
違ったアプローチで「スピードアップ」を目指した最新シャフト
三菱ケミカルは今季の夏に発売する新製品として『VANQUISH™ VV』と『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』の2つのモデルをリリース。ツアートーナメントでの供給がスタートすすると多くのプロが興味を示し、すでに実戦投入した選手も出ている。
そんな中で7月11日(金)に発売となったのが『VANQUISH™ VV』だ。『VANQUISH™』シリーズは3年前に初代モデルが発売された新しいブランドで、三菱ケミカルが培ってきた高性能素材や設計を駆使して、高精度に作り上げた軽量帯のシャフトになっている。前作は先調子でヘッドの走りを強調したモデルだったが、最新の『VANQUISH™ VV』はクセのない中調子で、加速感をキープしながらタイミングの取りやすさ、方向性をさらに向上させている。
一方で、9月に発売を予定しているアスリートブランドの最新シャフトが『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』だ。『TENSEI™』シリーズは多種多様な素材を用いて、極限まで理想の性能を追求するブランドで、世界中のアスリートゴルファーから支持されている。最新モデルの『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』はタイミングの取りやすい元調子で、部分ごとに大きな剛性差を付ける独自の設計を採用することで、ヘッドの強い加速と方向性の高さを両立することが可能になっている。
超精密軽量ブランドの『VANQUISH™ VV』とアスリートブランドの最新モデル『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』。ブランドが持つイメージは真反対となる2つの最新シャフトだが、説明だけを見るとヘッドの加速による「スピードアップ」を目指したコンセプトは共通している。さらに、タイミングの取りやすさや方向性の高さがあるなど、似た部分があるだけに両方のモデルが気になっているゴルファーも少なくないだろう。そこで今回は三菱ケミカルのプロトタイプシャフトのテストに参加したこともあるゴルフライターの田辺直喜が2つの最新モデルを徹底比較。それぞれの特性や選び分けるポイントを探ってみた。
2つのモデルを同じ“5S”で試打比較
三菱ケミカルのリリースした2つの最新シャフトは、重量やフレックスなど、さまざまなスペックが用意されている。その中で両モデルに共通してラインナップされているのが50グラムとなるため、今回は特性の違いを詳細にチェックするため、同じ50グラム台のSフレックスのシャフトを用意して試打を行った。
試打の前に公式HPに掲載されている重量やトルクをチェックしてみよう。まず『VANQUISH™ VV』の“5S”はカット前の重量が56.7グラムで、トルクは4.5となっている。意外にしっかりと重さがあって、トルクも締まっているようだ。一方で『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』の“50S”は53.0グラムでトルクは5.3。単純なスペック比較では同じ50グラム台のSフレックスであっても、『VANQUISH™ VV』の方が少ししっかりとした仕様になっている。
「実際に振ってみると、『VANQUISH™ VV』の“5S”はシャフトの挙動が落ち着いていて、非常にタイミングが取りやすくなっていました。強く叩いてもスピンが少なく抑えられることが印象的で、軽量モデルであってもこのスペックであれば頼りなさを感じることはありません。また、ヘッドのスムーズな加速感があり、軽快な振り感になっていることもあって、スペックほどの重さは感じませんでした」
「続いて『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』の“50S”ですが、剛性が高い設計のためか、シャフト全体に太さを感じました。細くシャープに動く印象の『VANQUISH™ VV』に対して、より落ち着いた挙動になるので、スイングしていて重さを感じたのはむしろ『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』の方でした。物理的な重さと振った時に感じる重量感には違いがありますので、モデルやスペックを選ぶ時には気をつけた方が良さそうです。私自身は好みとして重さを感じた方が思い切って振れるタイプですので、安心して叩けたのは『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』の方でした」
