談も交えながら記事にしていくため、面白おかしく読んでもらえると嬉しい。

前回記事:
アメリカが勝てなかった世界の強豪国【NBA講座vol.13】

神様・ジョーダンの息子たち

まずはジョーダンについて紹介していきたい。冒頭の通り、ジョーダンには男2人・女3人の計5人の子どもがいる。またジョーダンは離婚・再婚をしているため、5人の子どもたちは上3人と下2人でお母さんが違う。以下にジョーダンの子どもたちについてまとめる。

生まれ年 名前 現在
1988 ジェフリー・ジョーダン (男) デボラ・ジョーダン (1989-2006) 実業家・投資家 (家族の資産管理会社など)
1990 マーカス・ジョーダン (男) デボラ・ジョーダン (1989-2006) 実業家(「Trophy Room」創業)
1992 ジャスミン・ジョーダン (女) デボラ・ジョーダン (1989-2006) ジョーダンブランドで勤務 (PR・マーケティング)
2014 ビクトリア・ジョーダン (女・双子)  イヴェット・プリエト (2013-) 学生
2014 イサベル・ジョーダン(女・双子)  イヴェット・プリエト (2013-) 学生

まず長男のジェフリーと次男のマーカスは大学までしっかりバスケをやっていた。
長男のジェフリーは名門イリノイ大学に通っていたものの、大学時代は主力ではなくそもそもNBAに挑戦せずにプレイヤーとしてのキャリアを終えた。一時はジョーダンブランドに関わっていたが、現在はバスケットやイベント関連の仕事をしているそう。性格は幼少期から大人しく真面目だそう。
次男のマーカスは得点能力も高かったためNBA入りが期待されていたがドラフトにはかからなかった。大学卒業と同時に引退。その後はジョーダンブランドとの関係性も非常に強いスニーカー・アパレル事業「Trophy Room」 を創業するなど実業家として活動をしている。ジェフリーと違って”やんちゃ”な性格の持ち主である。ジョーダンの盟友であるスコッティ・ピッペンの元妻:ラーサ・ピッペンとマーカスの交際報道が出たこともあったことが、やんちゃを物語るには丁度いいだろう(2022年に報道が出る。現在は破局。当時マーカスが32歳でラーサは48歳。実に16歳差のカップルだった)。2025年2月には飲酒運転とコカイン所持で逮捕されたこともバスケ界ならびにNBAでは話題になった。

話を戻して、2人はバスケットの選手としては父ジョーダンのようになることはできなかったが、ビジネスで着実に成果を出すことができている。ジョーダンはバスケットに拘らずに「責任感」や「自主性」を尊重する教育方針を持っていて、その結果バスケットで成功できたら嬉しいという考え方だった。そのため、息子2人にもバスケットをプレーすることは強制しなかった。とはいえ小さい頃からボールに触れたり一緒にシュートやドリブルを当たり前にしていたためバスケットそのものが身近だったことは間違いない。
「失敗をしても挑戦を続けるんだ」「勝つまで努力を続けるんだ」といった教育をジョーダンはしていたため、結果的にジェフリーは堅実で真面目、マーカスは自由奔放だがビジネスで成功、という個性が育った。
もちろんこの教育方針は長女のジャスミンにも向けられている。ジャスミンはそもそもバスケットのプロになるつもりはなく、大学時代はジョーダンブランドで働くためにマーケティングやマネジメント形を専攻。そして現在はジョーダンブランドでマーケティングやPR、ブランド戦略に関わりつつ、また父ジョーダンのイベント運営に関わることも多い。
最後に女の子の双子の末っ子:イサベルとビクトリアは2014年生まれのためまだ学生である。どんな将来を描くのか、とても楽しみだ。

2世NBA選手たち[2024-25シーズン]

マイケル・ジョーダンの息子はNBA入りすることはできなかったものの別の道で成功することができている。しかし「NBA選手の息子もNBA選手」というケースはいくつもある。ステフェン・カリーもその1人であるし、バスケの王様:レブロン・ジェームズは昨年自身の息子と一緒にプレーしたことでも有名だ。以下に一覧としてまとめておこう。

