“地元愛”で育てるプロ卓球チーム・九州カリーナの挑戦 川面創社長「夢を実現できる場でありたい」

福岡県を拠点に活動するTリーグチーム「九州カリーナ」。

2025年5月に「九州アスティーダ」からチーム名を変更し、独自のスタイルで地域に根ざしたプロ卓球チームづくりを進めている。

今回は、チーム代表の川面創(かわつら・はじめ)さんに、チーム名変更の背景、地元選手へのこだわり、スポンサーとの関係構築、そしてこれからの展望について伺った。

「九州カリーナ」誕生の理由

――まず、「アスティーダ」から「カリーナ」に名称変更された理由を教えてください。
川面創さん:2025年の5月に「九州カリーナ」に名前を変えたんですが、一番の理由は“自分たちの色”を出したいという想いです。

これまで一緒にやってきた琉球アスティーダとは良い関係を築けていましたが、やはりアスティーダは“男子”や“沖縄”のイメージが強いので、チームとしての独自性が出しづらかったです。

写真:選手にアドバイス/提供:アフロスポーツ
写真:社長兼監督の時代に選手にアドバイスする川面創社長/提供:アフロスポーツ

川面創さん:それに、九州の企業さんから「新しいチーム名にするなら応援したい」という声も多くいただいていて、それが大きな後押しになりました。

船出の意味も込めて、ロゴも一新して“新章”をスタートさせたというわけです。

写真:インタビューに応じる川面創社長 胸には新しい九州カリーナのロゴ/撮影:ラリーズ編集部
写真:インタビューに応じる川面創社長 胸には新しい九州カリーナのロゴ/撮影:ラリーズ編集部

――選手編成の方針にも「地元愛」が強く出ていますね。
川面創さん:僕たちは「九州を盛り上げる」というのをすごく大事にしています。

山室早矢と栗山優菜は九州出身ですし、今後も中学・高校でチャンピオンになった選手は、まずうちで声をかけたいと思っています。

写真:昨シーズンのプレー中の栗山優菜/提供:アフロスポーツ
写真:昨シーズンのプレー中の栗山優菜/提供:アフロスポーツ

川面創さん:増田秀文監督を招いたのも、ずっと僕が監督をやるよりも、九州ゆかりの人たちでチームを作っていきたかったからです。

地元で育った選手が、また地元のチームでプレーする。そういうチームを目指しています。

写真:山室早矢(桜丘高)/撮影:ラリーズ編集部
写真:山室早矢(桜丘高)/撮影:ラリーズ編集部

――地域の子どもたちへの影響も考えているのでしょうか?
川面創さん:そうですね。僕らが大分や鹿児島、長崎に試合をしに行くと、現地の子たちがプロの試合を見て、「自分もこのチームで戦いたい」って思ってくれる。それが夢になるんですよ。

だからこそ、子どもの頃に見た夢を実現できる場でありたい。そのために「九州カリーナ」という存在が必要だと思っています。

スポンサーと“共創”する地域密着の仕組み

――九州カリーナはスポンサー営業も積極的に行っていると伺いました。
川面創さん:Tリーグのチームはスポンサー集めが非常に重要です。うちは福岡を中心に、九州全体を巻き込んで活動しています。

各地の企業に「地元にプロチームがあることで地域の子どもたちが夢を持てる」と伝えて、スポンサードをお願いしています。

面白いのは、ボードスポンサーも地域ごとに変えているんですよ。例えば大分開催なら大分の企業、長崎なら長崎の企業というように。その地域に根付いた企業が応援する仕組みを作っています。

写真:選手の試合に集中/提供:アフロスポーツ
写真:選手の試合に集中/提供:アフロスポーツ

――それぞれの開催地にスポンサーをつけるのは大変ではないのでしょうか?
川面創さん:もちろん大変です。

でも、まずはその地域の“卓球好きのキーパーソン”を見つけてお願いしています。そして、その方と一緒に財界のキーパーソンに話をして、地域ぐるみの応援体制を作る。

おかげさまで、今季ホームマッチ開幕戦の大分大会では30社以上がスポンサーについてくれました。

演出・イベントでも“九州カリーナらしさ”を追求

写真:選手の応援/提供:アフロスポーツ
写真:選手の応援/提供:アフロスポーツ

――試合中のファンへの見せ方で何か工夫している点はありますか?
川面創さん:例えば、2026年1月には“劇場”で試合を予定しています。

真っ暗な中でブルーライトを使った演出を取り入れて、従来の卓球の試合とは違う空間を作ろうと思っています。

あとは演出だけでなく、来場者への体験も大事だと思っていて、アウェイのファンからも「九州カリーナの試合は面白い」と言ってもらえるように、MCなども工夫していきたいと思っています。

――素晴らしい取り組みですね。

様々な取り組みを行っていますが、九州カリーナはどのような体制で働いているのでしょうか?

川面創さん:現在、正社員は私を入れて3人なんですよ。ただ、それ以外にも連携企業として、広報、運営、音響など多くの会社と連携して、チームを作り上げています。そういう方々が5人くらいいて、学生インターンもいます。

去年は九州大学卓球部の学生が20人くらいインターンしていました。

卓球が好きな子たちがプロチームで働く経験ができる。そういう場を提供するのも僕らの役割ですし、若い意見を取り入れながらチームを進化させていくのが理想です。

これからの九州カリーナと川面創が目指す未来

写真:選手にアドバイス/提供:アフロスポーツ
写真:選手にアドバイス/提供:アフロスポーツ

――改めて、今後のチームの長期的なビジョンを教えてください。
川面創さん:今はまだ“道半ば”だと思っています。チームとしても、組織としてもまだまだこれから。売上が上がって、社員を増やして、僕の仕事を分担できるような体制にしたい。

たくさんの人が「プロ卓球チームに関わって成長できる」ような仕組みを創っていきたいですね。

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
川面創さん:卓球を通して九州を盛り上げたいし、子どもたちに夢を与えたい。そして九州にしかできないチーム運営を、地域の皆さんと一緒に作っていきたいです。

ぜひ一度、九州カリーナの試合を見に来てください!

取材・文:山下大志(ラリーズ編集長)