どちらのシャフトもスイング中にヘッドが加速する感じがあり、たしかな「スピードアップ」の効果があった。しかし、ヘッドの走り方にはモデルごとの違いも見られた。
「『VANQUISH™ VV』はやや手元に硬さがあり、切り返しでヘッドがしっかり追従してきてくれます。そのまま徐々にヘッドが加速していき、インパクトにかけてスピードが最大になる感覚でした。クセのない振り感で、加速しながらもタイミングが取りやすいのは過去のモデルにはなかった特徴と言えそうです。一方で、『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』は手元部分が軟らかく、切り返しで強いタメが自然にできます。そしてダウンの途中で強烈なしなり戻りが起こり、一気にヘッドが加速してくれます。中元部分からシャフトが全体的に動いて加速する感覚ですので、かなりのスピード感がありつつも、タイミングは抜群に取りやすくなっています。“スピードアップ”を狙っていることは同じでも、アプローチの仕方は全く異なっています」
近年、発売されるドライバーは基本的に大型ヘッドで、慣性モーメントも一定以上の大きさになっている。そのため、シャフトには強烈なしなり戻りによってヘッドを加速させられるような性能が求められる。三菱ケミカルの2つの最新シャフトはどちらも現代のドライバーにマッチする性能を持っていることは間違いない。
では、似た部分も持ち合わせる2つのシャフトは、どのように選び分ければ良いのだろう。
「切り返しのテンポに合わせて最適なモデルを選ぶのがおすすめです。だんだんに加速する『VANQUISH™ VV』はスイングテンポが早めで、切り返しがクイックな人にマッチします。手打ち傾向の人でもタイミングが合いやすく、ボールも適度につかまってくれますので飛距離アップを実感できるはずです。『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』は剛性の高さで基本的にどんなゴルファーでもタイミングは合わせやすいですが、ゆったりと切り返すタイプの人と好相性です。ダウンでタメを作り、一気に解放するようにヘッドが加速しますので、よりボール初速が出しやすくなります」
『VANQUISH™ VV』は軟らかめ、『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』は重めを選ぼう
今回は50グラム台Sフレックスの他にも、さまざまなスペックを用意して試打を行った。三菱ケミカルのシャフトは重量が変わっても基本的な剛性分布が同じで振り感が揃うことが特徴のメーカーだが、田辺はモデルごとの特性を生かすために選ぶべきスペックが変わってくると話す。
「『VANQUISH™ VV』はシャフト全体をムチのようにしならせてスピードを上げるシャフトです。その特性を生かす意味で、フレックスは通常と同じか、少し軟らかいものを選ぶのがおすすめです。ヘッドを加速させやすくなり、スピードアップの効果を最大限、高めることができます。ちなみに私の試打ではフレックスによってヘッドの戻り具合が変わるため、スピン量が大きく増減していました。可能であれば試打会などで複数のフレックスを試し、最もスピンが減るものを選ぶと良いでしょう」
『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』については、重量選びが大切になると田辺。
「ゆったりと切り返し、タメを作るタイプのスイングに合うシャフトですので、振れる範囲で重めのものを選ぶのがおすすめです。重さを生かしてより深いタメが作れますし、スイング中のヘッドの挙動もより安定して、叩ける感覚が強くなります。フレックスについてはスピンを抑えたいなら硬めのものを、しっかり高さを出したいなら軟らかいものを選ぶと良いでしょう。Rフレックスはシャフトの動きが感じやすくなり、しっかり打ち出し高さが出てくれるのでおすすめです」
現代の大型ドライバーで飛距離を伸ばすには、ヘッドスピードを上げることが一番の近道だ。その意味でシャフト選びはとても重要な意味を持ってくる。三菱ケミカルがリリースした『VANQUISH™ VV』と『TENSEI™ Pro Black 1K CORE』はいずれもヘッドの加速による「スピードアップ」を目指したモデルで、多くのゴルファーが飛距離を伸ばせる可能性を秘めている。精密な設計で安定感も高いため、飛距離と方向性のどちらも欲しいという欲張りなゴルファーにぜひ試してみてほしい。きっと自分の理想を叶えることができるはずだ。
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