選手名 2024-25所属チーム 父親 父親の経歴
ゲイリー・ペイトン2世 ゴールデンステイト・ウォリアーズ ゲイリー・ペイトン 殿堂入り。1996-97シーズンの最優秀守備選手
スコッティ・ピッペン・ジュニア メンフィス・グリズリーズ スコッティ・ピッペン ジョーダンの相棒として6回の優勝を経験した名脇役
ケニオン・マーティン・ジュニア フィラデルフィア・76ers ケニオン・マーティン ネッツで2001年ファイナル進出。元オールスター
兄ステフェン・カリー/弟セス・カリー 兄:ゴールデンステイト・ウォリアーズ/弟シャーロット・ホーネッツ デル・カリー シャーロット・ホーネッツなどで活躍したシューター
クレイ・トンプソン ダラス・マーベリックス マイケル・トンプソン 1987年&1988年にレイカーズで優勝
ドマンタス・サボニス サクラメント・キングス アルヴィダス・サボニス 221cmのC。殿堂入り。リトアニアのレジェンド
ジャレン・ジャクソン・ジュニア メンフィス・グリズリーズ ジャレン・ジャクソン 1999年にスパーズで優勝
ラリー・ナンス・ジュニア ニューオリンズ・ペリカンズ ラリー・ナンス・シニア 本オールスター、初代ダンクコンテスト王者
アンドリュー・ウィギンズ マイアミ・ヒート ミッチェル・ウィギンズ 1980年代に活躍
ブロニー・ジェームズ ロサンゼルス・レイカーズ レブロン・ジェームズ(現役) NBA王者4回などあらゆる記録を保有する生きる伝説。親子でコートに立った史上初の選手

この中でいえば、筆者の世代でいうとゲイリー・ペイトンにどうしても目がいってしまう。ゲイリー・ペイトンは当時シアトル・スーパーソニックスでチームを優勝候補まで引き上げた名ポイントガードである。ディフェンスの名手としても知られており、オールスターにも選出された。そんな彼の息子である「ゲイリー・ペイトン2世(以下GP2)」は、現在ゴールデンステイト・ウォリアーズでバックアップ選手としてローテーションの中でも重要な役割を持っている。父親譲りのディフェンス能力の高さはもちろん、193cmしか身長はないが対空時間が非常に長いジャンプ力も兼ね備えていて、父親にはなかった派手なダンクが彼の魅力でもある。
GP2と長くチームメイトであるステフェン・カリーも2世NBA選手であるし、カリーと長年「スプラッシュ・ブラザーズ」として活躍してきた相棒のクレイ・トンプソンも2世NBA選手である。

カリーの父親である「デル・カリー」は、そもそもシューターとしてNBAで長く活躍したタイプである。よって、親も子もシューターだ。
ジョーダンと違ってデルは幼少期からカリーと弟のセスに対して、シュートフォームの反復練習をとにかくやらせたそう。手首の使い方やリリースのタイミングなど、細かいテクニックを徹底的に仕込んだと言われている。まさに2人のシュートの基礎を作ったわけだが、その上でそれぞれの独自のプレーは応援した。カリーが長距離でスリーポイントを打つことも、セスがスポットアップで確率を高めることも。息子2人ともNBA選手になったという例は、決して多くはない。

またカリーの相棒だったクレイ・トンプソンは、父親の「マイケル・トンプソン」と大きく異なるプレースタイルだ。父は208cmの長身を生かしたビッグマンであり、現役時代はマジック・ジョンソンやカリーム・アブドゥル・ジャバーらとレイカーズで活躍した。1987年と1988年にNBAチャンピオンにも輝いた実績を持っている。ゴール下からミドルレンジのシュートとリバウンドなどのハッスルプレーが得意だった。一方、息子であるクレイ・トンプソンは優れたシューターでありディフェンダーの3&Dと呼ばれる選手の代表格。1試合ではなく、1クオーターで37得点を記録したこともある現代型のスコアラーで、父親とは全く違うプレースタイルだ。父の背中を見つつ、父と違って自分が活躍できる場所や得意なことを見つけ、それを生かしてNBA入りしたクレイではあるが、父マイケルのコネクションで高水準の指導を受けることができていたことも大きい。

ちなみに、カリーもクレイも中堅大学出身である。中堅大学出身でありながら今スターとして活躍できているのは、確実に昔から基礎を大切にしてきたからだと思う。

 

 

NBA史上初!親子同時出場

レブロン&ブロニーは、親子でNBAのコートにたったという史上初の事例である。2024年10月に初めてNBAの公式戦で親子が同時にコートに立った。当時レブロンは39歳で、ブロニーは20歳。そもそもほとんどのNBA選手は30代半ばで現役を引退するが、レブロンは2025年8月時点で41歳であり、2025-26シーズン開幕後の12月で42歳になる。
余談だがNBAの最長現役選手は43歳までプレーしたビンス・カーターである。「エア・カナダ」と呼ばれ、バルセロナ五輪では人越えダンクを披露したことでも有名。昨シーズンのレブロンを見ていると「本当に40歳超えているのか?」と思うパフォーマンスをしていたため、カーターを超えて現役生活をまだ続けるかもしれない。

