NBAとBリーグで違いはある?NBA独自ルールなどを徹底解説!【NBA講座vol.10】

「令和はバスケ」と言うに相応しいほど、今の日本のバスケットボールは盛り上がっていると思う。2023年のFIBAワールドカップでは、NBAのスーパースターであるキミ・マルカネン率いる格上のフィンランドに大逆転勝利し、続くベネズエラ戦でも大逆転勝利を演じた。沖縄アリーナで行われた激動の同大会は映画化もされたほどだ。
日本の盛り上がりに拍車をかけるように、NBAを目指す日本人プレイヤーもこの大会を機に増えた。それを応援する日本人も途端に増えた。
今回は、まだBリーグしか見ていない方、あるいはジョーダンの時代で止まっている方に、改めてNBAと日本のルールの違いを紹介していく。この記事を読めば、NBAを目指す日本人プレイヤーをより応援したくなるはずだ。

前回記事:
【ドラフト番外編】ドラフト外からNBAスターに上り詰めた、諦めの悪い男たち【NBA講座vol.9】

NBAと日本の違い:ルール

そもそもだが、NBAは独自ルールが非常に多い。ワールドカップやオリンピックなど国際大会とも異なるため、NBA選手は普段やらないルールや環境の中で国際大会を戦っている。逆に日本は国際ルールに基本的に則って試合を行なっているため、普段通りにプレーができる。この辺りのギャップが、2023年のワールドカップの勝因のひとつかもしれない。
「どのくらい違うか」と言えば、まずコートの大きさから違う。そしてボールの大きさも違う。さらには試合時間やタイムアウトの数と時間など、あらゆる面で異なることが多い。同じなのは「リングの高さ(305cm)」「バックボードの大きさ」「フリースローラインまでの距離」くらいであろう。以下はその一覧である。

NBA 日本(Bリーグ)や国際大会
コート 28.65m × 15.24m  28m × 15m
3PTライン 最長部分:約7.24m
コーナー:約6.7m
最長部分:約6.75m
コーナー:約6.6m
ボール Wilson(ウィルソン)の8枚パネル
7号球(約24.6cm / 約623g・本革)
Molten(モルテン)のオレンジとベージュの12枚パネル
7号球(約24.5cm / 約600g前後・天然皮革)
ファウル 1試合:1人6回で退場 1試合:1人5回で退場
試合時間 12分×4クォーター(計48分) 10分×4クォーター(計40分)
タイムアウトの数 前後半あわせて7回(細かいルールあり) 前半2回・後半3回(使い方やタイミングに違いあり)
タイムアウトの時間 1回75秒 1回60秒

一番影響が出るのは間違いなくボールだ。そもそもメーカーによって若干バスケットボールの作り方も違うため、メーカーが違うだけでも命取りになることはある。スリーポイントシューターが、指先の感覚が違うという理由で全く入らなくなることもある。

メーカーごとのボールの特徴

Wilson(ウィルソン) NBAでは伝統として8枚パネルのボール。本革であり溝が深いためグリップがしやすい。
Molten(モルテン) 国際大会では基本的に使われる12枚パネルのボール。ベージュの模様が入っているのが特徴。天然皮革のため表面が滑らかですべすべしている。
Spalding(スポルディング) 2021年までNBAで使われていた本革8枚パネルのボール。溝が深くグリップがしやすい。古くからNBAが好きな人から根強い人気がある。

NBAのボールと日本や国際大会で使われるボールの比較

NBA 日本に比べると、本革のため若干大きくて重い。8枚パネルで溝が深いためグリップがしやすい
日本や国際大会 NBAに比べると、NBAに比べると若干小さくて軽い。12枚パネルで表面は滑らか

ルールの違いは上記の通り、競技ルールだけではなくそもそもボールやコートの違いまで及んでいる。
そのため日本人がNBAに挑戦する際に苦しむのは、言語に加えてこのようなNBAの独自ルール。スリーポイントラインは日本に比べて1mほど遠くなるし、そもそもコートが広くなるので走る距離も若干変わる。ボールも重いため慣れる必要がある。
これらを全て短時間で適応していかなければ、NBAで活躍することは至難の技である。もちろん、高校や大学からアメリカに行っている八村塁選手や現在千葉ジェッツ所属の渡邊雄太選手などは、大学で適応する時間が作れたためNBAでも活躍ができたことは一つ理由として挙げられるだろう。だからこそ現在NBAのサマーリーグに参加している河村勇輝選手は、瞬時に適応して結果を残していることからも素晴らしい選手と言われているのだ。

NBAで実際に使われているWilsonの公式球

B.LEAGUEや国際大会で使われるmoltenの公式球

NBA独自ルールの大会について

河村勇輝選手が参加している「サマーリーグ」をはじめ、NBAでは通常のリーグ戦の中だけでもさまざまな方式で試合が行われている。
日本でバスケットを見ている方であれば、例えばBリーグの試合があって天皇杯があるような話だ。とはいえ「サマーリーグ」という名前を聞いたことはあるが、何かわからない方も少なくないと思う。以降は先ほどのルールに加えて、NBAを目指す日本人選手たちが、どのような舞台で戦っているのかを紹介していく。

大前提、NBAのシーズンは10月から開幕をし、PLAYOFFSまで含めると6月頃まで行っている。その期間で82試合が行われる。日本のBリーグは年間60試合であるが、まずはレギュラーシーズン一覧を以下にまとめる。その上で、NBA独自ルールによって行われる大会について紹介しよう。

