チームではなく“寄り合い”の空気感で 泉壱番館・津田健裕さんが語る「クラブの成り立ちと今」

大阪を拠点に活動する卓球クラブチーム「泉壱番館」。

メンバーの大半は国公立大出身で、集まるのは年に数回。それでも全国クラブ選手権で着実に結果を残し続けている、ちょっと不思議な集団だ。

今回は、そんな泉壱番館(略称:イズイチ)を代表して津田健裕さんに、チームの成り立ちからクラブ選手権の舞台裏、さらには今後の展望までを伺った。

“泉壱番館”の由来と立ち上げのきっかけ

――まずはチームの成り立ちから教えてください。
津田健裕さん:チームを立ち上げたのは2021年、今から4年前ですね。もともと大学時代の僕の下宿先が「泉壱番館」というアパートで、よく同期が集まる溜まり場になってたんです。

そんな場所で飲みながら、「せっかく大阪にみんな就職するし、チームでも作るか」みたいなノリで立ち上げたのがきっかけです。

写真:学生時代、津田代表宅、泉壱番館にて飲み会/提供:泉壱番館
写真:大学時代の津田代表宅・泉壱番館での飲み会/提供:泉壱番館

――最初のメンバーはどんな方たちだったんですか?
津田健裕さん:神戸大学の同期で、僕、福田、中村、吉見、そして辻村さんの5人です。大学時代の延長線上で集まったメンバーですね。
――チーム名が“泉壱番館”というのも面白いですね。
津田健裕さん:完全にノリですね(笑)。他にも神戸大学OBチームで「緑の館」というチームがあって、そういう雰囲気に倣って。「寄り合い」みたいな感覚を名前でも表したかったのかもしれません。

クラブ選手権は惜敗も「無名でも頑張れた」

写真:2023年のクラブ選手権集合写真/提供:泉壱番館
写真:2023年のクラブ選手権集合写真/提供:泉壱番館

――クラブ選手権にはこれまで2回出場されていますよね。
津田健裕さん:はい。初出場は石川県開催のときで、当時のレギュラーは多田(現:SHIMADZU、京都大学卓球部監督)、中村(現:青嵐クラブ)、福田、辻村さんの4人。神奈川県代表のリトルキングスや島根県代表の平田球友会と予選リーグで当たって。

予選リーグは1勝2敗でしたけど、最終的にその大会で優勝したリトルキングスにはダブルスでフルゲーム9まで、多田もフルデュースまで競れました。初出場の無名チームだけど頑張れたかなと(笑)。

――2回目の出場のときはどうでした?
津田健裕さん:本戦は広島開催で、次もまた神奈川県代表で優勝候補のInfinityと同組でした。「優勝候補の神奈川県代表が2年連続はなんでやねん…」となりましたね(笑)。

惜しくも敗れましたが、こちらも競ることができたので見応えのある試合にはなりました。

写真:2024年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館
写真:2024年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館

「チームじゃなくて寄り合い」それがイズイチのスタイル

――泉壱番館はSNSでも積極的に発信していますよね。
津田健裕さん:SNSは主に中村が担当していて、僕は写真を撮るぐらいですね(笑)。チームの雰囲気が伝わるよう、楽しい空気感を出せるようにしています。
――チームの練習日は決まっているのでしょうか?
津田健裕さん:ないです(笑)。みんなそれぞれ仕事や生活がありますし、基本的には年に1〜2回、クラブ選手権の予選と本戦くらいしか全員集まりません。

写真:2023年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館
写真:2023年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館

――かなり自由なスタイルなんですね。
津田健裕さん:「チームというより寄り合い」って言われたこともあります。でも、みんなその“寄り合いスタイル”を気に入っていて、逆に気軽に参加できるのが長続きの秘訣かなと。
――新規メンバーの募集はしているんですか?
津田健裕さん:来るもの拒まず、去るもの追わずがモットーです。ただ、なぜか今まで入ってくれたメンバーは全員国公立大学出身者なんですよね(笑)。
――そうなんですね。現在のメンバーは何人ですか?
津田健裕さん:現在は10人(インタビュー当時)です。阪大歯学部の清水君や、大阪市立大学(現:大阪公立大学)の和田君など、徐々にメンバーも増えています。

写真:2023年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館
写真:2023年のクラブ選手権の試合の様子/提供:泉壱番館

チーム外の活動と、国公立大学卓球界の未来

――大会運営にも取り組まれているそうですね。
津田健裕さん:はい。「関公OB杯」という大会を始めました。

国公立大学のOBを中心に、同窓会のような雰囲気で開催しています。社会人なりたての20代から50代の方まで幅広い年代の方が参加してくれて、いい反響をいただきました。

写真:関公OB杯運営/提供:泉壱番館
写真:関公OB杯運営/提供:泉壱番館

――関公OB杯はどういったきっかけで開催されたんでしょうか?
津田健裕さん:よく福田と中村と3人で温泉行ったりしてたんですけど、そのときに「試合やってみる?」と話が盛り上がって。

国公立大学のOBが集まる場って全国公しかなかったので、自分たちでやろうかと。

――今後の目標はありますか?
津田健裕さん:この関公OB杯をもっと広げて、国公立大学卓球界全体の盛り上げにつなげたいです。第2回関公OB大会は2026年1月4日、磯上体育館で開催を予定しています。

泉壱番館としても女子チームの立ち上げや、次のクラブ選手権に向けた準備など、無理せず楽しく続けていけたらと思います。

写真:2023年のクラブ選手権のチーム集合写真/提供:泉壱番館
写真:2023年のクラブ選手権の神戸大学卓球部OB集合写真/提供:泉壱番館

――最後に読者へのメッセージをお願いします。
津田健裕さん:イズイチは“地味に強い”クラブですが、自由に卓球を楽しめる場所でもあります。

寄り合いのようなチームに興味がある方がいれば、ぜひ気軽に“入館”してください(笑)。

取材・文:堀本真之介