ちなみに、息子のブロニーは2024年のオフに父親が所属するロサンゼルス・レイカーズからドラフト指名を受けてNBA入りが決まった。親子が同じチームでプレーできることが叶えられた瞬間でもあったが、この指名については「まだNBAのレベルではないブロニーを指名するのはいかがなものか」「レブロンがフロントにゴリ押しした」など、さまざまな憶測が飛び交った。要するにレブロンが自分の夢を叶えるためにあらゆる手を使った、ということである。

あながち間違いではないが、ブロニーの契約を上手くまとめたのは、レブロンの代理人でもあるリッチ・ポールであった。
レブロンはかねてより「息子と同じチームでプレーしたい」と公言していた。この意向を実現させるべく、リッチ・ポールは以下3つの戦略を講じる。

限定的なワークアウトの実施 ブロニーは、ドラフト前にフェニックス・サンズとロサンゼルス・レイカーズの2チームとしかワークアウトを行わなかった。ポールはこれを「戦略的な選択」としており、他のチームとのワークアウトを避けることで、特定のチームへの関心を示した
他チームへの警告 他のNBAチームに対して、ブロニーを指名する場合、彼がオーストラリアなど他のリーグでプレーする可能性があると警告したと報じられている
レブロンとの連携の否定 レブロン・ジェームズとブロニーの「パッケージ契約の噂(息子を契約してくれたら俺(レブロン)も契約するといったデマ)」を否定し、ブロニーの指名がレブロンの再契約と結びついていないことを強調した

当然ながらリッチ・ポールとしては、長年面倒を見てきたレブロンの要望になんとしても応えたい。レブロン&ブロニーの親子共演を実現できた時の話題性や立役者としての評価など自分のキャリアに箔が付く。かつ彼の場合は「Klutch Sports Group」というスポーツエージェントの会社の経営者でもあるため、会社も彼自身もブランド力や交渉力が増すなど、自分にとってこの案件の実現によるリターンが大きすぎることが簡単に予想できた。
最終的には彼の手腕によって、レイカーズは2巡目55位でブロニーを指名。レブロンは「家族全員が集まって祝ったこの瞬間は、決して忘れない」といった趣旨のコメントを残した。

蓋を開ければ、確かにブロニーはルーキーシーズンとなった2024-25シーズンでそこまで活躍はしなかった。とはいえGリーグに送り込まれれば、40点近い得点を重ねた試合も少なくなかったため、確かな成長を続けている。きっとレブロンはまだ現役を続けるであろうが、同じプロの舞台で、あと何度同じコートで同じ時を過ごせるか。その時が楽しみだ。

大注目の2世NBA選手

最後に、まだNBA入りしてはいないが、今後大注目の2世NBA選手を一覧で紹介してこの記事を締めくくりたい。有名どころばかりなので、個人的にも非常に楽しみにしている。

名前 所属チーム プレースタイル 父親
ディラン・ハーパー サンアントニオ・スパーズ
(2025-26シーズンのドラフト全体2位)
ディフェンスの鋭い読みと高いバスケIQが武器のポイントガード ロン・ハーパー(ジョーダンやピッペンとともに6回NBA優勝を経験)
DJ・ロッドマン 南カリフォルニア大学 父親に似てリバウンドやディフェンスで存在感を放つ デニス・ロッドマン(ジョーダンやピッペンとともに6回NBA優勝を経験)
アシュトン・ハーダウェイ メンフィス大学 NCAAでも活躍中。父に似たオフェンスマシーンである ペニー・ハーダウェイ (2m超えのPG。1995年にファイナル進出。ジョーダンの後継者とも言われたスター)
カメロン・ブーザー デューク大学 2025年の高校バスケで最優秀選手とも称された。2026年のドラフト有力候補 カルロス・ブーザー(派手さはないが堅実なインサイド。オールスター級のビッグマン)
キアン・アンソニー ロングアイランド・ルーテラン高校 ニューヨークの高校で最高選手とも言われている。春に父カーメロが卒業したシラキュース大学へ進学予定。進学後にNBA入りできるか注目が集まっている カーメロ・アンソニー(レブロンと同期で永遠のライバル。一時代を築いたスーパースター)
ブライス・ジェームズ アリゾナ大学 現在18歳だが抜群のポテンシャルがある将来のドラフト候補。親+息子2人が同時にコートに立つ可能性を秘めている レブロン・ジェームズ (NBA王者4回などあらゆる記録を保有する生きる伝説。親子でコートに立った史上初の選手)

前回記事:
アメリカが勝てなかった世界の強豪国【NBA講座vol.13】