人と場を探す~卓球でまちづくり~【シニア世代からの卓球入門:第5回】

(1)   意外なところにも卓球台が

「卓球できる場所がなかなかない」との悩みはよく聞きます。

確かに場所、台数、料金、部屋の取りやすさなど、適切なところは少ないかもしれません。

しかし、使用できるかどうかはともかくとして、地域のどこに台があるか、まずは調べてみると良いでしょう。

大学・専門学校、福祉施設、医療機関、保健所、会社、個人宅…。

ある人は、老人ホームの会議室に1台あるのを知り、施設長と交渉し、サークルで使用することができるようになりました。

児童養護施設に台があるのを知り、世代交流の卓球をしている人もいます。

台が置けるスペースがあれば、台を安く調達する方法はいくつかあります。

「学校の古い台を廃棄処分してもらってから寄贈してもらい、ビルの地下駐車場に置いた」という人もいます。善意銀行を通じて企業で使わなくなった台をもらった施設、某メーカーから新品の寄贈をいただいた施設、ネットオークションで格安で台を購入した人などもいます。

もっとも、今は新品の台がネット通販で3万円ほどで買えてしまうので、ご自宅に台を置く人もいたりします。

(2)   メンバー集め

高齢者の卓球サークルや卓球教室の参加者集めをしたい場合、一般のスポーツ団体の広報方法や口コミに加えて、次のようなやり方があります。

なお、福祉関係を通じての広報の場合は「介護予防卓球サークル」「シニア卓球サロン」のような名称の方が掲載依頼しやすい場合もあります。

・老人クラブ連合会やシルバー人材センターを通じての広報

・市町村社会福祉協議会や地区社会福祉協議会を通じての広報

・老人福祉センターや老人憩いの家へのポスター掲示

・病院・接骨院・薬局などへのポスター掲示

また、もし可能なら、高齢者に関わる福祉・医療職にもPRできればと思います。メンバーの中には、福祉・医療職に顔がきく人もいるかもしれませんので、どこへPRすれば良いか教えてもらうと良いでしょう。

(3)   コーチ探し

「コーチ」や「指導者」というとおおげさですが、練習相手をしてくれる若い人がいると、より良い練習ができる場合があります。

同世代の高齢者の場合は、地域でのつながりで探しやすいかもしれませんが、若い人との接点はなかなかないのではと思います。

各市町村の体育館の職員や、障害者卓球の指導者、卓球大会で知り合った人に声掛けや相談してみても良いのですが、他に医療・福祉に関わる人で卓球経験ある人とのつながりができると良い場合もあります。

医療・福祉系の勉強をしている学生や、現に医療・福祉職として働いている方がいると、お互い学べる点があります。

医療・福祉系学校や医療機関・福祉施設とのつながりを作り、人材探しをしてみてはと思います。

いずれにせよ、できれば高齢者の心身面の知識と、(昔でなく)現代の卓球の知識を併せ持つ人がいると望ましいと言えます。

(4)   世代交流・国際交流で生きがいづくり

卓球は3歳くらいから100歳以上の方までできるので、3世代どころか5世代交流さえできる可能性があります。

もっとも、一口に高齢者と言っても、「65歳と105歳とでは、孫と祖父母並みの年の差」さえあります。

年を取ってからでも始めやすい運動でもあるので、地域でさまざまな交流の可能性があります。

卓球指導方法の講習を受けた高齢者らが、地域の小学校に卓球指導をしに行き、世代交流を深めるということは、今後おおいにあり得ることでしょう。

高齢者にとって「役割がある」ということは大切なことであり、子どもにとっては高齢者への理解を深めることにもなります。

また、地域の国際化が進み、外国人が増える中で、卓球は多くの国で馴染みのあるスポーツであるため、交流のツールとしても役立ちます。

これからは卓球を通じての国際交流が広がり、相互理解が深まり、ひいては国際平和につながっていくと良いでしょう。

あとがき

高齢者に卓球を広めることで、卓球を通じてのまちづくりや、卓球によるリハビリが広がったり、日本が「高齢者卓球先進国」となって世界から注目されるなどの展開も期待できます。

多くの人に卓球が「手軽にできる」ことを知っていただくとともに、一方で「極めて奥が深い」ことも知っていただき、生涯続けたくなるようになればと思います。

せっかくの長寿時代、地域の中で仲良く、なるべく健康でいられるような社会にしていきたいものです。

筆者プロフィール:長渕晃二(ながぶちこうじ)

長渕晃二,卓球

NPO法人日本卓球療法協会理事長。NPO法人日本ピンポンパーキンソン理事。明治学院大学大学院修了(社会福祉学修士)。短大・専門学校での教員・卓球顧問や福祉施設での卓球経験あり。現在有料老人ホーム、デイサービス、介護予防サロン、メンタルクリニックで卓球療法を行う。著書は『コミュニティワーカー実践物語』(筒井書房)、『卓球療法士テキスト』『卓球療法入門』(サイドウェイズ)ほか。