
<全農杯2025年全日本卓球選手権大会(ホープス・カブ・バンビの部)青森県予選会 5月10日(土)スポカルイン黒石>
青森、やはり“卓球県”である。
今年の全農杯全日本ホカバ青森県予選会の参加人数、300人弱。少ない県では2-30人の県もあるなかで、かなり多い数字だ。人口比率で考えてもその競技熱がわかる。
開場後「それでは練習開始してください」のアナウンスをきっかけに、我先にと子どもたちが全力で台に走って入った。
写真:会場での練習の様子/撮影:ラリーズ編集部
それでも、最盛期10年ほど前に比べると参加人数は減っている。
全農杯全日本ホカバ青森県予選会を取材しながら、来年に国スポ開催も控える“卓球王国”青森県の現在に迫った。
写真:小笠原太羅(神山TTC)/撮影:ラリーズ編集部
“卓球王国”青森県の歴史
青森は、小学生世代の卓球人口が多く、その指導に熱を入れてきた地域だ。2010年代の最盛期には全農杯全日本ホカバ青森県予選は、その前段階の八戸市予選だけで1,200人弱が参加、小学生の青森県卓球連盟登録者、県予選会出場者共に2,000名を超えていた。
県からはかつての世界チャンピオン・河野満氏(現在、青森県卓球連盟会長)始め、多くの“レジェンド”を輩出、そして1997年以降は水谷隼氏をはじめ青森山田学園中学・高校から多くの日本代表選手が生まれた。
熱量の高い指導者が、脈々と繋いできたこの地の伝統である。
写真:2008年全日本選手権での水谷隼(写真左)と吉田安夫監督/提供:築田純/アフロスポーツ
小学校に卓球部がある
冬場でもプレーできる屋内競技であること、小さな村であっても卓球台1台と二人いれば練習ができることも、卓球が青森県の普及した重要な要素だ。
多くの県内小学校に卓球部が作られ、県内小学生への卓球普及を下支えしていった。
写真:予選会にも多くの小学校から選手が参加/撮影:ラリーズ編集部
少子化、コロナ禍、部活地域移行
青森県に限らず、全国の各地域が直面する競技人口に関する課題は、少子化、コロナ禍以降の競技人口減少、そして部活動の地域移行だ。
「近年、県内の小学生卓球の登録者数も減少傾向にあります。10年ほど前には2,000人を超えることもありましたが、コロナ禍や部活動の地域移行の影響が大きく、登録者数は年々減ってきました」青森県卓球連盟理事長の藤田曉氏は、課題を口にする。
写真:青森県卓球連盟理事長の藤田曉氏/撮影:ラリーズ編集部
これまで青森県の持っていた学校単位の活動の強みを、地域移行の流れの中にどう活かしていくか。
「指導者の熱量は高いですし、最近は、大学卒業後や実業団で活動した後、地元へ戻り、指導者として活躍する若い世代も増えてきています。彼らの存在が、子どもたちに新たな刺激を与え、再び青森卓球の強さを取り戻すきっかけになると期待しています」と前向きな展望を示した。
写真:八戸卓球アカデミー代表の沼田勝氏/撮影:ラリーズ編集部
写真:ホープス女子1位高舘凛々花(六戸学園スポ少)のベンチに入った下山優樹氏(十和田シティホテル)/撮影:ラリーズ編集部
写真:神山TTCの神山昌太郎さん/提供:本人
トーナメント一発勝負の青森県予選
ホカバ青森県予選会が始まった。各カテゴリとも代表枠は6人だ。
予選リーグがなく最初からトーナメント一発勝負なのは、参加人数の多い影響だろう。
写真:川口元気(おいらせ卓協ジュニア)/撮影:ラリーズ編集部
写真:風張眞栄(柏崎クラブ)/撮影:ラリーズ編集部
特に、女子のレベルが高いように感じたが、近年、女子では全日本ホカバのランク入りが無いとのことで、改めて現在の日本卓球小学生世代の充実を感じる。
写真:西岡希南(弘前卓球センター)/撮影:ラリーズ編集部
写真:内田こはる(弘前卓球センター)/撮影:ラリーズ編集部
細かい話だが、エリアごとにスタッフを配置し、対戦相手の確認など細かいヘルプで試合進行を早めていた。
写真:エリアごとにスタッフを配置/撮影:ラリーズ編集部
ホカバ予選で泣かない県
これまで幾つかの地方予選を見てきて、青森県予選会が最も試合中に泣く子が少ないと思った。特に地方予選のバンビの部は、試合中いかに泣かずにできるかが勝敗を分けたりする。
写真:試合中も2階からの応援に応える/撮影:ラリーズ編集部
県関係者数人に理由を聞いてみたが、特に明確な理由はなさそうだった。
写真:派手な雄叫び/撮影:ラリーズ編集部
ふと「じょっぱり」という津軽地方の方言を思った。「負けん気が強く、意地っ張りな人」を指す言葉だ。コツコツと努力を重ね、感情を人前であまり表に出さない、青森の県民性もあるのかもしれないと思った。
地元の恵みを活かした副賞
さて、全農杯全日本ホカバは全国47都道府県予選会すべてに全農が特別協賛している。