シーズン(PLAYOFFS含む) 試合数 試合日
NBA 10月〜翌年6月 82試合 水・金・土が多いが基本的にはほぼ毎日
Bリーグ 10月〜翌年5月 60試合 水曜+週末が基本

Bリーグは上記のレギュラーシーズンに加えて、プレシーズンや天皇杯、あるいはEASL(東アジアスーパーリーグ)などもあるが、NBAの場合は以下である。

サマーリーグ

正式名称を「NBA 2K25 Summer League」という。この「NBA 2K」は、NBAのテレビゲームで有名なゲームブランド「2K Sports」のことであり、サマーリーグのタイトルスポンサーになっている。毎年年号が変わるため、今年はあくまで「2K25」であるが、来年は「2K26」になる。

そもそもこのサマーリーグは、毎年7月頃に開催される、若手選手発掘の場でありドラフト指名選手の実践経験の場であり、また無所属の選手の挑戦の場でもある。各チームで4〜5試合程度が行われるが、基本的に「個人評価」の場であるため、よくも悪くもチームの勝敗は重要ではない。だからこそ「未来のNBA選手たちがチャンスを掴む場所」と言っても過言ではない。
ただし、サマーリーグに出場できるのは、以下の条件を満たした選手たちだけである。

1 NBAドラフトで指名された新人選手
2 NBAチームもしくはGリーグチームと契約中の若手選手
3 「サマーリーグ招待(サマートレーニングキャンプ招待)」を受けた選手

現在日本人から3名がサマーリーグに参加しているが、3名はいずれも「3」の招待を各チームから受けて参加している。ここで結果を出すことができれば、NBA契約に一歩ずつ近づいていく。少ないが、いきなり本契約を掴む場合もあれば、NBAとGリーグを両方行き来する「2way契約」を結ぶこともある。もっとも、昨年の河村勇輝選手は、このサマーリーグで活躍したことでメンフィス・グリズリーズと2way契約を結んだ。今年のサマーリーグはシカゴ・ブルズで出場をしているが、獅子奮迅の活躍を続けているため、彼がNBAで2年目を過ごすことを大いに期待したい。

名前 サマーリーグ期間中に所属するチーム
河村勇輝 シカゴ・ブルズ
富永啓生 インディアナ・ペイサーズ
馬場雄大 ニューヨーク・ニックス

NBA公式からも取り上げられる活躍をする河村勇輝選手

NBAカップ

NBAカップは2023年から新たに始まったNBA公式の大会。シーズン中に行われるトーナメントであり、もちろんNBAのシーズンの82試合の中に含まれるが、決勝だけは「83試合目」として別枠で追加される。
このNBAカップの成績はレギュラーシーズンの順位に関わるものの、決勝だけは別枠として扱われることからレギュラーシーズンの成績に影響がない。

そもそもNBAカップは毎年11月〜12月頃に開催している。目的は簡単で、シーズン序盤の盛り上がりを作るため。そのためにNBAは、優勝をすると優勝チームの所属選手全員に50万ドル(約7,500万円)を賞金として支払い、準優勝チームにも賞金を支払っている。シーズンが始まって早々にこれだけのお金を手に入れられることが選手のモチベーションとなっていること、またファンも序盤から強度の高い試合を見られることから、まだ課題を残しつつもポジティブな意見が多いのが現状である。

また、NBAもレギュラーシーズンと差別化をするために、コートを派手に装飾したり、入場の演出を大規模にするなどさまざまなチャレンジを行っている。もしあなたが試合を見て「コートが派手だな」と思ったならば、それはNBAカップの可能性が高い。

ちなみに、このNBAカップはシーズン序盤ということもあり、若手選手にも非常に多くのプレータイムが与えられることが多い。2023年の初年度はロサンゼルス・レイカーズが優勝を勝ち取ったが、八村塁選手も多くのプレータイムを得てチームの優勝に貢献した。日本人選手がNBAの公式大会でタイトルを取ったのは歴史的に初のことだったため、非常に話題にもなった。

プレーイントーナメント

2020年から正式に導入されたプレーイントーナメントは、NBAのPLAYOFFSに進む最後の枠をかけた予選大会である。そもそも、NBAのプレーオフにはEASTとWESTでそれぞれ8チームずつが出場できるが、プレーインが導入されるまではシンプルにシーズンの順位で8位までが出場できる形だった。プレーインが導入されてからは、6位までが確実にプレーオフに出場でき、7位〜10位の4チームで最後の2枠を争う形となった。

この7位〜10位の4チームで最後の2枠を争う大会が、プレーイントーナメントである。

プレーイントーナメントは、より多くのチームにプレーオフ出場の機会を掴んでほしいという思いから特別ルールとして採用され続けているが、当初は新型コロナウイルスの影響による特別措置として導入された。そんな経緯ではあったものの、評判が良かったため継続しているのだ。

さて、プレーイントーナメントが導入されたことによって、プレーオフに出場する仕組みは以下の形となった。

1位〜6位 シーズン順位によりPLAYOFFS出場決定。プレーインは不出場
7位〜10位 最後の2枠の出場枠をかけてプレーイントーナメント出場

また、プレーインの仕組みは以下の通り。

試合 対戦 勝者 敗者
GAME.1 7位 vs 8位 プレーオフ出場確定 もう一度チャンス(GAME.3出場)
GAME.2 9位 vs 10位 勝者がGAME.3へ シーズン終了
GAME.3 GAME.1敗者 vs GA ME.2 勝者 プレーオフ出場確定 シーズン終了

仕組みを理解した上でNBAで活躍する日本人選手を応援してみてはいかがか。