青森県予選会の副賞には、昼夜の寒暖差が大きく雪解け水と澄んだ空気に育まれた、北国の恵み豊かな農畜産物が並んだ。
「地元産のお米や、普段なかなか味わえない地域の食材を副賞としてご提供いただき、選手以上に保護者の方々が喜んでいます」と、青森県卓球連盟理事長も地元ならではの副賞に深く感謝する。
1位副賞:青森県産倉石牛サーロインステーキ 200g × 2枚
写真:「青森県産倉石牛サーロインステーキ」/提供:JA全農あおもり
1位の副賞「倉石牛」は、きめ細かな霜降りと濃厚な旨みをあわせ持つ、みちのく青森が誇る黒毛和牛である。
「年間約400トンしか出荷されない希少価値の高い牛です。畜産農家の方が牛にストレスをかけない環境で丁寧に育てるため肥育頭数が少なく、県内の私どもも口にする機会の少ないほど、美味しい牛肉です」JA全農あおもりの笹森俊充副本部長は、その肉質を誇る。
試合を終えた翌日、取材に伺った弘前卓球センターの選手たちの笑顔も綻ぶ味だった。
写真:「青森県産倉石牛サーロインステーキ」を前に笑顔になる弘前卓球センターの子どもたち/撮影:ラリーズ編集部
2位副賞:青森県産米「青天の霹靂」5kg
2位の副賞は、青森県産米「青天の霹靂」5kgである。
写真:「青天の霹靂」/提供:JA全農あおもり
お米としては変わったそのネーミングは、青森県の青い空と、食べた瞬間に雷に打たれたような美味しさに由来するとのこと。県産米で唯一、栽培および出荷基準を定めているお米で、粒立ちが良く、さっぱりした味で県内でも親しまれているという。
写真:「青天の霹靂」でつくったおにぎりを頬張る弘前卓球センターの子どもたち/撮影:ラリーズ編集部
発売当初、その名とともに注目を集めたのが、“青”を基調としたスタイリッシュな米袋デザインだった。
「“売り場で目立つように”と思い切って挑戦しましたが、味の評価も高く、現在ではリピーターも多いお米です」笹森氏は胸を張った。
写真:JA全農あおもりの笹森俊充 副本部長/撮影:ラリーズ編集部
3位副賞には「新郷村産飲むヨーグルトセット」、参加賞として「ニッポンエール 青森県産世界一りんごグミ」が贈られた。
青森県予選会 結果
※各カテゴリー上位6名が青森県代表
ホープス男子
1位 小笠原太羅(神山TTC)
2位 風張眞栄(柏崎クラブ)
3位 米倉鳳茉(柏崎クラブ)
3位 西澤駈(柏崎クラブ)
写真:ホープス男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
沼田遥(八戸卓球アカデミー)
福士敬登(MTC)
ホープス女子
1位 高舘凛々花(六戸学園スポ少)
2位 大宮すせり(弘前卓球センター)
3位 白戸優里(弘前卓球センター)
3位 金谷凛花(清卓ジュニア)
写真:ホープス女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
長内虹來(神山TTC)
加賀愛唯(吹上小)
カブ男子
1位 奥寺昇也(柏崎クラブ)
2位 風張海煌(柏崎クラブ)
3位 清水蓮太郎(清卓ジュニア)
3位 沼田輝(八戸卓球アカデミー)
写真:カブ男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
石井昌伸(CutBack)
吉田逸嘉(六戸学園スポ少)
カブ女子
1位 内田こはる(弘前卓球センター)
2位 高舘虹花(六戸学園スポ少)
3位 松村唯杏(清卓ジュニア)
3位 千葉心暖(上北卓心スポ少)
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
菊池杏澄(SENBATSU)
名久井ちなみ(柏崎クラブ)
写真:カブ女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
バンビ男子
1位 川口元気(おいらせ卓協ジュニア)
2位 石井亨昌(まべち新風ジュニア)
3位 荒谷光希(鮫小学校)
3位 山﨑龍晴(修道卓球クラブ)
写真:バンビ男子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
櫻庭巧葵(岩木クラブ)
牧野暖(ASJ)
バンビ女子
1位 西岡希南(弘前卓球センター)
2位 桑田ひまり(弘前卓球センター)
3位 中田ゆら(清卓ジュニア)
3位 西澤舞(柏崎クラブ)
写真:バンビ女子入賞者/撮影:ラリーズ編集部
※代表決定戦により下記2選手を加えた計6選手が全日本出場
新開雪乃(SSJ)
成田和花菜(みなみ倶楽部)
動画はこちら
取材・文:槌谷昭人
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